2019年から世界でも話題のTCRカテゴリーのレースとして「TCRジャパン」が日本で始まる。
TCRは2LのFF車がメインのカテゴリーで、市販車からの改造範囲も極めて少なく、レーシングカーとチューニングカーの間のような走りをするとも言われている。
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だからこそドライバーのテクニックも求められ、そしてレースファンは市販車に近い躍動する姿にワクワクする、2019年超期待のレースになるはずだ!!
今回は「TCRジャパン」を主催するJRP(日本レースプロモーション)の協力を得て、メディア向け試乗会に参加してきた。
操るはル・マンウィナーでもある、荒聖治選手。冷静で理論に裏付けられたドライビングスタイルで淡々と速さを見せつけるドライバーだ。
「小さくてパワフルなクルマが好き」という荒選手。TCRマシンにいったいどのようなフィーリングを感じたのだろうか?
もっと詳しく知りたい!! という人はTCRジャパンのホームページも参照されたい。
文:ベストカーWeb編集部(コメント:荒聖治)/写真:池之平昌信
■そもそもTCRってなんですの?
モータースポーツのファンは少なくないはず。しかし新たなファンを獲得しようとするとなかなかハードルが高いのも事実だ。
一般的なクルマ好きからしても「レーシングカーと市販車ではまったく違うじゃん」という違和感が大きい。
ましてやクルマ好きでないとなるとその傾向は強まるのかもしれない。そんなモータースポーツの救世主になるかもしれないカテゴリーが日本に上陸する。
フェンダーなどはワイドフェンダーが与えられ、リアバンパーも大きくカットされている。それでも市販車の面影は大きく残っているのが嬉しい
それがTCR。WTCC(世界ツーリング選手権)に参戦するマシンの改造範囲を狭めたカテゴリーである、「TC3」がその出発点。
もちろんTC1、TC2というカテゴリーもあり、それらはより改造範囲の広いカテゴリーだ。
つまりTC3はもっとも改造範囲の狭いもので、後にTCRと改名されて現在に至る。
TCRマシンの基本的なフォーマットはFF(フロントエンジン・前輪駆動)に、2Lターボエンジンを搭載するというもの。
スリックタイヤやロールケージなどレーシングカーの装備は備えるが、あくまでも構成要素は市販車に近い。
そのため価格も1600万円~2000万円程度となんとフェラーリのロードカーよりも安い!!
それでいて本格的なレースもできてしまうこともあり、いま大注目のカテゴリーになっている。
しかも短距離のスプリントレースから24時間レースまで対応する懐の深さも特徴。
内野/外野問わず守備ができて、しかもスイッチヒッターという日本ハムの杉谷拳士選手のようなカテゴリーだ。
現在、世界ではTCRマシンを使い、WTCC(世界ツーリングカー選手権)の後継カテゴリーとなるWTCR(ワールドツーリングカーカップ)が行われている。
しかし日本でのTCRの歴史はまだ浅く、スーパー耐久で2017年シーズンからカテゴリーが形成されたばかりの新しいカテゴリーだ。
そんななか、スーパーフォーミュラを主催する日本レースプロモーション(JRP)が、TCRマシンのワンメイクレース「TCRジャパン」を2019年から開催することが決定。
TCRマシン同士の競り合いがついに日本に上陸する。
こちらがシビックタイプRのTCRマシンのエンジン。基本的には市販車と同様のエンジンであり、耐久性や安全性の向上のチューニングが施される。ツインターボやドライサンプは禁止され、触媒は純正の採用が原則だ
それに先駆けて今回、メディア向けに試乗会が開催された。ベストカーWebは「世界の荒」ことル・マンウィナーの荒聖治選手を呼んだ!!
会場は富士スピードウェイ。
約1500mの超絶長いストレートを誇る日本を代表するサーキットで、世界の荒はTCRマシンをどう評価するのだろうか?
■優等生かと思いきや実は暴れん坊なシビックTCR
試乗はまずはホンダシビックから。こちらはスーパー耐久に参戦するシビックタイプRで、日本を代表するレーシングコンストラクターの童夢がメンテナンスを行っているマシンだ。
童夢と荒選手といえばル・マンへの挑戦でタッグを組んでいたのも懐かしいところ。
そんな間柄もあり「童夢がセッティングしているとなるとヤンチャですよ、たぶん(笑)」と荒選手。
約1500mのストレートを全速力で走り抜けるシビック。レーシングカーだが市販車をイメージしやすく非常に楽しい
今回はジェットヘルメットにサングラスという怪しげな出で立ちでただ者ならぬオーラを振りまく(そもそも"ただ者"じゃないんだけど)。
「アタック込みで3周で戻ってきますから」とコメントを残し、さっそうと走り出すシビック。
当たり前なのだが初めて乗るレーシングカーでもエンストもせずスムーズにピットアウト。さすが世界の荒、経験値がちゃいまっせ。
ピットアウト後のタイヤなどを温めるアウトラップが終わり、いよいよタイムアタック。
「ブァァァァーーーン」という咆哮が1500mの富士スピードウェイのメインストレートにこだまする。
ほどなくして荒選手がピットへ戻ってくる。JRPのスタッフが「1分50秒、ファステストです」と走ってくる。
いやはや、あっさりと最速タイム出すとはすばらしい!! 気になるインプレはどうだろうか?
