楽しさを追求した乗り物とは
どれだけのパワーが必要なのか? 別の言い方をすれば、どれだけ小さいパワーで満足できるのか?
【画像】「非力」でも最高に楽しい乗り物【スマート、ロータス、ルノー、トライアンフ、カシュートを写真でじっくり見る】 全38枚
今回ご紹介するのは、最高出力100ps以下の5台のヒーローで、スピードにこだわらず、楽しさを追求したものたちだ。
少し前、わたしは新型メルセデスAMG A 35に乗った。とても有能で、非常によくできていて、インテリアの質感も高く、とても速い。その2.0Lターボエンジンは310psを発生し、四輪駆動で0-100km加速5秒以下というパフォーマンスを誇る。
メルセデスはこれに続いて、最高出力421psの新型A 45を出した。A 35より25%パワーアップしているが、楽しさも25%アップしているのだろうか? もちろん、そんなことはない。A 35の運転が楽しいというわけではなく、極めて頼もしく速いだけだ。
馬力競争は収拾がつかない。ハッチバックは150psしかなくても十分だし、600ps以下のスーパーカーは然るべきスーパーカーとは言えない。そうではないだろうか? すべてはマーケティング主導だ。エンジニアたちは、馬力を増やすことはほとんどの場合、重量を増やすということだと理解している。
パワーと楽しさは必ずしも一致しない
例えば、シトロエン2CV(旧型ミニ・クーパーSでもいい)を所有したことのある人ならわかると思うが、楽しむためにパワーは必要ない。実際、100ps以下でも面白いクルマはたくさんある。
100psという丸い数字がいい。この数字を頭の中でグルグル回しているうちに、パワーはそれほどでもないが、ものすごく楽しいマシンについて考えるようになった。自動車だけでなく、オートバイやその他の乗り物もそうだ。例えば飛行機。パイパー・カブは、わずか65psととてもベーシックなマシンだが、飛ぶのが楽しい。
そのことを証明するために、AUTOCARは今回100psを超えない素晴らしいマシンを集めた。古いものもあれば新しいものもあり、「ラッダイト」という筆者個人の評判を覆すために電動車も用意した。それから、カシュート・スペシャルというエアレーサーも持ってきたので、お楽しみに。
スマート・ロードスター
わたしの妹はカーデザイナーのゴードン・マレー氏を知らないが、彼との共通点が1つある。2人ともスマート・ロードスターを所有しているということだ。そして2人とも、その欠点を認めながらも愛している。
スマート・ロードスターは、ほとんど完璧なミニチュア・スポーツカーであり、おそらく21世紀においてオースティン・ヒーレーの「フロッグアイ」スプライトに限りなく近い。ゴードン・マレー氏は、スプライトのオーナーでもある。
わずか82psの3気筒ターボエンジンを搭載するこのモデルには、ノッチバックのシンプルなロードスターと、マレー氏(と我が妹)のようなロードスター・クーペの2つのバージョンが存在する。後者は815kgと重めだが、それでも1トン当たりのパワーウェイトレシオは99psだ。
このクルマが楽しいのは、そのサイズにある。フェラーリはおろか、現行のポルシェ911でも維持できないようなスピードで田舎道を走ることができるだけでなく、実際のスピードよりもはるかに速いという印象を与える。そしてそれは、現代におけるとんでもないメリットになる。
雨漏りの可能性を除けば、ロードスターのアキレス腱は6速シーケンシャル・トランスミッションだ。ギクシャクして洗練性を欠くが、慣れればそれに合わせて運転でき、楽しさがイライラを上回る。
スマート・ロードスターは2003年から2006年までの3年間という短い生涯を閉じた。スマートが儲かることはなかったし、保証請求には多額の費用がかかった。もっと長生きして、欠点を直してもらいたかったクルマがあるとすれば、それはスマート・ロードスターだ。
古くなればなるほどその価値が増すような小さな宝石のようなクルマであり、欠点を無視したり、回避したりするのが簡単なクルマでもある。
ロータス6
2CVのような非力なクルマを運転すると、スムーズさとパワー・マネージメントが身につくので、より速く、より優れたドライバーになれるというのは知る人ぞ知る定説だ。その哲学を、こちらのロータス6に当てはめて考えてみよう。
1954年、ロータスのごく初期に製造されたこの6は、シンプルな乗り物の本質である。パワーユニットはいくつかあるが、今回用意した車両は最も一般的なフォード・プリフェクトE93aの1172ccサイドバルブを搭載。このエンジンは、アクアプレーン社による社外品シリンダーヘッドとツインキャブレターを備えており、おそらく40psを発生すると思われる。
