コロナによる経済的損失は拡大の一途だが、ある分野だけは比較的打撃が少ないのではないかと言われている。富裕層を中心とする商売、クルマでいえば高級車ジャンルだ。
例えば2020年1~3月期の実績を見ると、ポルシェが25.8%増、フェラーリが5.7%増、日本は57.4%増といった具合だ。もちろん、4月以降は販売減に転じるかもしれないが……。
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日本の高級車といえばレクサス。レクサスの2019年の世界販売の実績を見ると、総販売台数は76万5330台。前年比10%増、過去最高の成績となった。
日本における2019年の新規登録台数は6万2394台で、前年に比べて13.2%増と堅調だった。
コロナ禍の影響が本格化していない2020年1~3月期においては、欧州市場ではトヨタが8.2%減だったものの、レクサスは1.5%増。北米市場でのレクサス販売は15.6%減となった。
一方、日本における2020年1~4月の新車販売台数は1万7969台と対前年比22.9%減とコロナ禍の影響で減少に転じている。
そんなレクサスの今後を占う上で、鍵を握るのが高級SUV市場。ロールスロイスやランボルギーニ、マセラティなどの高級車メーカーがこぞって高級SUV市場に参入しているが、レクサスは1つの答えを出した。
そう、2018年、レクサスは高級SUV市場に打って出るべく、1台の高級SUVのコンセプトカーを発表した。レクサスLF-1リミットレスである。
あれから2年あまり、あのレクサスLF-1はどうなったのだろうか? 開発は順調に進んでいるのだろうか? 現在の状況はどうなのか、迫ってみた。
文/宇井弘明(元ベストカー編集局長)
写真/トヨタ
CGイラスト/ベストカー編集部
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レクサスの野望は潰えたのか?
現行レクサスLXは海外では2007年から発売されているが日本では2度目のマイナーチェンジが行われた2015年9月に発売。価格は1135万6481円
よく知られているように、レクサスは日本車が最も進化したといわれるバブル全盛期の1989年に北米で始まった。投入された車種の頂点には日本名セルシオ、LS400があった。
当時として莫大な開発費をかけ、世界の高級サルーンを凌駕する仕上がりで高級車メーカーを震撼とさせた。
クルマ自体の進化だけでなく、経営的にも大きく変化した時期でもある。トヨタはレクサス、日産がインフィニティ、ホンダは少し前の1986年に北米でアキュラを立ち上げ、マツダも中断してしまったが‘アマティ“という高級車ブランドを計画していた。
理由の1つには、日本車にとって最大のマーケットでさらに発展していくための戦略であり、「数で稼ぐのではなく、高品質」。
高性能に裏打ちされた、高級車、今でいうプレミアムブランド」で利益を上げる必要があったわけだ。
さらに未来に向けて、成熟していく市場で高付加価値のクルマづくりの一環として高級車やスポーツカーは重要な役割を果たすと考えられていたため、その拠点となる新しいブランドが必要となったこともあった。
結果としてはレクサスはひとまず成功を収め、2005年、日本でも正式にスタートして現在にいたるわけだが、まだまだメルセデスベンツ、BMWといった世界の高級車メーカーとの間に隔たりがある。
それでも昨年、グローバルで76万台を売り着実に伸ばしている。ただ今後の課題として重要なのは、高価格帯車種の充実が挙げられる。
現在は世界的な潮流であるSUV、UX、NX、RXで台数を稼いでいるが、もっと利益率の高い上級車が必要なことだ。これこそが今後のレクサスのカギを握る重要な車種となる。
世界中から圧倒的な支持を集める、トヨタ ランドクルーザー(以下ランクル)。現行型であるランクル200は、すでに登場から12年が経過した。
サルーンのフラッグシップはLSがあり、スポーツカージャンルではLCがある。SUVでは2021年春~夏頃にフルモデルチェンジを迎えるランクル200/LXがあり、それぞれ頂点にふさわしい車種があるように思えるが、ラダーフレームを持つヘビーデューティなLXはもはや「時流」ではないのだ。
世界の超高級SUVの趨勢はスポーティでエレガントなSUVであることはご存知のとおり。
当然レクサスの計画でもその「穴」を埋めるべく動き出している。それがGA-Lと呼ばれるFRベースのプラットフォームを持つ新型高級SUVである。
つまり、新型ランクル300/新型LXとは違う、最上級の高級SUVということだ。
ポルシェカイエンがターゲット!
