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【欧州、水素へ傾く】ジャガー・ランドローバー 水素燃料電池技術の開発促進 1年以内にテスト開始

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【欧州、水素へ傾く】ジャガー・ランドローバー 水素燃料電池技術の開発促進 1年以内にテスト開始

イヴォークサイズのプロトタイプ製作か

ジャガー・ランドローバー(JLR)は、新グローバル戦略「Reimagine」の中で、燃料電池パワートレインの開発が戦略の核心となっていることを明らかにした。今後12か月以内にプロトタイプの公道テストを開始する予定としている。

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昨年、同社は燃料電池を搭載した大型車の開発を目的に、本格的な水素発電研究計画「プロジェクト・ゼウス」を発表した。現在、水素経済の成熟化に伴い、「クリーンな燃料電池の採用が期待されている」ことから、その方針を強めている。

プロジェクト・ゼウスが成功すれば、2020年代半ばに新型レンジローバー・イヴォークが登場する頃には燃料電池技術が実用化され、将来的には大型のゼロ・エミッション車にも使用されることになるだろう。

Reimagine戦略では、ジャガーとランドローバーがそれぞれの個別のEVプラットフォームを使用し、ジャガーは2025年からEVのみに移行することになっている。しかし、2030年までに内燃機関車の販売を禁止する英国の状況を考えると、別の動力源として水素がジャガーに与えられる可能性もある。

JLRのプロダクト・エンジニアリング・チーフであるニック・ロジャースは、プロジェクト・ゼウスについて「本当に、本当に重要だ」と語った。彼によると、同社はまもなく、走行可能な水素燃料電池のコンセプトカーを発表するだろうという。

「わたし達は、環境への干渉を最小限に抑えた推進システムを探しています」とロジャース。

「水素は、当社のラインナップの中で重要な位置を占めていると考えています。わたし達は、そのための開発と投資を行っており、素晴らしいサポートも得ています」

まだ初期の段階ではあるが、最初に登場するコンセプトカーは、イヴォークサイズのSUVになる可能性が高い。

ランドローバーはEVには不向き?

同技術はJLRの大型車、特にランドローバーでの使用を中心に検討されている。レンジローバー、レンジローバー・スポーツ、レンジローバー・ヴェラールは、サイズや柔軟性の高さなどから有力候補となるだろう。

また、BEV(バッテリー駆動EV)の充電インフラが限られている地域や国では、頑丈なオフロード車が人気を博しているため、水素発電は有効な選択肢となるだろう。

ジャガーにも導入される可能性があるが、ランドローバーに比べて小型であることを考えると、バッテリー駆動に焦点を当てることになると思われる。

JLRの計画は、BMWの計画と似ている。BMWは、X5ベースのi Hydrogen Next(イヴォークと同等サイズか)を2022年に限定生産し、さらにX6とX7をベースにした大型の水素モデルも計画している。

英国をはじめとする各市場におけるICE車の新車販売禁止により、JLRは新たなゼロ・エミッション戦略を開始せざるを得なくなっている。JLRのラインナップの大半は大型で重量があるため、BEVとして再開発するのが難しい。

ロジャーズは次のように述べている。

「水素は、(当社のラインナップの)大型車には理想的なアプリケーションです。クルマが大きくなればなるほど、エネルギーの使用効率が下がるからです」

再生可能エネルギーで水素生成

プロジェクト・ゼウスは、2020年に英国政府がCO2排出量削減のためのさまざまな自動車プロジェクトに7300万ポンド(106億円)を投資すると発表した際に明らかにされた。JLRは、Delta Motorsport、Marelli Automotive Systems、UK Battery Industrialisation Centreらと共同で、水素プロジェクトに取り組む。

資金を出した先端推進システム技術センター(APC)によると、JLRが主導するプロジェクトは、「ジャガー・ランドローバーの特性である、長距離走行、牽引、オフロード性能、低温性能などを備えた、排出ガスゼロのプレミアム燃料電池SUVコンセプトを提供する」という。

JLRは2019年3月、水素燃料電池の新チーフとしてラルフ・クラーグを採用した。クラーグは2016年から中国メーカーの長城で燃料電池の研究開発責任者を務めていた。AUTOCARは、JLRが今年初め、さらに多くの水素技術者を採用しようとしていると考えている。

欧州では過去数か月間で「グリーン」な水素製造プロジェクトが複数発表され水素への関心(と投資)が急速に高まっている。

英国政府は最近、「英国の戦略的脱炭素エネルギーキャリアとしての水素開発を支援する」ために、水素諮問委員会を設立した。

現在、世界の水素生産の大部分は、天然ガスから水素を抽出し、改質することで行われている。この方法では、水素は化石燃料から得られるため「ゼロカーボン」とは言えない。

しかし、再生可能な電力(風力発電など)を利用して、海水を電気分解と呼ばれるプロセスによって水素と酸素に「分解」することでも水素を生成することができる。

HISマークイットの調査によると、「グリーン水素の製造コストは2015年から50%低下しており、規模の拡大や製造の標準化などのメリットにより、2025年までにさらに30%削減できる可能性がある」としている。

