もくじ
どんなクルマ?
ー 始まるフォルクスワーゲンの第3章
ー 2025年までに10台の新しいEVをリリース
どんな感じ?
ー EV用に開発したプラットフォーム「MEB」を採用
ー 拡張現実を用いたヘッドアップ・ディスプレイ
ー シティカーとして理想的なドライバビリティ
ー VWらしい乗り心地の獲得はこれから
「買い」か?
ー 経営陣が目指すVWの姿
スペック
ー フォルクスワーゲンID 3 58kWh 203psプロトタイプのスペック
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どんなクルマ?
始まるフォルクスワーゲンの第3章
フォルクスワーゲンの全く新しい純EV「ID 3」は、ここ数十年の中で最も重要なクルマだといえるかもしれない。世界最大級の自動車メーカーによる新モデルということもあり、間違いなくエポックメイキングな存在となる。
フォルクスワーゲンの創成期にリリースされていたモデルは、企業の姿そのものを反映した、まさにドイツ国民のクルマだった。1970年代から、その次の時代を迎えると、最も売れていたクルマがフォルクスワーゲン・ブランドを象徴するものになった。皆さんご存知、フォルクスワーゲン・ゴルフだ。そしていま、第3章が始まろうとしている。ドイツから新しい潮流が生まれるかもしれない。
以前にもフォルクスワーゲンからは色々なムーブメントが聞こえてきた。元フォルクスワーゲンの取締役会会長、フェルディナンド・ピエヒは1990年2000年にかけて、ブランド自体を上級志向のものに変えたいと考えていた。エンジニアはワンランク上のクルマづくりに注力するが、結果として大きな利益を上げたのは、フォルクスワーゲン自身より、グループ内の姉妹ブランドの方だった。
2025年までに10台の新しいEVをリリース
2000年代後半に登場したUpコンセプトが巻き起こした話題性も大きかった。近年では再び富裕層へアピールするようなクルマのリリースが続いている。アトラスやフィデオン、アルテオン、そして現在のトゥアレグなど。新しいフォルクスワーゲン像を目指しているようだが、どれも充分な反応は得られていないように思える。
しかし、今回は本当にブランドにとって新しい夜明けを迎えるクルマになりそうだ。必要は発明の母ということわざに、導かれたようなクルマだ。純EVモデルのために生まれたフォルクスワーゲンのサブブランド「ID」も、いよいよ日の目を見ることになる。
フォルクスワーゲンは、世界的にも例を見ないほど大規模な電気自動車への投資計画を発表し、2025年までに10台の新しいEVをリリースするとしている。その中で最初の1台となる純EVが、2019年9月に開催されるフランクフルト自動車ショーで発表される。それが、ゴルフ・サイズの5ドアハッチバック「ID 3」。
今回われわれは特別に試乗する機会を得たが、面白い存在となることは間違いないだろう。使い勝手に優れたボディサイズにリアエンジンレイアウト、練られたパッケージング。最先端の技術を搭載しながら、都市部での運転のしやすさと高い静寂性を備えている。スタイリングはやや没個性的ではあるけれど。駐車場で充電をする手間はあるが、完全にエミッションフリーで走行が可能。二酸化炭素排出ゼロに向けて、われわれにも変化が求められている。
プロトタイプの限定的な試乗ではあったが、いち早くインプレッションをお届けしたい。
どんな感じ?
EV用に開発したプラットフォーム「MEB」を採用
フォルクスワーゲンの第3章を切り開き、そしてブランド・ビジョンを指し示すであろう、プロトタイプ・モデルの試乗に招待されたAUTOCAR。繰り返しになるが、このクルマは間違いなく大きなインパクトを与える存在となるだろう。エクステリアには偽装はされているが、比較的軽度なもの。しかし、インテリアのカモフラージュはかなり厳重で、インスツルメントパネルすらしっかりと見ることができない。スピード違反を犯さないように、後付のスピードメーターが取り付けられているほど。
同乗し監視役を務めていたエンジニアによれば、量産モデルに対する完成度としては、まだ70~80%程度の仕上がりだという。しかしスペック的にはある程度決まっており、今回試乗したID 3の場合は、3種類用意されるバッテリーで真ん中の容量となる58kWh。モーターは2段階用意され、このクルマは高出力の方だという。
最近発表される純EVとしては比較的一般化しつつあるが、ID 3に搭載される重量のかさむリチウムイオン・バッテリーは、シャシー下部に搭載される。その結果、リアモーターでありながら、前後の重量配分は理想的といえる50:50を叶えている。純EV用に新開発されたたモジュラープラットフォーム「MEB」を採用し、フロントタイヤ側にも小さなモーターを追加することで、4輪駆動にも対応する。
床下にバッテリーを搭載するというレイアウトは、EVの場合はインテリア空間の確保と低重心化によるハンドリング性能の両面で広く採用されている。しかし、ID 3の場合は必ずしも生かされているわけではないようだ。比較的全高の高いハッチバックだが、ヘッドルームの広さはあくまでも平均レベルだったりする。