ロータス6を運転するには、ABSやTCSといった運転支援システムに慣れた現代人にとっては、かなり集中力が要求される。3.5インチの細いリムの内側にあるドラムブレーキは油圧式ではなく、ケーブルで操作される。
トランスミッションはフォード製の3速で、1速にシンクロメッシュはない。長年にわたり、多くの人が純正のウォームローラー式ステアリングをより現代的なラックに交換してきた。今回の車両は純正状態で、かなり気難しいが、そもそもこのクルマの運転には熟考が必要であり、純粋な体験ができるのだから、そんなことは大した問題ではない。
このしなやかで小さなロータスは、狭い道ではジャガーXK120のドライバーを慌てさせたかもしれない。XK120はパワーこそあれど、ブレーキが弱く、路面追従性もわずかだ。
何はともあれ、1960年代のレーシングドライバーの多くは、このようなロータスのステアリングを握って見習い期間を過ごし、さまざまな教訓を学んだ。我々にとっても再訪する喜びがある。
トライアンフ・スラクストンR
オートバイは、わたしが個人的に最も長く愛してきた乗り物だ。数年前、同僚のスティーブ・クロプリー(編集長)とわたしは、バイクを持たずに派手なスポーツカーを所有するよりは、ごく控えめなクルマとバイクを所有する方がいいということで意見が一致した。今日、わたしはその確信を強めている。
100ps以下のバイクを見つけるのは簡単だし、速くて楽しいバイクを見つけるのも簡単だ。今回選んだのは、このトライアンフ・スラクストンRだ。1200cc並列2気筒水冷エンジンを搭載し、最高出力97psを発生。6速トランスミッション、乾燥重量206kg。
標準モデルのスラクストンも同じエンジンを搭載するが、Rモデルに装備されるセクシーなオーリンズ製リアサスペンションやショーワ製倒立フロントフォーク、ブレンボ製モノブロックキャリパーはない。
トライアンフはスラクストンRの最高速度を公表していないが、推定215km/h前後、つまり腕が痛くなり、サドルから吹き飛ばされそうになるポイントを70km/hほど超えたあたりだろう。ライディングモードには「レイン」、「ロード」、「スポーツ」があるが、エンジンのパワーデリバリーはとてもスムーズなので、濡れた路面でスロットルレスポンスの速いスポーツでも問題ない。
古いバイクは好きではない。率直に言えば、ハンドリングが悪かったり、ちゃんと止まらなかったり、タイヤがグリップしなかったり、信頼性が低かったりするのがほとんどだ。わたしはノートン、トライアンフ、ラベルダと乗り継いできたが、そのどれにも戻りたくない。このスラクストンRに乗って、さらに確信した。ハンドリングは素晴らしく、ブレーキは驚異的で、必要なだけのパワーがある。
とはいえ、わたしが最も欲しているのはドゥカティのパニガーレV4(写真)だ。200ps以上だからというわけではなく、ボルトの一本まで精巧に作り込まれたゴージャスなデザインが魅力的だから。そして、そのエンジン音がとんでもないからだ。もし馬力が半分でも、わたしは同じように感じるだろう。
ルノー・トゥイージー
現代的なクルマで、我々の要求に合うものとは? これには頭を悩ませ、最終的に同僚マット・ソーンダースとマット・プライヤーに助けを求めた。
スズキ・スイフト? 昔ほど面白くない。ベーシックなフォード・フィエスタ? 十分ではない。スズキ製エンジン搭載のケータハム130なら最高だったが、もう製造されていない(本稿執筆時点)。モーガン3ホイーラーが妥当だ、と2人は言った。「それか、ルノー・トゥイージーだね」
素晴らしい提案だ。ルノーが奇抜なEVを出して以来、わたしは一度も乗っていない。確かに、電気モーターの出力はわずか17psで、上限の100psをはるかに下回っている。
最近はEVの世界でさえパフォーマンスにこだわるようになってきているが、トゥイージーの最高速度はわずか80km/hだ。今の時期、1回の充電で走行できる距離は50km。この限られた最高速度と短い航続距離を持つトゥイージーは、街中が最もくつろげて楽しい。
乗り心地は特にスムーズではないので、道路の整備状況がそれほどひどいものでなければ、もっと楽しいだろう。スキニーなタイヤ、ちょっと奇妙な感触のステアリング、そしていつもとは違う運転視点が、楽しいドライブを演出する。
カシュート・スペシャル
さて、この小さなマシンは本当に度肝を抜かれる。カシュート・スペシャル(Cassutt Special)と呼ばれる本機は、1951年に航空会社TWAのパイロット、トム・カシュート氏によってエアレース専用に設計された。
小さな胴体は鋼管製のスペースフレームを布で包んだもので、主翼は木製で、スプルース合板が貼られている。搭載エンジンはコンチネンタル0-200で、200立方インチ(3.3L)の空冷フラット4で固定ピッチの木製プロペラを駆動する。