HISマークイットはまた、水素分解への投資は今後数年間で大規模に拡大するだろうと指摘している。「規模の経済性は、グリーン水素のコスト競争力を高める主な要因となる。2023年に予定されている『Power-to-x』プロジェクトの平均規模は100MWであり、現在稼働中の最大規模のプロジェクトの10倍である」

電動化だけでは環境問題は解決できない

EVバッテリーのパワーと蓄電能力の改善への期待は残しながら、欧州各国の間では急速に考え方が変わってきている。

「欧州では、電動化だけでは多くの国が望むレベルの排出量削減を実現できないことが広く認識されています」と、HISマークイットのキャサリン・ロビンソンは述べている。

欧州連合(EU)は、グリーン水素の普及に向けた大胆な計画を発表した。2024年までに水素生産を脱炭素化し、2030年までに少なくとも40GWの再生可能な水素生産を達成するというものだ。

EUの報告書によると、「クリーンな水素が2050年までに世界のエネルギー需要の24%を満たし、年間売上高は6300億ユーロ(80兆円)に達すると推定される」という。

さらに、「再生可能な電力が安価な地域では、2030年には電気分解装置が化石由来の水素と競合できるようになると予想される」とも述べている。

典型的な水素燃料電池車が約5kgのガスを運ぶとすると、現在のトヨタ・ミライを満タンにするためには、約7.50ユーロ(958円)の製造コストがかかることになる。税金、輸送費、生産者の利益を考慮しても、今後10年の間に再生可能エネルギーを利用した水素発電はコスト競争力があるように見える。

水素が炭素ゼロの燃料として注目されている理由は、他にもいくつかある。

第一に、鉄道や海運といった重量物輸送は、バッテリー技術では実現できないことが明らかになったことが挙げられる。商用車に水素の燃料供給網を提供すれば、もちろん水素乗用車の普及も可能になるだろう。

水素の主な問題点は、生産規模の経済性であり、ミライやヒュンダイ・ネッソのような数少ないFCEVの比較的高い価格に現れている。商用車の利用が増えれば、コストを下げることができるだろう。

第二に、水素はエネルギーの地政学を変える可能性があるという点だ。中国と欧米の間で将来起こりうる対立によって、バッテリーやレアメタルの供給が制限される可能性があり、再生可能な水素は、欧州に重要かつ安定的なグリーンエネルギー供給をもたらすことになる。

技術上の課題も解決が進む

また、クルマの水素貯蔵の問題も解決に近づいている。現在、水素を高圧力で貯蔵するためには、比較的高価なフィラメントを使用したタンクが必要であり、クルマに搭載するのは非常に困難である。

米国ノースウェスタン大学の研究チームは、「有機金属フレームワーク」と呼ばれる新しい素材を開発した。これにより、一定の空間に大量の水素ガスを低圧力で貯蔵することができるという。この素材はスポンジのような働きをしており、ガスを吸収して圧力をかけて放出することができると説明されている。

この技術により、現在の床下バッテリーと同じスペースに水素タンクを設置することが可能になる。複数の動力源に対応できるJLRのMLAプラットフォームにとっても理想的な技術だ。

ドイツでもコンパクトな水素タンクの開発が進められているほか、フランスの部品サプライヤーであるフォルシア社は、新しい熱可塑性水素貯蔵タンク(ガス貯蔵量1kgあたり400ユーロ/約5万円の生産コスト)を開発中だ。

重量やコストという点でも、水素燃料電池はバッテリー式パワートレインよりも優位に立つかもしれない。

トヨタ・ミライに搭載されている3つの水素タンクの重量は87kgで、5kgのガスで500kmの航続距離を実現している。対照的に、バッテリーEVのテスラ・モデルSロングレンジは、95kWhのバッテリー(約540kg)で515kmの航続距離を実現している。

この差は、燃料電池スタックと小型バッテリーを追加した場合でも、FCEVがBEVよりも大きな重量優位性を持つことを示している。

現在のEV用バッテリーの生産コストは、1kWhあたり約118ポンド(1万7000円)であるため、95kWhでは11万ポンド(159万円)程度のコストがかかると思われる。

フォルシア社が限定生産する熱可塑性水素タンク(年間約3万個)でさえ、同じようなレベルであれば、わずか1820ポンド(24万円)で済む。

一度は行き詰まりと見られていた水素燃料電池技術は、自動車産業における脱炭素化競争の勝者になる可能性がある。EV用バッテリーは地政学的、倫理的な問題を抱えている。

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