長年にわたりWorldRX世界ラリークロス選手権の強豪としてプジョーを投入するハンセンWorldRXチームが、新年度に向けてフル電動モデル『プジョー208 RX1e』の印象的な新デザインを発表。そのスキームには“温故知新”とも言うべきハンセン・モータースポーツのファミリーカラーでもある“レッド”が復活し、その輝かしい伝統を表現している。
またシリーズは昨季最終戦として初開催し、成功を収めた香港に続き新たな市街地戦の構想を模索し、ラリークロスが生誕した国でもあるイギリスで開催中の人気イベント『MotoFest Coventry(モーターフェスト・コベントリー)』とジョイントし、来季2025年の世界選手権開催を計画している。
WorldRX“6冠”の絶対王者が電動での王座防衛を捨て、持続可能燃料採用の“内燃機関”モデルに回帰
今季2024年より導入される“Battle of Technologies(バトル・オブ・テクノロジーズ)”の構想に基づき、新たにサステナブルフューエル採用の内燃機関(ICE)搭載車へと回帰したクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)とは異なり、同じくファミリーチームのハンセンWorldRXチームは、最後に獲得した2021年のチームタイトル奪還を目指し、ティミー&ケビンのハンセン兄弟のために、引き続き電動最高峰の“RX1e”モデルを用意した。
「こうしてレッドに戻るのは本当にいい気分だ」と語るのは、2019年の世界チャンピオンであり、昨季は5年ぶりの未勝利シーズンという不本意な結果に終わっていた兄のティミー。
「ここまで長らくのあいだ、僕らはブルーが基調のクルマをドライブしてきたが、子どものころに父(ケネス)がレースをしているクルマはつねにレッドだった。つまりレッドは僕らの色、ハンセンの色のように感じられるし、本当に居心地がいいよ」と続けたティミー。
「新シーズンを迎えるにあたり、異なるマシン同士の戦いになるべきだという僕の意見は正しかったようだ。この“バトル・オブ・テクノロジーズ”の理念は気に入っているし、とてもエキサイティングになるだろう。僕らは一歩踏み出して、ファンにとってさらに良いショーを披露する必要があるからね」
その点でも、内燃機関や電動モデルなど観る側にも応援対象の選択肢を用意する今回のコンセプトは、勝負に際する「新たなエッセンスを提供することになる」とティミーは予測する。
「スタートでは(電動の)僕らにパワーがあり、瞬時のトルクは有利になるはずだが、内燃機関モデルより約10パーセント重い重量を運ばなければならない。そこがどう影響するか。トータルの1周ではEVにギヤシフトはなく、ターボラグもないから、そこでは優位に立てるはずだ」との見通しを語ったティミー。
■「ラリークロスに興味がある」と明かすBTCC王者
「ただしEVはブレーキングで不利になるだろう。エンジン車はすべてのホイールに制動を効かせられるが、僕らは前後2基のモーターでそれぞれのアクスルを制御する。これがコーナーへの進入で少し時間を失うことになり、内燃機関の彼らと同じくらい遅くブレーキをかけると、後輪がロックしてしまうんだ。こうした勝負の結末は、誰もが驚くことになるだろうね……」
一方、地元スウェーデンが誇る伝説の地、ホーリエスで7月6~7日に迎える“Magic Weekend(マジック・ウイークエンド)”での開幕戦を前に、弟のケビンは6月初旬にイギリス・コベントリーを訪問。ヨーロッパ有数の大手エネルギー企業“E.ON”が支援する英国最大の無料モータースポーツイベント『モーターフェスト・コベントリー』の主催者らと面会し、定期的に20万人以上の来場者を集めるというフェスティバルの雰囲気をつかみ、トラック設計の初期段階から深く関わってきたというプランに改めての手応えを得ている。
「歴史的にイギリスの自動車産業はコベントリーを拠点としていて、ここでラリークロスにどれほどの情熱と熱意が注がれるかは誰もが知っている」と語ったケビン。その言葉どおりラリークロスは1967年に英国で誕生し、国内に多くのファンが存在する。
「雰囲気は信じられないほど素晴らしく、市内の環状線のあらゆる場所で音楽が流れていた。このモーターフェスト・コベントリーにWorldRXが加われば、さらに素晴らしいものになるだろうし、正直言って史上最大のラリークロス・イベントになると思うよ」
そのコベントリーを本拠とするBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の2022年チャンピオン、トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)も、イギリスの“Motor City”で進む世界選手権の計画に「興味を唆られた」と明かした。
「僕はずっとラリークロスに興味があるし、イギリス選手権に出場したときは本当に楽しかった。だから来季コベントリーにWorldRXが来るかもしれないというニュースを見たとき、自然と興味が湧いたんだ」と続けたイングラム。
「僕のおもな仕事はBTCCでの活動だが、できる限り詳しくラリークロスを追ってきた。現在のWorldRX車両はとんでもないモンスターで、そんななかでも(ヨハン・)クリストファーソンや(マティアス・)エクストローム、元BTCC王者(アンドリュー・)ジョーダンのような人たちは、異なる分野の間で多くのスキルを転用できること、ツーリングカー乗りがこのスポーツで大成功を収められることを証明してきた。だからこそ、個人的にもぜひ挑戦してみたいね!」
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