BMWファンには目を離すことができない1台
2023年11月25日、RMサザビーズがドイツ・ミュンヘンで開催したオークションにおいてBMW「Z8」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
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BMW507に魅了され現代技術で復活のプランが浮かんだ
BMWが、後に「Z8」としてデビューを飾る新型車プロジェクト「E52」をスタートさせるきっかけとなったのは、同社の元社長、エーベハルト・フォン・キュンハイムの送別会にあったという。
そこにはBMWから生み出された歴代の名車が展示されており、その中でも1955年に発表された507は特別な輝きを放っていた。ここで507を見たBMWの新たなリーダー、ベルント・ピシェッツリーダーとヴォルフガング・ライツルのふたりは、一瞬で507の美しさに魅了され、現代の最新技術を用いてそれを復活させようというプランを思いついたのだった。
新たな2シーター車のボディデザインを委ねられたのは、アメリカ・カリフォルニアにあるデザインセンターのクリス・バングルと彼のチーム。実際に最初のスケッチを描いたのは後にアストンマーチンへ移籍し、さらに自らの名を掲げたEVメーカーを設立するに至る、ヘンリック・フィスカーである。
最初のコンセプトカーには「Z07」のネーミングが与えられ、それは1997年の東京モーターショーでワールドプレミアされた。この時に発表されたZ07はクローズドのクーペ仕様だったが、BMWは当然のことながら最初から後のZ8をオープンモデルとしてデビューさせることは決定済みであった。
BMW初の自製アルミニウム製スペースフレームを採用
2000年、デビューを飾ったZ8はその流麗なボディスタイルのみならず、さまざまな技術的な特長を持つモデルだった。まずはそのシャシーは他車からの流用ではなく、専用設計されたBMW初の自製アルミニウム製スペースフレームとされていること。そのフレーム単体の重量は約230kgで、スチール製と比較した場合には30%ほどの軽量化を実現することに成功したという。
ボディのアウターパネルやサスペンションにもアルミニウムが多用されており、BMWがこのZ8でいかに軽量化に強いこだわりを見せたのかがよく分かる。
搭載されるエンジンは、「S62」型と呼ばれる4941ccのV型8気筒で、型式に掲げられるSの文字からも分かるとおり、これはBMW M社がMモデル用に開発したもの。S62型エンジンの搭載例としてはE39型のM5などがある。
最高出力と最大トルクは、それぞれ400ps、500Nm。電子制御の8連スロットルやダブルVANOSの効果が大きい。トランスミッションはゲトラグ製の6速MT、左ハンドル仕様のみが2003年までに5703台生産されている。
スタンド付きのハードトップも付属されていた
ミュンヘン・オークションに出品されたZ8は2000年10月11日にラインオフされたモデルで、タイタン・シルバー・メタリックのボディカラーに、レッド&ブラックのインテリア、そして印象的なレッド・カーペットの組み合わせで出荷された。
ファースト・オーナーはルクセンブルグに住む人物で、デリバリーは2001年3月。サービスブックと所有者履歴によると、その後2003年にはフランスで登録され、3人のオーナーの手を経て今回のオークションに出品されたようだ。現在までの走行距離は6万kmを超えたところ。車両にはセラミック・コーティングが施され、レザーフォリオ、スペアキー、書籍、ツールロール、さらにはスタンド付きのハードトップも付属していた。
今回の落札価格は20万9300ユーロ(邦貨換算約3410万円)。日本での新車価格は最終の2003年モデルで1660万円の設定だったから、現在の不利な為替状況を考えても、Z8は確実にコレクターズアイテムとしての価値を高めていることが理解できる。BMWファンには目を離すことができない1台だ。
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みんなのコメント
結構、技術的に攻めていたのが足とパワーユニットの性格がチグハグであのアルピナですら扱いかねていた