ジェットヘルメットにサングラスという出で立ちで、試乗直後には不敵な笑みを浮かべる荒選手。なんだかとても楽しそうだ
「パワー感はすごくありますね!! オーソドックスな走らせ方をすればちゃんと走ると思います。
ただ今回のマシンがスーパー耐久で走ったままのセッティングだったこともあり、少し跳ねるのは気になりました。
ターボラグは少なからずあるのですが回転域をしっかり保って走れば気になりません。
とはいえFFらしくブレーキで後ろがめくれ上がるような、特徴的な動きも大きく出ます。
そうは言っても手に負えないようなレベルではないので、しっかりとセオリーどおりに走れば問題ないと思います。
ブレーキにしても150m看板の奥まで行けますし、レーシングカー寄りの走りを魅せてくれますね」。
しっかりとブレーキングをして、クリッピングについていく。そんな教科書どおりの走りをすれば速く走れると分析する。
マシンはイタリアのJAS(ヤス)が制作しており、どこか欧州の風も感じさせるマシンだったようだ。
■ドイツ代表アウディRS3はやはり硬派だった!?
次はアウディRS3に試乗。こちらのクルマは海外のレースへ参戦していた個体でなんだかレーシーな雰囲気がムンムン。
引き続きジェットヘルメットにサングラスの荒選手が乗り込みます。
海外のレース仕様ということでTCRジャパンの仕様とは少し異なるという今回のアウディ。シビックとの差は大きそうだ
「このクルマも計測3周で戻ってきます」と残して颯爽とピットアウト。しばらくするとまたJRPのスタッフが走ってくる。
「1分49秒6です。ファステストです」。タイムアタックをする企画ではないものの、やっぱり1番は気持ちがいい(編集は何もしていないけど)。
降りてきた荒選手を見る限りアウディのほうがシックリときたようだ。
「なんだかこちらのほうがシビックより重心が低くてレーシーですね。少ない操舵でグググっと曲がっていきます。FFだけどリアも流せますし、これはこれで面白いですね。
ただどちらかというと引き出しが多い熟練ドライバー向けかな? エンジンはフラットな印象でシビックのようなターボラグもない印象。
難点といえば視界が狭いことかな。シビックより圧倒的に見えない(笑)」。
少しばかり視野が狭いというアウディの視界。このあたりは市販車の影響をもろに受ける部分なので面白い
やはり基本骨格が市販車だけあって視界などその素性は影響するようだ。
またクルマ自体が持つ性格もアウディとシビックでは異なるようだ。
マイルドな特性のシビックは初心者にも受け入れやすい幅広い乗り味を持っており、アウディは引き出しが多い熟練者も満足できる乗り味となりそうだ。
シビックのマイルドさは状況変化に強く、レースでは扱いやすい時も多いと荒選手は語る。
■日本でも流行るのかTCRカテゴリー
試乗を終えて今後、TCRカテゴリーが日本で盛り上がりそうか荒選手に聞いてみた。
「カテゴリーとしてはおもしろいと思いますよ。マシンも今回の試乗で性格が違うことがわかったし、参加者のスキルによってマシンを選べるのも面白いですね」。
全体的に「楽しい」というコメントを繰り返していた荒選手。操る楽しさはTCRマシンにも宿っていたようだ
プロが思いっきりしのぎを削るレースも面白いのだが、安価な車両価格も相まってジェントルマンドライバーの参戦も多く予想される。
タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク。マシンの個性の差はあるものの、性能はイコールコンディションが保たれるから参戦しやすい。
2018年に鈴鹿で開催されたWTCR。ワールドクラスのドライバーが写真のような"肉食系"の接近戦を繰り広げた。こんな戦いが日本でも観られるか?(写真:塩川雅人)
年間エントリーには今回試乗したシビック、そしてアウディ以外にもVWゴルフ、アルファロメオジュリエッタも名を連ねる。
日本車の活躍も期待したいところだが、現段階ではシビックも優位に戦いを進めることができそうだ。
TCRジャパン初戦は2019年5月18日(土)~19日(日)にオートポリスにて開催だ。
公式Webサイトはこちらから。
WRCなどでも活躍中のヒュンダイもTCRマシンをプロデュースしている(画像はWTCR)。TCRジャパン参戦となれば大きな脅威になるはずだ(写真:塩川雅人)
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