撮影場所に現れたホンダ・ゴールドウイング ツアーを前に、思わず「デッカイなぁ」と声が出た。全長2575mm×全幅905mm。ジャンルを問わずに較べると、メガスポーツのスズキ・ハヤブサが2190mm×735mm、モンスタークルーザーたるヤマハVMAXが2395mm×820mmだったから、ゴールドウイング、まさに威風堂々である。
「これに乗るのかぁ」といささか尻込みする気持ちで見ていると、「まあ、オープンカーみたいなものですね」と『GQ』編集部のカワニシさん。オープンカーねぇ……。でも、タイヤ、2つしかないじゃん。車重383kg。万が一転倒したら、JAFを呼ぶのか?と思いながらシートにまたがる。「コケないでくださいね」という声を背に、試乗に赴いた。
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ホンダ・ゴールドウイングは、バイクだてらに(!?)水平対向エンジンを積むグランドツアラーである。横向きに置かれたピストンが左右から打ち合うカタチになるため“ボクサーエンジン”とも呼ばれるこの形式。BMWのバイクが使用することで知られるが、2気筒のビーエムに対し、ゴールドウィングはなんと6気筒! 1970年代のデビュー当初は1リッターの4気筒だったが、バブル経済が盛り上がる1988年に6気筒化。1520ccからスタートして、現在では1833ccに拡大された。ボア×ストロークがいずれも73.0mmのスクエアユニット。126ps/5500rpmの最高出力と170Nm/4500rpmの最大トルクを発生する。
HONDA GOLDWING TOURDan AOKI車重383kgとウルトラヘビー級ながら、その走りは意外なほど軽快。重心位置の低い水平対向エンジンもその運動性の高さに寄与している。Dan AOKIゴールドウイングは「Honda SMART Keyシステム」を採用しているので、長方体のキーを携帯していれば、センターコンソールのイグニションダイヤルを捻るだけでエンジンがかかる。両足より前方に置かれたフラット6は、かつてのポルシェ911を思い出させる乾いた排気干渉の音を響かせながら……ということはなく、むしろ地味に軽いビートを刻みながら、スムーズにスーパーツアラーを運んでいく。
ゴールドウイングの6気筒は、水冷のSOHC4バルブエンジン。エグゾーストパイプに工夫を凝らしてサウンドチューニングを施しているが、それでもパワーユニットの趣味性や情緒より、「多気筒ゆえの上質さ」「水平対向ならではの低重心」といった、技術的な狙いが前面に押し出される印象だ。
組み合わされるトランスミッションは、6段MTのほか、今回から7スピードの「DCT」ことツインクラッチ式のオートマチックが用意された。試乗車はDCTモデルで、カタ、カタ、とごく軽いショックを感じさせながらギアを上げていく。
1833ccの水平対向6気筒エンジンは126ps/5500rpmの最高出力と170Nm/4500rpmの最大トルクを発生する。Dan AOKIおもしろいのは、このDCTがバックギアならぬ“バックチェーン”を持つことで、微速後退のスイッチを入れると、チェーンをつないで逆回転の出力を取り出すようになっている。ガレージ内の移動や駐車スペースから出すときなどに重量級ボディの移動を手助けする後退機能は、エンジンの6気筒化と同時に、セルモーターを活用することで実用化された。MTモデルはそのままに、DCTモデルは駆動経路を工夫することで、この便利かつ手放せない機能を受け継いでいる。
さて、ストップ&ゴーの続く街なかから、ゴールドウイング ツアーのホームゲレンデたる高速道路に駆け上がれば、初対面の時の不安はウソのように飛び去って、柄にもなくハイウェイキングになったつもりで胸を張る。とはいえライダーの気の小ささを反映して、一番左の車線でクルージングする。100km/h巡航時のエンジン回転数は、トップギアで2000rpmを少々上まわる程度だから、その走りは悠々たるもの。クルーズコントロールを作動させて安楽に走りつつ、オーディオを楽しむことも可能だ。
目の前のフロントスクリーンは、ハンドルに設けられた電動スイッチで無段階に高さを調整できる。一番上の位置にすると、サイドのカウリングはじめボディ全体の空力設計の恩恵で、正面からの風は強力にカットされる。寒い冬のハイウェイではありがたかろう。そのうえグリップヒーターやシートヒーターも備わる。ただし、この日は穏やかな晴天に恵まれたので、敢えてスクリーンを下げて、少しばかり風を感じながら箱根を目指した。
