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いよいよフォルクスワーゲンにディーゼル登場:パサートヴァリアントTDIに試乗

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いよいよフォルクスワーゲンにディーゼル登場:パサートヴァリアントTDIに試乗

フォルクスワーゲンのディーゼルモデルが日本にいよいよ上陸した。導入されたのはパサート、2.0ℓに6速DCTを組み合わせて搭載する。とはいうものの、だれもが思い起こす海の向こうで起きた排ガス不正問題。該当のエンジンは今回の導入機とは異なるが、どうしたっていろいろと不安を覚えるのは道理。果たして日本仕様はどのように仕立てられているのだろうか。TEXT:世良耕太(Kota SERA) PHOTO:MotorFan

「すったもんだがありました」と、婚約を解消した女優が残した1994年の流行語を覚えている「自分をほめてあげたい」(と言ったのは当時の女子マラソンランナーで、1996年だった)。フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排ガス不正にまつわるすったもんだは2015年のことだから、鮮明に覚えている(昨日のことも怪しいくせに)。

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おかげで最新ディーゼルエンジンを積んだVW車の日本導入は、当初の予定より2年ばかり遅れ、2018年となった。「日本国内のディーゼル乗用車市場は2012年以降拡大傾向にある」とVWは分析しているが、大いにマツダのおかげである。VWは尻馬に乗り遅れたわけだ。言葉が悪い。消費者のニーズに応える機会を失ったわけだ。なんともったいないと思ったのは、筆者だけではあるまい。

走りが力強くて燃費がいいし、燃料代がだいぶ安くて懐にやさしいというありがたみが再認識されて、ディーゼルはすっかり市民権を得た。「外国メーカー車の年間総販売台数の2割を超えるシェアを占める」とVWグループ ジャパンは説明している。JAIAのまとめによると、2017年の外国メーカー車の販売台数は306,088台で、前年比+3.7%(20年ぶりの30万台超え)。そのうち、ディーゼルエンジンを搭載する乗用車は+31.4%と顕著な伸びを示したという。



定着したばかりか、まだ伸びているのである。2018年にディーゼルエンジン搭載車を導入したところで全然遅くない。むしろ「今でしょ!」(2013年の流行語。もうやめます)という状況なのだ。

気がつけば17年間もVW車に乗っている筆者は、定期点検などで販売店に寄るたびに「ディーゼルは入らないんですか?」という質問を時候の挨拶代わりにしてきた。あるときは、「いやぁ、それが大変なんですよ。入れるとなったらすべての販売店にディーゼルエンジンを整備できる体制を敷かなければなりませんからねぇ」という旨の回答を受け取ったことがある。

一理ある。だがもはや、VWのような輸入車ブランドにとっては、ディーゼルエンジン搭載車を販売しないことが不利益につながりかねない。「ディーゼルないなら、いいです。ヨソのブランドを買いますから」と言われてもおかしくないのだ(そう言わずに乗り続けている客がここにひとり)。

搭載するのはEA288型ディーゼルエンジン

VWグループ ジャパンは2月14日、パサートのセダンとヴァリアントのディーゼルエンジン搭載車、「パサートTDI」「パサート・ヴァリアントTDI」を発売した。TDIはVWにおけるターボディーゼルエンジンシリーズの総称だ。

パサートが積むTDIは2.0L・直4ユニットで、エンジン名称はEA288である。不正問題を起こしたディーゼルエンジンは主に先代のEA189が対象。日本導入は2年遅れてしまったけれども、厳しくなる一方の排ガス規制に対応した新世代ユニットだ。2012年にゴルフ7がモデルチェンジして(日本導入は2013年)、新しい生産モジュールのMQBが導入された。その際、ディーゼルエンジンも設計が一新されてEA288 に移行している。



このエンジンは、片側に吸気バルブと排気バルブが交互に並んでいるのが特徴だ。通常は片側に吸気バルブが一列に並び、反対側に排気バルブが一列に並んでいる。ところが、EA288は直列4気筒エンジンの片側に「吸気/排気」「吸気/排気」「吸気/排気」「吸気/排気」と並んでおり、反対側も同様に「吸気/排気」の順に並んでいる。1本のカムシャフトが吸気バルブと排気バルブの両方を開け閉めするわけだ。

そのうえで、片方(吸気マニフォールド側/エンジン前側)にVVT(可変バルブタイミング機構)を採用した。油圧ベーン式の一般的な機構だが、油圧の低い低回転域でも反応良く作動できるよう、アキュムレーター(オイル溜め)を備えているのが特徴である。



VVTは片側のカムシャフトにしか備えていないが、吸気バルブと排気バルブが交互に並んでいるので、カムシャフトの位相を変えると吸気バルブと排気バルブの位相が同時に変わる。始動時は吸気バルブ閉時期と排気バルブ開時期を進角(タイミングを早くする)して圧縮比を高め、始動性を確保(カタログ上の容積比は15.5)。同時に排ガス温度を高めて暖機性(触媒を早く適正な温度に暖める)を確保する。

一方、部分負荷(市街地を周囲の流れに合わせて走っているような状況)ではVVTを遅角し、圧縮比を低下させて燃焼温度を下げ、同時に燃料と空気がよく混ざった状態で燃焼するようにしてNOxと煤の発生量を減らすようにしている。厳しい排ガス規制に対応するために後処理装置を充実させているのもEA288の特徴だが、燃焼を制御することでも排ガス対策に取り組んでいる。

余裕のトルクウェイトレシオと爽快な加速感

試乗したのは上級グレードのパサート・ヴァリアントTDIハイラインだ。エンジンの始動/停止はシフトレバー右横のプッシュボタンで行なう。望外によくできたマツダの最新ディーゼル(CX-8に搭載する2.2L・直4。最近、CX-5もアップデートして最新仕様を搭載するようになった)の印象が残っていたせいだろう、存外、ガラガラ音が耳につく。だが、マツダのディーゼルが望外なだけで、ヨーロッパの現行ディーゼルとしては一般的だろう。むしろ「骨太」なムードを演出するのに役立っている。


力強さと燃費に関しては決して期待を裏切らない。試乗車の車重は1630kgで、ディーゼルエンジンを搭載していることや、車両サイズを考えれば、決して重たくはない。それでも1630kgである。フラットで広大なラゲッジルームに荷物を満載し、助手席と後席を乗員で埋めた状態で急な上り勾配に差し掛かったとしても、ディーゼルを搭載したパサートは澄まし顔を保っていられそうだ。(もったいないことに)1名乗車&空荷でしか試乗できなかったが、終始そんな頼もしさを感じながらのドライブだった。



じゃあ、重量物を澄まし顔で引っ張るだけのディーゼルかと言われればそんなことはなく、エキサイトメントはある。高速道路の本線に流入するシーンがそのひとつ。首都高速によくあるような、助走期間が短い状況であっても、ディーゼルエンジンを積んだパサートなら心配は無用。アクセルペダルを強めに踏み込めば(床まで目一杯踏み込む必要はない)、猛烈なダッシュを見せてあっという間に巡航スピードに達する。

「ヒャッホー」と声を挙げたくなるほどだ(挙げないけど)。
[世良耕太 Kota Sera]

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