2018年1月のデトロイトショーで公開されたレクサスLF-1リミットレス
カイエンの価格は1030万7407~2370万926円。カイエンターボは1937万2222円
2018年のデトロイトショーに出展されたLF-1リミットレスが、その正体であることは既報のとおりだが、ある信頼すべきトヨタ関係者に最近の状況を直接聞いてみた。
現在はコロナの影響で開発は中断しているとのことだが、心配なのは来年度の開発予算だという。
当初の計画では2021~2022年のLO(ラインオフ)を目指しているが、実走行試験などはリモートワークとはいかず、このあたりが遅れると2022年の登場になりそうだという。
トヨタは2021年3月期の予想は、今期に比べ営業利益は79.5%減を見込んでいて、開発費用も相当押さえ込まれる可能性があり、開発スケジュールは全車種遅れるのではないかというのが関係者の話だ。
しかし、このLF-1がなくなることはない、と断言する。しかも、新開発の4L、V8ツインターボは予想以上の性能に仕上がりそうだという。
このV8ユニットは現在のLC500に積まれる2UR-GSE型に代わるニューエンジンで、1気筒あたり最も効率のいい500ccで構成される。
いずれLCに採用され、次期IS-Fの心臓部にもなるエンジンで、スポーツ系のユニットは600psオーバーは確実で、おそらくこのLF-1でもその程度は出してくる。なにしろターゲットはポルシェカイエンだ。
カイエンの最上級グレードはターボ。カイエンターボは4L、V8ツインターボで550ps/78.5kgmを誇る。
4L、V8ツインターボのほか、トヨタ初のハイブリッドターボも用意
現在、2021~2022年の市販に向けて開発中というレクサスLF-1(CGイラストはベストカーが製作したもの)
レクサスはそれ以上の性能を目指すことから580psあたりが1つの目安だろう。LF-1にはさらにニューエンジンが用意されていることも判明している。
カイエンのメイングレードでもある3L、V6ツインターボ、440ps仕様にあたるグレードで、同じ3L、V6ツインターボながら、モーターを組み合わせたトヨタ初のハイブリッドターボとなる予定という。
当然パワー的にもカイエンを上回るはずだし、燃費的にも大きなアドバンテージが得られることになりそうだ。
レクサスは、このベンチマークとなるカイエンを上回ることで、BMW X7、アウディQ7、あるいは4Lターボで最強の680psランボルギーニウルスをも凌駕することを狙っている。
デザインはほぼLF-1に近く、ショーモデル同様、戦闘的でありながら優雅さが感じられるレクサスのアイデンティティに沿ったものだが、実際はショーモデルよりも少し小さくなるという。
量産のボディサイズは、全長5005×全幅1980×全高1595mm、ホイールベースは2990mm程度になると予想される。
注目の価格は、フラッグシップにふさわしく1000万~1800万円クラスとなるだろう。
強豪ひしめく世界の高級SUV市場で認められてこそ、レクサスが高級ブランドとしてその存在を確固たるものにできる、重要な車種がLF-1なのである。
ボディサイズは全長5005×全幅1980×全高1595mm、ホイールベースは2990mm程度になると予想(CGイラストはベストカーが製作したもの)
■新型レクサスLF-1予想諸元
●ボディサイズ:全長5005×全幅1980×全高1595mm
●ホイールベース:2990mm
●エンジン:4L、V8ツインターボ
●最高出力&最大トルク:580ps/83.0kgm
●予想価格:1000万~1800万円
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みんなのコメント
BMWのキドニーもそろそろデザインに限界も見えつつ、、、
どこかで変えてしまう思い切りは必要かも。
ただ、クラウンのアイデンティティである太いCピラーをやめたのは失敗だと思うので、やっぱ難しいな。