HONDA GOLDWING TOURDan AOKIスクリーンは手元のスイッチで上下させることができ、走行中のウインドプロテクション効果を高める。メーターパネル中央には7インチのTFT液晶パネルを備える。Dan AOKIホンダ・ゴールドウイングは、昨2018年に(2011年の仕様変更を挟んで)17年ぶりのフルモデルチェンジを受けた。ニューモデル最大の狙いは“若返り”だろう。冒頭で「デッカイ」と書いたが、それでも旧型よりは55mm短くなっている。車重も2輪として絶対的には重いけれど、417kgから383kg(6MTモデルは379kg)に軽量化された。シャープに引き締められたデザインも新型のジマンだ。
グレード構成にも“若返り”の意欲が表れていて、これまではパニアケース(サイドのハードケース)を左右に備え、立派な「リアシート+トランク」を持つタイプを標準、装備を簡素化したものを派生車種/グレードとしてきたが、今回から、前者がゴールドウイング ツアー、リアトランクレスが標準のゴールドウイングとなった。
HONDA GOLDWING TOURDan AOKIゴールドウイング「ツアー」はフルフェイスヘルメット2コが収納できるリアトランクと左右2つのサドルバッグを装備。合計で110リッターの容量を持つ。Dan AOKIなるほど、リアがスッキリすると、グッとスポーティな雰囲気が強まるが、一方で「やっぱり“ファーストクラスな”リアシートがなくっちゃね」というご夫婦もいるわけで、ここらへんがロングセラーシリーズの難しいところ。価格は標準モデルが278万7400円(6MT)と293万0400円(DCT)、ツアーが301万8400円(6MT)と338万1400円(DCT)となる。いずれも受注生産扱いだ。
新しいゴールドウイングの目玉は、前出のデュアルクラッチ・トランスミッションとフロントサスペンション。新しいサスペンションは、上下にアームを持つダブルウィッシュボーンとなった。通常のテレスコピック式だと、どうしてもタイヤは後ろ斜め上方に向かって移動するが、ダブルウィッシュボーンならもっと角度を立てて動かすことが可能。そのため前輪とエンジンとのクリアランスを詰めて、フラット6をこれまで以上に前進させられた。フロント荷重を増加させて、さらにスポーティなハンドリングを目指したわけだ。ニューゴールドウイングの全長は旧型より短くなっているが、ホイールベースは5mm延びた1695mmである。
HONDA GOLDWING TOURDan AOKIタイヤサイズはフロント130/70R18、リア200/55R16。フロントフォークは一般的なテレスコピックではなくダブルウィッシュボーン方式を採る。手動式のパーキングブレーキも装備。Dan AOKIゴールドウイングは、ライダーの操作とスロットル開度を電気的に繋ぐスロットルバイワイヤを採っている。エンジン、ギア、サスペンション、ブレーキなどを統合制御するシステムを持ち、4種類のドライブモードが設定できる。ノーマルモードが「ツアー」なのがカッコいい。そのほかに「スポーツ」「エコノ」「レイン」から選べる。
山道を前に「スポーツ」に設定すると、ゴールドウイング ツアー、わかりやすく変身する。6気筒エンジンのレスポンスが噛み付くばかりに鋭くなり、ギアはシフトアップが遅らされ、ホールドする範囲が広くなる。右手のわずかな動きに、豪華なヘビー級バイクが逐一ついてくる感覚が、なんとも贅沢だ。左手のボタンを使ってシフトダウンすると、見事なブリッピングを利かせて回転を合わせてくれる。
HONDA GOLD WINGDan AOKIスイッチ類は左右のハンドルに機能的に配置されるほか、オーディオやナビゲーションなどのインフォテイメントにかんするスイッチはセンターコンソールに集められている。Dan AOKI大排気量の立派な体格ながら「乗せられている」感がないのが、いや、実際には十分に乗せれられているわけですが、あたかも自分で操っている気になれるのが凄い。俊敏とはいいかねるけれど、乗り手の操作に素直に応じて、想定したラインをキレイにトレースしてくれる従順さが嬉しい。あまり調子に乗ると、タイトカーブで低い位置にあるステップを擦って肝を冷やすけれど、ゴールドウイング、決して直線だけの鈍重な乗り物ではない。さすがはホンダのトップ・オブ・モーターサイクルである。
ひとしきり“興奮”を楽しんだ後、モードを「ツアー」に戻して曲がりくねった道を適度に流すと、余裕ある走りが楽しくも気持ちいい。リアシートに愛妻を(ダンナでもいいけど)乗せて走るのが、ゴールドウイング ツアーの正しい姿だから、当然といえば当然か。ちょっとしたスポーツ走行もいいけれど、シャカリキに飛ばさなくてもワクワクする。適度に加減してオープンエアを満喫できる。たしかにホンダ・ゴールドウイング ツアーは、タイヤが2つ少ないオープンカーのような乗りものなのだった。
HONDA GOLD WINGDan AOKI文/写真・アオキヨシユキ
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