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試乗 BMW 7シリーズ 750Li xドライブ G11型、壮観な車内と走りを両立

掲載 更新
試乗 BMW 7シリーズ 750Li xドライブ G11型、壮観な車内と走りを両立

もくじ

どんなクルマ?
ー ラグジュアリーさとハンドリングの両立
ー 0-100km/h加速は4秒
ー 高い風格を目指したエクステリア
どんな感じ?
ー 安楽でありながら、安楽過ぎない
ー 期待を裏切らないハンドリング
ー 主要市場志向のフロントグリル
「買い」か?
ー ドライビングフィールでは負けない
スペック
ー BMW750Li xドライブ(標準ホイールベース)のスペック

国内試乗アウディA8新型 先進装備の今、4.0ℓV8ターボの印象は

どんなクルマ?

ラグジュアリーさとハンドリングの両立

一般的には難しいことながら、相反することが成立するという点で、BMW7シリーズはクルマの中で最も偉大な存在だといえるかもしれない。外界から隔離された高水準でのラグジュアリーさと、リムジンでありながら、ステアリングを操作する自信を感じさせてくれる素性の良さを両立させている。しかも2トンを超える車重に、5mを軽く超える全長を備えていながら。

メルセデス・ベンツSクラスやアウディA8の場合、突出した洗練性にエネルギーを集中させれば、不満はさほど出ないだろう。しかしBMWの場合、ラグジュアリーとダイナミクスを兼ね備えるという伝統のブランドイメージを崩すわけにはいかないのだ。フラッグシップとなればなおのこと。少なくとも新しい7シリーズの概要を知らずとも、読者や読者の運転手が俊足自慢のクルマが欲しいと考えているなら、BMWを買えば満足できると思う。

7シリーズの概要を見ていこう。まず、オプションのインテグラル・アクティブステアリングが選択できる。フロントタイヤの舵角を、走行速度に応じて自動で調整してくれるだけでなく、高速域では安定性を高めるために後輪も同位相に切らえる。また7シリーズの場合より重要となると思うが、低速域では回頭性を高めるために、逆位相に後輪が舵を切ってくれる。また、前期モデルに搭載されていたマルチモード・セルフレベリング機能の付いたエアサスペンションを、大幅に手の入ったLCI(ライフサイクル・インパルス)後の7シリーズにも採用している。

0-100km/h加速は4秒

従来と同様にエグゼクティブ・ドライブプロ・パッケージのひとつで追加されるのが、アクティブ・アンチロールバー。オンボードカメラとナビゲーションシステムの情報を元に、コーナー毎にねじれの強さを自動で調整してくれる機能だ。このクラスのベンチマークとして、ダイナミクス性能を高めている機能のひとつとなる。

プラグイン・ハイブリッドモデルの場合、エンジンのシリンダー数は4気筒から6気筒へと増加。フラッグシップとなる6.6ℓのV型12気筒エンジンは、WLTPモードの都合で610psから585psに減少した。エンジンのラインナップはLCI前と同様。それぞれのスペックも見応えがある。

直列6気筒エンジンを搭載した730dは、最大トルクが63.0kg-mでありつつ14.1km/ℓというボディの割に優れた燃費を叶えてくれる。英国では、2000年ごろから7シリーズで最も多くの数をさばく人気グレードとなる。しかし、今回われわれが試乗したのは、より大きなV型8気筒エンジンを搭載した、ロングホイールベース版の750Li。

このクルマの最高出力は530psで、最大トルクは73.5kg-mを誇り、アクセルを踏み込めば0-100km/h加速を4秒でこなす。このクルラスとしては相当なハイパフォーマンスを備えているが、V型12気筒エンジンを搭載するM760Li xドライブは更に0.2秒早く到達する。

高い風格を目指したエクステリア

全長は標準ホイールベース版、ロングホイールベース版ともに23mm伸ばされているが、その他の主な変更点といえば、大幅に大きくなったキドニーグリルが一番に気がつくポイントだろう。G11型の7シリーズに欠けていて、近年のSクラスには常に備えていた、このクラスには無くてはならないモノ。エクステリアデザインに大幅な手を加えることで、高い風格の獲得を目指したのだ。

フロントグリルの大きさはLCI前のモデルと比較して倍近くも大型化し、取り付け位置も50mm高くなっている。フロントタイヤの直後に付いているエアベンチレーターのクロームトリムも、より太く、直立した形状になっている。

Mスポーツの場合、ポルシェ911 GT2 RSなら不釣り合いになりそうな、大きなエアインテークがフロントバンパーに穿たれる。リアバンパーには一際目を引くマフラーフィニッシャーが左右に並び、スーパーカー並みのスペックを見るものに察知させる。

ヘッドライトと、形状が強く強調されたテールライトはともにスリムになり、ドアミラーの形状も変更を受け、ボディの面構成も若干シャープなものになった。ボディの大きさを表現しつつ、コンサバティブな形状は維持している。BMWとしてはロールス・ロイスに通じる様な存在感を与えたとしているが、ビジュアル面では不機嫌そうな顔つきになったと思う。走りの変化はいかほどだろうか。

どんな感じ?

