現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 今はなきマツダ流ミニバン!! 走りもユーザーを魅了したMPVの三代記

ここから本文です

今はなきマツダ流ミニバン!! 走りもユーザーを魅了したMPVの三代記

掲載 31
今はなきマツダ流ミニバン!!  走りもユーザーを魅了したMPVの三代記

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

究極の「箱」に原点回帰! 新型ステップワゴン初公開 7年ぶり刷新のポイントは?

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ MPV(1990-2016)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/MAZDA

[gallink]

■高級感ある乗り味や雰囲気のミニバンとして登場したMPV

 まさにMulti Purpose Vehicle(多目的な乗り物)として1990年に誕生。

 2006年に発売された3代目の「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」というキャッチコピーも「そのとおり!」としか言いようのないもので、ミニバン離れした走りにより、一部のユーザーからは熱く支持された。

 しかしメーカー自体が長期戦略を変更したことにより、生産終了とならざるを得なかった隠れ名車。

 それが、マツダ MPVです。

 多用途車を意味する「Multi Purpose Vehicle」という英語の頭文字をそのまま車名にした初代マツダ MPVが日本でデビューしたのは1990年1月。

マツダ 初代MPV(1990-1999年)。北米向けのモデルとして1988年に登場、1990年に日本導入。ミニバンブームの火付け役となった初代オデッセイ(1994年10月)に先駆けた形となる

 全長4465mm×全幅1825mm×全高1745mmというボディサイズは同時代のアメリカ製ミニバンと同等で、日本の狭い道では難儀する局面もありましたが、その分だけ車内の余裕はたっぷりでした。

 駆動方式はいわゆるFRで、搭載エンジンは当初3L V6のみでした。1991年10月のマイナーチェンジで「アンフィニ MPV」へと車名が変わり、それまでの本革シートに加えてファブリックシートの仕様も用意。

 そして1995年10月のマイナーチェンジではデザイン変更を行うとともに2.5Lのディーゼルターボおよびガソリンエンジンを追加しました。

 その後も改良を加えられながら、アメリカ市場でも堅実な人気を得ていたMPVは、1999年6月に2代目へとフルモデルチェンジされました。

 駆動方式はFRからFFへと変更され、後部ドアもヒンジ式からスライドドアに。当初の搭載エンジンは新開発の2L直4とフォード製2.5L V6で、2002年4月のマイナーチェンジ時に新開発の2.3L直4 と3L V6に変更されています。

2代目 MPV。デザインは大きく変わり、現在のマツダの路線にぐっと近づいた。三代通してのサイズは全長:4660→4810→4860mm、全幅:1825→1830→1850mm、全高:1815→1745→1685mmと全高のみ数値が小さくなっていっている(数字はいずれも各代の最大値)

 こちらも細かな改良を重ねながら販売された2代目でしたが、2006年2月にはいよいよ「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」というキャッチコピーを伴って3代目のマツダ MPVが登場しました。

 搭載エンジンはV6が廃止され、全車2.3Lの直4に刷新。デビュー翌月には、3.5L自然吸気エンジン並みのトルクを発生する最高出力245psの2.3L直4直噴ターボエンジンも追加されます。

 トランスミッションは、自然吸気エンジンのFF車は4速ATでしたが、ターボ車と4WDは6速ATに進化。そして車台はスポーティなマツダLYプラットフォームが採用され、これに伴って後輪サスペンションは先代のトーションビーム式からマルチリンク式に変更されています。

 2008年1月のマイナーチェンジでは内外装デザインを小変更するとともに、自然吸気FF車のトランスミッションが5速ATとなった3代目マツダ MPVは、爆発的なヒット作にはなりませんでした。

 とはいえ、まさに「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」というキャッチコピーどおりの素晴らしい走行性能と大柄なボディゆえの居住性の高さにより、一部ユーザーの心をがっちりつかんだミニバンではありました。

 しかしマツダは――日本経済新聞の報道によれば2016年2月に――2017年をめどにミニバン各モデルの生産を打ち切り、次期モデルの開発は行わないことを決定。

 そして実際、3代目マツダ MPVは2016年3月に販売終了となってしまいました。

■プレマシー ビアンテ…充実のミニバン体制をマツダがやめた理由

 特に3代目はその素晴らしい走行性能によってコアなユーザーを魅了したマツダ MPVが、あっけなく生産終了となった理由。

 それは直接的には前段で申し上げたとおり、マツダがミニバンの生産と開発をやめると決めたからです。

 本当は2012年頃に販売終了となっていてもおかしくなかったMPVですが、販売店からの要望が強かったため、2016年まで販売されることになったようです。しかしいくら販売店サイドの要望があっても、会社の長期戦略として「ミニバンはもうやめる」と決まってしまったからにはどうしようもありません。

3代目 MPV(2006-2016)。MPVが販売終了となり、2017年に3列シートを持つCX-8が登場すると、ミニバンの役割はCX-8に任せるという大胆な方針転換をおこなわれ、プレマシーとビアンテも絶版に。マツダのラインナップからミニバンが消えることとなる

 そしてマツダという会社がなぜミニバンから撤退することを決意したかといえば、「自動車メーカーとしては小さな会社だから」ということにほかなりません。

 小さな会社であっても、例えばマツダ ロードスターが属するようなニッチ市場においては、大メーカー相手のビジネス的な勝負でも十分以上の勝機があります。むしろ小さなメーカーのほうが、そこでは勝ちやすいのかもしれません。

 しかしミニバンのような巨大コモディティ市場は「会社の体力=商品力または販売力」となりますので、そこに弊社がいつまでも関わっていても仕方ない――と、マツダの上層部は判断したのでしょう。小さな会社の限られた経営資源を「分散」させるのではなく、主にはSUVへと「集中」させたわけです。

 その結果として、Lサイズミニバンにも“走りの良さ”を求めたいユーザーから言わせれば稀代の名作であった3代目MPVは廃番となったわけで、そこに是非はありません。「仕方なかった」というほかないのです。

 しかしそういった理屈はさておき、「残念だ……」という“感情”を捨て去ることは、人間なかなかできません。

■マツダ MPV(3代目) 主要諸元
・全長×全幅×全高:4860mm×1850mm×1685mm
・ホイールベース:2950mm
・車重:1740kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、2260cc
・最高出力:163ps/6600rpm
・最大トルク:20.7kgm/3500rpm
・燃費:11.0km/L(JC08モード)
・価格:277万7143円(2014年式 23S)

[gallink]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

31件
  • SUVも人気無くなって来たらマツダはどうするんだろう
  • マツダは走りの良さをアピールするが、アクセラがマツダ3にFMCするとともにマルチリンクからトーションビームになったり、見えない部分で残念な変更が行われている。
    このMPVですらマルチリンクを採用するなど今のマツダより、このころのマツダの方が走りを意識していると感じる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

250.0360.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14.0155.0万円

中古車を検索
MPVの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

250.0360.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14.0155.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村