メルセデス・ベンツは2030年完全EVシフトは無理と判断
メルセデス・ベンツがEVシフト減速のために、2030年までに完全EVシフトを行うという当初の目標からトーンダウンして、2030年以降も内燃機関車の販売を続けるという驚きの発表を行いました。メルセデス・ベンツのEVシフト減速の主張に関して解説します。
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今回取り上げていきたいのが、ドイツ御三家の一角を構成するメルセデス・ベンツの存在です。
このグラフは、2019年シーズン以降の、メルセデス・ベンツを含めたドイツ御三家、およびテスラやレクサスといった、プレミアムメーカーの世界全体の自動車販売台数を比較したものです。
水色で示されたメルセデス・ベンツについては、2019年以降、断続的に販売台数を落としており、2023年シーズンではBMWに差を明けられてしまいながら、アウディ、さらには急速に販売台数を伸ばしているテスラとも、ほとんど同等の規模感にまで差を縮められてしまっている状況です。
とくにこの2023年シーズンに関しては、半導体不足による生産の制約が解消された1年であったことから、競合が軒並み販売台数を伸ばしているなかにおいて、メルセデス・ベンツだけ、唯一と言ってもいいほど販売台数が伸び悩んでいるということは注目に値するでしょう。
このメルセデス・ベンツについてもっとも重要なポイントというのが、2030年までにメルセデス・ベンツがグローバルで発売するすべてのモデルにおいて、市場が許す限りバッテリーEVのみに移行するという完全EVシフトの方針を打ち出していたという点です。
そして、そのEVシフトに向けてEV専用シリーズであるEQシリーズを立ち上げ、EQA、EQB、EQC、EQE、EQE SUV、EQS、EQS SUV、マイバッハEQS SUV、EQV、EQTなど、多くのセグメントにおいてEVをラインアップし、2030年までの完全EVシフトを進めようとしていたという背景が存在します。
ところが、そのメルセデス・ベンツについて新たに明らかになったのが、掲げていた2030年までの完全EVシフトの目標を事実上撤回するというまさかの発表です。具体的には、2020年後半までにバッテリーEVとともにPHEVも含めた、メルセデス・ベンツ独自の表現方法であるxEVの販売シェア率を最大50%にまで引き上げると説明。つまり、バッテリーEV100%という表現を撤回しながら、そのうえPHEVも含めた販売シェア率を目標にするという、目標をさらに緩和してきた格好です。
いずれにしても2030年以降、メルセデス・ベンツはPHEV、さらには既存の内燃機関を搭載した車両についても販売を継続するという方針転換を行なってきた格好となります。
この方針転換の理由に関して、メルセデス・ベンツは、当初の想定以上にEVのコストを下げることができておらず、さまざまなパワートレインを提供するべきであると主張しており、実際にメルセデス・ベンツの2023年シーズンの決算内容を見ても、とくに乗用車部門の営業利益率は12.6%と、2022年シーズンに記録していた14.6%から低下してしまっています。
メルセデス・ベンツに関しては、どのセグメントにおいても販売台数は横ばいであったものの、唯一バッテリーEVセグメントにおいては前年比で61.3%もの販売台数の増加を記録しており、このことからもバッテリーEVをより多く販売したことがわかりますが、その分の開発コストなどを含めると、全体の販売台数を増やせなかったことも相まって、利益を圧迫してしまったと捉えることも可能です。
したがって、2030年までに持続的な利益を確保しながら、バッテリーEV100%に転換することは無理と判断した格好といえるでしょう。
他方で、今回のメルセデス・ベンツの発表に関しては、その販売データからさらにメルセデス・ベンツの苦しい内情が見え隠れしているという点に極めて注目です。
まず、このグラフは四半期別のパワートレイン別の販売台数、およびそのなかでもバッテリーEVの販売シェア率を示したものです。