安楽でありながら、安楽過ぎない

全体的な印象は「走る最先端の要塞」といった感じ。Sクラスから7シリーズに乗り換えてみて初めに気づいたのは、ダッシュボードの曲面が全体的に膨らんだ形状だということ。また、スカットルの位置が幾分高い。ラウンジ風の広々した雰囲気ではなく、少し包まれ、守られた印象がある。しかし、決して窮屈というわけではない。

インスツルメントパネルには12.3インチのモニターが収まり、ダッシュボードの上部には10.3インチのタッチ式モニターが配される。ライブコクピット・プロフェッショナルと呼ばれるデジタルシステムで、新しい8シリーズに搭載されているものと同様のもの。

グラフィックは充分に滑らかだが、横方向にスクロールする計器類は、フェイスリフト前の円形状のものほど視認性で優れているとは感じなかった。新しいマットクロームとピアノブラックのフィニッシュプレートが操作系周りに用いられ、美しい木目の装飾パネルが随所に施される。キルト風のレザーはオプションとなるが、5シリーズと7シリーズの間には、格の違いが与えられている。クルマの骨格をなすアーキテクチャで見れば、ボディサイズの大きさの違いだけなのだが。

そして7シリーズに求められてくるのが、安楽でありながら、安楽過ぎないという微妙なさじ加減。操作系の重み付けや減衰力の特性は、このクラスではあまり重要視されないものだが、BMWとなると話は違ってくる。7シリーズである以上、ドライバーにも走行性能という面で満足感を与えなければならない。クルマの走行性能につながる部分だからだ。

期待を裏切らないハンドリング

実際、7シリーズは今回の試乗コースとなったポルトガルの九十九折の道で、見事な走りを披露してくれた。サイズを考えれば比較的軽量だといえる1965kgの750Li xドライブは、バランスの取れた優雅な乗り心地に加えて、抑制の効いたボディロールを示す。オプション装備の4輪操舵とアクティブ・アンチロールバーの効果もあるとは思うけれど。

確かに、従来までの7シリーズとは異なり、G11型はリモートコントロールされている感覚があることは否定できない。ステアリングは以前よりも軽いし、サスペンションの振る舞いも少し浮遊したような印象がある。しかしSクラスよりも速く正確で、自信を持って走らせることができることは、オプション装備を差し引いても明らか。バンク角90度の4.4ℓ V型8気筒エンジンは、踏み込めばその存在を知られてくれるし、6250rpmまで気持ちよく回ってくれる。

車内空間の雰囲気も並外れたレベル。窓ガラスの厚みは5mmを超え、ホイールアーチ内やBピラー、リアシートの背もたれ部分には吸音材が増やされている。高速道路を巡航している限り、ロールス・ロイス・ファントムと遜色のない静寂さを保ち、われわれがロードテストのノイズ計測用に使用している集音マイクの測定でも、明確な差は見られなかった。

主要市場志向のフロントグリル

大きなボディサイズを持つBMW7シリーズだが、メルセデス・ベンツSクラスほど、狭い道でと取り回しに苦労するということもない。7シリーズの方が最小回転半径で優れているうえ、クルマの取り扱いのしやすさも、優れているからだろう。見かけほどラゲッジスペースは大きいわけではないものの、このクラスの平均点は取っており、500ℓを超える容量は確保されている。

気になる点といえば、スピードバンプや橋脚の継ぎ目などで、シャシーはライバルほど完璧な仕事をしてくれないこと。だとしてもコンフォートプラス・モードにしておけば、滑らかな欧州の高速道路では卓越した乗り心地を味わわせてくれる。

最後に、この目立つフロントグリルについては賛否が分かれそうだ。綺羅びやかで目障りなものではないとしても、私の印象としては、エレガントだとも思えない。しかし、新しい7シリーズの半分を売り上げるであろう中国市場を考えてみると、納得もできる。そのオーナーの平均年齢は38歳だという。彼らは自らのステータスとして、5シリーズを超えるクルマとしての存在感を欲しており、BMWとしてもその嗜好を無視することはできないからだ。

一度乗ってしまえば、フロントマスクに付いた大きな1対のグリルを目にすることはないし、新しい7シリーズでの大きな飛躍はインテリアの質感にあるから、さほど気に留めることもないのかもしれないけれど。

「買い」か?

ドライビングフィールでは負けない

エクステリアデザインの好みはひとそれぞれだが、ロードマナーという点では、Sクラスに匹敵する上質さを7シリーズが得ているとはいい難い。だとしても車内の静寂さや、インテリアの素材とデジタル技術の組み合わせは素晴らしく、極めて壮麗な雰囲気を備えている。

価格は730dが6万9445ポンド(1006万円)からで、直列6気筒を搭載したガソリンエンジンを搭載したエントリーグレードの740iの価格は7万1735(1040万円)から。どちらもアウディA8とほぼ同じ価格設定となっているが、このクラスのリーダーでもあるメルセデス・ベンツSクラスの方が、幾分高めの価格が付けられている。

そのSクラスは、来年にモデルチェンジを予定している。インテリアデザインは大幅に刷新されるはず。上級ラグジュアリー・クラスのリーダーとして、ゲームを動かす実力を備えてくることは間違いないだろう。しかし、この新しいG11型7シリーズのように、優れたドライビングフィールを備えている可能性も、低いはずだ。

BMW750Li xドライブ(標準ホイールベース)のスペック

■価格 8万3875ポンド(1216万円)
■全長×全幅×全高 5120×1902×1467mm
■最高速度 249km/h
0-100km/h加速 4.0秒
■燃費 9.3~9.7km/ℓ(WLTP複合)
■CO2排出量 -
■乾燥重量 1965kg
■パワートレイン V型8気筒4395ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 530ps/5500~6000rpm
■最大トルク 73.5kg-m/1800-4600rpm
■ギアボックス 8速オートマティック

文:AUTOCAR JAPAN リチャード・レーン
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