主役は自動運転や運転支援システム! 新しいクルマの姿が見えた
今年も公益社団法人・自動車技術会の主催による展示会「人とくるまのテクノロジー展2018横浜」がパシフィコ横浜を会場に開催されました。出展社数は過去最多の597社、3日間の会期ではとてもすべての展示をチェックできませんが、その賑わいから自動車産業が日本の基幹産業であることを実感することはできたのです。完成車メーカー、パーツサプライヤーだけでなく、計測機器などのテスティング企業、開発支援技術に生産技術などさまざまな出展があるなかで、やはり主役は自動運転とADAS(運転支援システム)という印象が強かったのは、まさに時代のトレンドです。また電動車両に向けてのテクノロジーも幅広く展示されていたのも、自動車技術が市場ニーズに反応して進化していることを感じさせます。
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さて、そんな「人とくるまのテクノロジー展2018横浜」で見つけた技術のなかから、未来につながるであろうと独断と偏見でセレクトした7つのメカニズム・テクノロジーを紹介しましょう。
○レーザースキャナー「ヴァレオ SCALA 2」
自動運転、ADASには欠かせないセンサー技術として注目を集めているLIDAR(レーザースキャナー)として、初めて市販車(アウディA8)に搭載されたのがヴァレオSCALAです。その進化版となるSCALA 2が、人とくるまのテクノロジー展にて世界初公開されていました。プリクラッシュブレーキの知識がある人からすると、赤外線を用いるレーザーセンサーは近距離にしか対応できない技術という印象もあるかもしれませんが、レーザースキャナーは数十~数百m先の対象物を立体的に捉えることができます。
もちろん移動体にも対応します。このセンサーをボディに前後左右に装着することで、360度周囲の状況を検知することが可能となるのです。SCALA 2における進化ポイントは垂直方向の視野角を従来品の3倍と拡大したこと。これにより坂道などでも正確に周囲の状況を把握しやすくなっているということです。
○SONY製センサーを使ったZMPのステレオカメラ
自動運転の開発支援で知られるZMPは、無人運転のデモカーを走らせるなど日本におけるイメージリーダーとして知られている企業です。すでに自動運転用ステレオカメラはリリースしていますが、同社のブースでは第三世代として2018年3月から出荷している「RoboVision3」を展示していました。ソニー製のCMOSセンサー「IMX390」を使うことで最大150m先まで見ることができ、視野角も100度と広くなっているのが特徴です。
量産向けではなく、開発用デバイスのため価格は税別270万円となっていますが、こうしたデバイスを使うことで自動運転技術の開発が進むというわけです。また自動運転の開発車といえば、ルーフ上でクルクルと回転する3D空間センサーが備わっていることが多いですが、現状は米ベロダイン社が多く採用されています。ZMPでは中国ロボセンス社の空間センサーを代理店として取り扱っています。その価格は、従来の相場からすると半額程度ということで、より開発しやすい状況になりそう。小型モビリティなどの自動運転開発のスピードも上がっていきそうです。
○CMS時代を先取りしたデジタルコクピット
運転支援は事故を防いだり、操作を代わったりするだけではありません。その基本となるのは0次安全とも呼ばれる視界の確保があります。視界の確保といえば、近い将来に実装されることが期待されているのがCMS(カメラモニタリングシステム)。すでに保安基準が改正されている技術で、サイドミラーの代わりにカメラを用いて死角を減らし、空気抵抗も低減しようという技術です。そしてCMSを有効活用するには視線移動が少なく、そして違和感なくサイドミラーの代わりとなる表示方法が求められています。そうしたデジタルコクピットについても提案は増えていますが、ここで紹介するのは京セラと東芝の2社が示したもの。京セラはEVベンチャーのGLMと共同で、トミーカイラZZベースのコンセプトカーを仕上げてきました。メインモニターは12.3インチ、サイドミラーなどの情報は10.25インチのモニターに表示するというスポーツカーらしい提案です。東芝のデジタルコクピットは、ステアリングにも液晶ディスプレイを備えたもので、左右に置かれたサイドミラー用ディスプレイは、ボディを透過させたような表示も可能になっています。