このとおり、緑色で示されているバッテリーEVの販売台数が着実に増加していることが見て取れます。一方で、とくに欧州市場における税制優遇措置の変更などによって、水色で示されたPHEVの販売台数が、すでに横ばい状態になっている様子も確認可能です。
ところが、黄色で示されているバッテリーEVの販売シェア率という観点では、直近の2023年第四四半期においても13%弱というシェア率に留まっており、2023年通しでのシェア率も概ね12%程度でした。
メルセデス・ベンツは公式に表明していなかったものの、現地メディアによれば、メルセデス・ベンツ内部の目標値は2023年シーズン通しでバッテリーEVのシェア率20%を掲げていたといいます。問題は、その目標値には遠く及んでいなかったという点です。メルセデス・ベンツが掲げた目標に対して、実際のバッテリーEVの販売台数が大きく乖離してしまっている現状が、2030年までのバッテリーEV100%という目標を大きく引き下げざるを得なかった要因なのです。
次に、このメルセデスの販売戦略を理解するうえでもっとも注目するべきは、そのマーケットごとの販売シェア率という観点です。
このグラフは、2019年以降の四半期別における地域別の販売台数、およびそのなかでも、中国市場の販売シェア率を示したものです。
このグラフのとおり、ドイツに本拠地を構えるメルセデス・ベンツの最大マーケットというのは、単独マーケットではダントツで中国市場であり、販売総数の3分の1以上、4割近い販売シェア率です。これは欧州全体の販売規模と同等のレベルでもあります。
つまり、メルセデス・ベンツの電動化戦略をはじめとする将来の販売戦略については、最大マーケットである中国市場の販売動向に大きく左右されるということなのです。
中国市場で売れないと各メーカーのEVシフトは成り立たない
そして、その中国市場における電動化動向を確認してみると、緑で示されたバッテリーEVの販売台数については、中国全体の販売台数と比較しても大したシェアを獲得することができておらず、直近の第四四半期において、ついにようやく5%の大台を突破した見込みであるものの、それでもグローバル全体のEVシェア率と比較しても、まったくEVシフトが進んでいない様子を確認可能です。何といっても、その第四四半期を見てみると、3年連続販売台数が低下しています。
つまり、メルセデス・ベンツの最大マーケットであり、今後の電動化戦略を決定するうえで重要なマーケットでもあるEV大国の中国市場を見てみると、メルセデス・ベンツのEV戦略がまったくうまくいっていない様子を確認でき、実際にそのEVシフトがうまくいっていない影響もあってか、中国市場における販売台数の低下が止まらない状況です。
少なくともこのままいけば、2030年までに中国市場を完全EV化することは不可能であり、よって、その目標を取り下げたという見方ができるわけです。
そして、この中国市場で起こっているメルセデス・ベンツにとっての厳しい販売動向というのが、メルセデス・ベンツをはるかに凌ぐ、圧倒的な強豪EVのポテンシャルの高さです。
とくに2024年シーズンに突入して、高級EVセグメントで地殻変動を起こしている存在というのがファーウェイのAITOブランドです。2月中から正式納車がスタートしている、フラグシップSUVのM9については、その2月だけで、なんと5000台を超える販売台数を記録しています。
このM9は、日本円で1000万円級の高級セグメントであり、それが月5000台ほど売れているというのは、中国人に人気のドイツ御三家でも一部の人気モデルでしか達成できない販売規模であり、EV市場の地殻変動といっても大袈裟ではありません。
※参考記事:中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
さらに、そのEV性能を比較してみても、メルセデス・ベンツのフラグッシップSUVであるEQS SUVと同等のEV性能を実現しながら、その値段設定は、なんとM9の半分ほどの価格。装備内容を比較してしまうと、もはや勝負にならないほどにM9が充実していることから、コスト競争力という点では、まるで勝負になっていない状況です。
