「日常使いに充分」な一充電走行距離は180kmを実現
2022年の東京オートサロンや大阪オートメッセに出品され注目を集めた、三菱の「K-EVコンセプトXスタイル」が5月20日、ほぼそのままの姿で「eKクロスEV」として正式発表された。
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eKクロスEVの開発コンセプトは「身近で使いやすい軽EV」「乗員にも優しい軽EV」「EVならではのクリーンなデザインと機能装備」の3つ。それだけに、ベースとなったマイルドハイブリッド車のeKクロスに対する、エクステリアの変更点は少ない。
フロントアッパーグリルがハニカム形状から、ダーククロームメッキが施された平滑な水平基調に。フォグランプが丸型から長方形となったほか、フロントバンパー下部がシルバー塗装からボディ同色に変更され、「EV」エンブレムがフロントフェンダーとバックドアに装着されている。
また、電気銅線をイメージしたというカッパーメタリックをルーフ色とした2トーンボディカラーが新たに2種類用意されているが、マイルドハイブリッド車と直接比較すると、これらのわずかな違いでEVらしい先進性やクリーンさが確実にアップしているのが見て取れるのは、見事というより他にない。
シフトレバーが電子制御式に変更されセンターコンソールが一新
インテリアも基本的なデザインはマイルドハイブリッド車と共通だが、シフトレバーが電子制御式に変更されたのに伴いセンターコンソールが一新。メーターパネルが7インチのカラー液晶タイプとなり、新デザインの9インチWXGAディスプレイを用いたスマートフォン連携ナビが上級グレードの「P」に標準装備され、標準グレードの「G」にはメーカーオプション設定されたことで、運転席まわりの印象はまるで別物と言えるほど劇的に生まれ変わっている。
なお、「P」にメーカーオプション設定される合成皮革&ファブリック内装「プレミアムインテリアパッケージ」は、マイルドハイブリッド車のブラック&タンに対し、eKクロスEVはライトグレーの専用品に。シートのメイン生地にはダイヤ柄のエンボス加工が施され、先進的かつクリーンなイメージが強調されたコーディネートとなっている。
標準装備の黒を基調としたファブリック内装も、マイルドハイブリッド車は紺のアクセントを大胆にあしらっているが、eKクロスEVでは三角形と菱形、Xの字を組み合わせたグレーの柄に変更された。
WLTCモード一充電走行距離は180km
では、肝心のメカニズムはどうか。軽自動車では電動化による重量増とコストアップ、パッケージング効率低下の影響が登録車以上に顕在化しやすいが、その一丁目一番地である駆動用バッテリーの容量は20kWhに抑えられた。その結果、WLTCモード一充電走行距離は180kmとなっており、家族で帰省や旅行に出掛けるには道中での急速充電が必要になりそうだが、三菱が主張する通り「日常使いに充分」と言えそうだ。
充電ポートはAC200V/14.5Aの普通充電と急速充電の2種類があり、普通充電では約8時間で満充電、急速充電では約40分で80%まで充電可能。また、エアコン冷媒を用いた冷却システムが採用されており、高速走行と急速充電を繰り返したとしても電池の温度上昇が抑えられ、高い充電量を維持できるという。
その駆動用バッテリーは、フロア後半中央の床下に搭載されており、最低地上高は10mm低い145mmとなったものの、後席や荷室の広さはマイルドハイブリッド車の4WD車と同等レベルが確保されている。
なお、FF車のみが設定されるeKクロスEVのリヤサスペンションは、マイルドハイブリッド車のFF車と同じトーションビーム式ではなく、4WD車と共通のトルクアーム式3リンク。パワートレインのメカニズム図や実車の床下を見ると、マイルドハイブリッド4WD車ではプロペラシャフトやマフラー、リヤディファレンシャルが搭載されるスペースを駆動用バッテリーが占めており、駆動用バッテリーを保持するための骨格が大幅に追加されているように見受けられた。
アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から滑らかかつ力強い加速が得られる
フロントに搭載されるモーター、インバーター、減速機、DC/DCコンバーターなどパワーユニットも駆動用バッテリーと同じく新開発品で、最高出力は自工会軽自動車自主規制値上限の47kW(64ps)を確保。最大トルクはターボエンジンの約2倍に相当する195Nmで、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から滑らかかつ力強い加速が得られるようになった。
なお、ドライブモードは「NORMAL」に加え、モーター出力を抑える「ECO」、アクセルレスポンスを高める「SPORT」の計3種類が設定されたほか、アクセルペダルの操作で減速をコントロールできる「イノベーティブペダルオペレーションモード」も実装。緊急時や完全停止の際にはブレーキペダルを踏まなければならないものの、通常の加減速ならペダルを踏み換える必要がないため、長時間運転しても疲れにくくなるのは間違いないだろう。
サスペンションも専用チューニングに変更
気になる車重は、「G」グレードで1060kg、「P」グレードで1080kg。ターボエンジンを搭載するFF車と比較して200kg前後重くなっているうえ、前後重量配分は56:44とリヤ寄りに。またルーフパネルが薄板化されているため、サスペンションも専用チューニングに変更された。
ADAS(先進運転支援システム)はマイルドハイブリッド車と同様に充実しており、高速道路での加減速・車線維持制御を行う「マイパイロット」を設定。eKクロスEVではさらに、後退・前進での駐車や縦列駐車をサポートする「マイパイロットパーキング」や、マイパイロット起動中に一定時間操舵が検知されず警告にも反応しなかった場合は徐々に減速し停車する「マイパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)」を、新たに設定している。
そのほか、コネクテッドサービス「MITSUBISHI CONNECT」やV2H(Vehicle to Home)、災害時やアウトドアレジャーの際の外部給電にも対応した。
車両本体価格は「G」が239万8000円、「P」が293万2600円。令和3年度補正予算「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」と令和4年度「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象車両となっているため、55万円の補助金を受けた場合の実質的な購入金額は184万8000円からとなる。
誰の手にも届きやすく、使い勝手の良い軽EVが、今ここに誕生した。
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