このシンプルなエンジンの出力は100psと控えめで、今回取り上げるにふさわしい。機体重量はわずか276kgである。
実際に飛ばしてみる。カシュート・スペシャルの巡航速度は290km/h、VNE(超過禁止速度)は400km/hとされる。低抵抗かつ軽量の機体であれば、100psでこの性能を発揮できるのだ。これはすごい。
閉所恐怖症の人は、カシュート・スペシャルを好きになれないだろう。コックピットは小さく、「着る(wear it)」という表現がぴったりだ。操縦は単純明快だが、着陸はそう簡単ではない。難点は160km/hでアプローチしなければならないことで、これは大半の軽飛行機やスピットファイアよりも速い。
カシュート・スペシャルは有名な米ネバダ州のリノ・エアレースで大成功を収めている。レーシングカーを所有するなら、たとえジャガーDタイプのように公道走行が可能なものであっても、サーキットに持ち込んで楽しむ必要がある。カシュートのようなマシンでは、その必要はない。完全な曲技飛行が可能なので、晴れた日にループやロールをして興奮を味わうことができる。
さらに楽しいことに、300km/h以上で谷間を駆け抜け、ジェット機のパイロットになったような気分も味わえる。合法的にね。なにより、機体の性能を100%発揮できる。マクラーレン720Sのポテンシャルの何%を公道で使えるだろうか? せいぜい30%程度だろう。
あえてベストを選ぶなら……
この5台の素晴らしいマシンから勝者を1台選べと編集者に言われた。なんて難問なんだ。四輪でないものを選んだらクビになるのだろうか? まあ、もしわたしがAUTOCARに二度と登場しないとしたら、それはトライアンフ・スラクストンRを選んだからだ。
飛行機も魅力的だったが、わたしはすでに速くて、しかもカンヌまで2人と荷物をノンストップで運べる飛行機を所有している。カシュートにはそれができない。トゥイージーはわたしには都会的すぎるし、美しいロータスはちょっと古すぎるかもしれない。もう少しパワーのある初期型7がいいと思う。
最終候補は、スマートとトライアンフのどちらかだった。わたしのバイク好きはすでに説明したとおりで、最終的にはそれが勝敗を分けた。
また、現代のバイクの性能を公道で楽しむことはまだ可能だし、ABSやトラクションコントロール、ライディングモードがあるとはいえ、高速で乗りこなすのは非常に難しい。それに、うまく頼めば妹がスマートを貸してくれるだろう。
というわけで、わたしコリン・グッドウィンが選ぶ5台のマシンを紹介した。でも、実はまだ他にも候補があるので、最後に「おまけ」として紹介しておこう……。
おまけ1. マッセイ・ファーガソンTE20
「グレイ・ファーギー」として知られるこの軽量トラクターは、1966年頃、わたしが農場を営む家族の友人の膝の上に座って、自分の手で操縦した最初の乗り物だった。現在も妻の叔父が所有しており、わたしはヨークシャーのリントンにある彼の地元のパブまで運転していく。
おまけ2. アルバトロスのスピードボート
水上でのスピードは、陸上の2倍に感じられる。アルミニウム製のアルバトロスは、フォードE93aエンジンや、最高速度80km/hを超えるコベントリー・クライマックスのエンジンを搭載できることから、水上のロータス6と言える。グレース・ケリーやブリジット・バルドーも所有していた。
おまけ3. レーシング・ホバークラフト
ホバークラフトレースはやったことがないが、とても楽しそうだ。わたしは詳しく知らないが、少し調べてみると、英国のホバークラフト・クラブにはフォーミュラ35という35psのクラスがあることがわかった。200psを超えるF1クラスよりは、初心者には理想的と言えそうだ。
おまけ4. ガスガス(Gas Gas)のトライアルバイク
トライアルバイクのエース、ドギー・ランプキン氏がグッドウッド・ハウスを走り回る動画を見たことがあるだろうか? すぐに見に行ってほしい。トライアルライディングは驚くほど楽しい。モータースポーツの中で、スピードの役割がこれほど小さいスポーツも珍しい。ガスガス(Gas Gas)は125ccから300ccまでのバイクを製造しているが、後者でさえ50ps以上はない。
おまけ5. ジョン・ディアX590芝刈りトラクター
我が家の芝生は爪切りばさみで切れるほど小さいので、乗用芝刈り機を所有するというわたしの生涯の野望は達成できそうにない。それでも、この22psのジョン・ディアX590は欲しい。ホンダも芝刈り機を作っているが、ちょっとホンダっぽすぎる。
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