それでもメルセデス・ベンツというブランド価値により、メルセデス・ベンツは売れているはずであると思われがちなものの、メルセデス・ベンツのEVの月間販売台数の変遷を見てみれば、月間1000台の壁を突破した車種はいまだに、EQB、EQE、そしてEQE SUVの3車種のみ。
とくに、今回比較対象として取り上げているEQS SUVについては、直近の12月と1月それぞれ122台、そして90台と、完全に販売が低迷してしまっている様子が見て取れます。
そして、メルセデス・ベンツは、中国市場においてEVの大幅値引きを行っており、とくにEQS SUVに至っては、最大26万元、日本円に換算して衝撃の535万円ものとんでも値引きを行っている状況です。それで月間100台しか販売できていないという点こそが、なぜ乗用車部門の収益性が悪化し、EVのビジネスが持続的でないと主張するのかの理由であることが見て取れるでしょう。
ちなみに、直近においてメルセデス・ベンツのトップは、中国製EVに対してさらなる関税措置を設けようとする欧州連合を牽制する形で、その関税率をむしろ引き下げるべきであるという主張を行っています。
あくまでも、健全な競争を促すべきであると主張しているものの、これも、ここまで説明したメルセデス・ベンツの中国市場における背景事情を理解すると、その内心が読み解けるわけです。つまり、仮に欧州が中国製EVを恐怖に感じて関税措置をさらに追加で適用しようとすれば、中国側は報復措置として、欧州から中国へ自動車を輸出する際に追加の関税を課すことにつながる可能性が濃厚となります。
ただでさえ、メルセデス・ベンツの収益源として重要であるはずの中国市場における高級車販売において、15%もの関税がかかっている現状にさらに税金が追加されることになれば、それこそEVシフトどころか、メルセデス・ベンツの事業全体に大きな悪影響が出てしまうわけです。
まさに欧州としては、大衆ブランドのために中国製EVの流入を止めようとすると、今度は高級ブランドの中国への自動車輸出に大きな悪影響が出てしまうという、完全に八方塞がりとなってしまっているわけです。
メルセデス・ベンツは、ただでさえ大幅値下げを行ってもEVが売れないという状況をこれ以上悪化させないためにも、中国製EVに対する追加の関税措置には反対の意向を表明しているというわけです。
このように、2030年までの完全EVシフトを事実上撤回してきたメルセデス・ベンツについては、世界全体のEVシフトが想定以上に進んでいないように見えて、じつは最重要マーケットである中国市場でまったくEVが売れていないという点こそが、EVシフト撤回の大きな理由となっている可能性が高いわけです。
中国市場においては現在、急速にEVシフトが進んでおり、つまりメルセデス・ベンツの完全EVシフト撤回というのは、世界のEVシフト減速というデタラメ論理が理由でもなんでもなく、シンプルに、メルセデス・ベンツのEVが中国人に選ばれていないだけであり、実際に、競合の中国製EVにまったく太刀打ちすることができていない状況を踏まえれば、メルセデス・ベンツのEVシフトの実力が、中国勢に力負けしているだけなのです。
むしろEVシフトを遅らせれば遅らせるだけ、中国製EVの支配が強まるだけです。主力マーケットである中国市場のシェアを失っていくのを、ただ指を咥えてみているだけとなるわけです。
いずれにせよ、メルセデス・ベンツの完全EVシフト延期の発表だけをみてEVシフトが減速していると理解するのは明確に誤りであり、この流れで漁夫の利を得るのは、現在中国国内でEV戦争を戦っている中国のEVメーカーたちなわけです。
関税措置で対抗しようとしても、それは巡り巡って自分たちの首を絞めるだけであり、欧州メーカーの、極めて厳しいEVシフトの現実が、図らずも浮き彫りとなってきているわけです。
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みんなのコメント
>ハイブリッドがこの先ペナルティとられることも知らない無知がなんか言ってる
>これからトヨタや日産はテスラにペナルティ払ってハイブリッドを売ることになる
>ざまぁーーー
なんで日本メーカーがテスラにペナルティ払うの?
昔のようなトキメキが無い。