また、ドライバーの居眠りなどを検知して警告する機能も備わっています。そして意外ながら、デジタルコクピットにおいては情報を整理することが重要といいます。運転環境に合わせた最適な情報表示が次世代コクピットのポイントとなるのです。
○48V時代を見込んだジヤトコのマイルドハイブリッドCVT
自動運転・ADASとともに注目を集めているのがクルマの電動化でしょう。とはいっても、ひと足飛びにすべてがゼロエミッションのEVやFCVになるのではなく、ハイブリッドカーが拡大することが欧州でいうところのクルマの電動化です。そして、欧州におけるキーワードが「48V」です。日本のハイブリッドカーのような高電圧ではなく、電圧を下げることで危険度を減らし、さまざまな対策を不要とすることでコストと電動化メリットのバランスを狙っているのが「48V」トレンドなのです。燃費改善能力としては高電圧ハイブリッドに対して劣っているということもあり、日系メーカーやサプライヤーはあまり積極的ではなかった印象もありますが、CVTのトップメーカーであるジヤトコは、48Vマイルドハイブリッド用モーターを内蔵したCVTユニットを公開していました。単にモーターを内蔵するだけでなく、2系統のクラッチを収めることでフルハイブリッドと同等の可能性を持たせているのが特徴です。日本のトレンドと欧州のトレンドをミックスした、良いとこ取りのマイルドハイブリッドユニットといえそうです。
○多点・点火を実現するプレ・チャンバスパークプラグ
電動化時代といっても内燃機関が完全に過去のメカニズムになるわけではありません。まだまだ進化の余地はありますし、当面はハイブリッドが主流となれば進化は求めらます。パワートレインの開発支援を行うエンジニアリング会社「iAV」のブースでは、ガソリンエンジンの新燃焼プロセス「プレ・チャンバ点火システム」が展示されていました。通常は、燃焼室に突き出したスパークプラグにより点火していますが、プレ・チャンバ点火システムでは予燃焼室で点火、そこから四方に火炎ジェットを噴き出させることで燃焼室での多点・点火を可能にするというものです。かつてホンダが実現した副燃焼室を持つCVCCエンジンの現代版という印象も受けるメカニズムを採用するメーカーは出てくるのでしょうか。
○鋳造部品の開発に欠かせない砂型の無駄をなくすダイハツのアイデア
大阪にある発動機メーカーということでダイハツという社名になったというエピソードからわかるように、ダイハツ工業はエンジン製造をルーツとしています。それだけに内燃機関へのこだわりは、人とくるまのテクノロジー展においても強くアピールしていました。パネルと実物で展示された「3Dプリンターによる砂型造型技術の開発」のポイントは、砂型の素材としてリサイクル・リユース可能な人工砂を共同開発したことにあります。鋳造部品の開発段階ではワンオフの砂型を作りますが、それには3Dプリンターが使われます。
しかし、従来の素材である天然珪砂は全量が使い捨てになってしまっていました。3Dプリンターでは砂に樹脂を塗布して固めるため再利用ができなかったのです。そこで、人工砂に特殊コーティングを施すことで、再利用可能な素材を生み出したというのが、今回の発表です。さらに精度を上げることもできるといいますから、まさに一石二鳥のアイデアなのです。
○コンパクトカー向けパートタイム4WDユニット
燃費の改善にはエンジンの熱効率向上とともに走行抵抗の低減が求められます。しかし安全性を考えると4WDが欠かせないという地域も少なくありません。プレミアムカーであれば様々な電子制御を盛り込むことでドライでは2WDに、雪道などでは素早く4WDにする技術を搭載しているモデルもありますが、こと低価格のコンパクトカーではそうした凝ったメカニズムはコストの面から採用が難しいものです。おのずとビスカスカップリングを用いたスタンバイ4WDを搭載するケースが増えてきます。
しかし、ビスカスカップリングの4WDシステムはドライ路面での引きずり抵抗や、スリップ時の駆動伝達力の弱さなどネガティブな面が指摘されています。サスペンションのイメージが強いですが、じつは4WDユニットでも経験豊富なショーワが提案したのは、電動切り替え式のパートタイム4WDユニット。従来のビスカスカップリング部をスリーブによって固定する仕組みに変えたものです。つまり、駆動を切っているときの走行抵抗は最小限に抑えられますし、接続すれば直結4WDとしてしっかりと駆動を伝達することができるのです。燃費と安全を両立する低コストの4WDユニットとして注目です。
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