一方で全長が4.2mの比較的コンパクトなボディながら、レッグルームの広さは特筆に値する。ホイールベースは2.8mにも及び、7代目ゴルフよりも130mmも長く確保されているおかげだろう。ボディのプロポーションはかなり背が高く、キャビンフォワード。空力的にはかなり追求されているようにうかがえる。
拡張現実を用いたヘッドアップ・ディスプレイ
スタイリングはかなり異なるが、シルエットの雰囲気はBMW i3にどこか似ている。あちらもコンパクトなリア駆動のEVだから、合点がいく。ID 3の方がBMWより一回り大きく、より見慣れたアピアランスだと思う。リアシートの大きさも実用的で、ラゲッジスペースもしっかり備わっているようだ。
インテリアはほとんどが偽装されていたが、グレーとクリーム色の2トーンカラーのクロスで仕立てられたフロントシートは、実際に目にすることができた数少ない一部。シートのデザインは一般的なもので、ドライビングポジションは良好。ステアリングホイールのサイズもちょうど良い。
フロントガラスはかなり傾斜し、前方を見ると極端に短いボンネットがわずかに視界に入る。運転席に座っていると、正直、前方の車両感覚は掴みにくい。一方でコンパクトなボディサイズのおかげで、実際の交通の中での取り回し感覚は、掴みやすい方だといえる。
フォルクスワーゲンのエンジニアに、空力性能以外の理由でフロントガラスの傾斜を強めた理由があるのか訪ねたところ、特大サイズのヘッドアップ・ディスプレイのシステムをダッシュボード上部にレイアウトする必要性もあったことを説明してくれた。このシステムは、実際の視界に拡張現実的にナビゲーションのルート案内の矢印や、警告情報や歩行者検知のグラフィックなどを投影することも可能。ただし、トップグレードのみの搭載となるようだ。
クルマの機能が進化するということは、シンプルに例えるなら知的な馬を、上等なキャビンの前にくくり付けて走らせるこようなものを目指している、というのは少しいい過ぎかもしれない。しかし、われわれは高度な走行支援システム、ひいては自律運転を可能とする技術進化の過程にいるということを実感させられる。
シティカーとして理想的なドライバビリティ
同様にID 3の方法以外で、量産車のエクステリアデザインへ影響を与えずに、ドライバーへ情報を表示するディスプレイの方式を、想像することもできなかった。コスト的な事も考えると、このシステムが現時点では世界最良の拡張現実を用いたヘッドアップ・ディスプレイになるのではないかと思う。代替できるようなシステムが現れない限り、いずれ当然のものとなるだろう。
ID 3の走りは静かで活発。操作に対する反応も良く、都市部でも運転がしやすい。これはわれわれが多くのEVに対して抱くインプレッションと同じ特徴でもある。モーターの最高出力は203ps、最大トルクは31.6kg-mで、加速力に不満はく、低速域から元気に立ち上がる。むしろ余りにトルクフルでモーターのレスポンスが鋭いため、ハーフスロットル以上アクセルを踏み込む場面は殆どなかった。
そのような活発な性格を持ちながら、都市部で実際に走行させてみると、リラックスして落ち着いた走りに浸ることの方が多い。ID 3の持つ雰囲気に調和しているように思う。
ステアリングの操舵感は軽く、レシオもそれほどゆっくりしたものではない。しかし、フロントタイヤの切れ角が大きいこともあり、ロックトゥロックは3.5回転とかなり回すことになる。小回りも効くから、込み入った道路や駐車をする際には便利だろう。実際、駐車区画からクルマを出す際では、切り返しをする必要はなかった。Uターンや狭いT字路を曲がる場面でも同様。ID 3はシティカーとして、理想的な操縦性を持っているといえるだろう。
タウンスピードでの機敏性も良い。グリップ力も高く横方向のボディコントロール性にも優れている。必要ならば、かなり素早くレーンチェンジや進行方向を変えることも造作ない。BMW i3と比較して荒れた路面や継ぎ目などでの脚さばきは及ばないようだが、都市交通の流れの中では充分に快適。フォルクスワーゲンらしい、あらゆる場面でしっかり抑制の効いた自然な乗り心地を提供してくれる。おかげでドライバビリティの良さが一層引き立ってくる。
VWらしい乗り心地の獲得はこれから
滑らかで無駄のない垂直方向のボディコントロールが生む、しなやかな乗り心地はフォルクスワーゲンのクルマに期待する動的性能のひとつだと思う。しかし、ボディが小さく車重がかさむこのEVの場合、充分な水準にはまだ届いていないようだ。
今回の試乗はあくまでも限定された道路での、低速域が中心だったから、体感できた部分もごく一部ではある。しかし、ID 3へエンジニアが手を加えなければならない箇所は、まだまだある印象だった。もっとも、20インチの大径ホイールを履いたコンパクトカーに、フォルクスワーゲンらしい高水準な乗り心地を与えることは簡単ではないだろう。
ロードノイズは抑えられていたものの、特にセカンダリーライド、細かな突き上げなどに関しては落ち着きがない様子。少なくともダンパーを煮詰める作業は、優先順位として上がるべき項目になるだろう。
EVのパフォーマンスとして重要な要素に、航続距離があるが、それはより確実な情報を待つしかない。試乗車には58kWhのリチウムイオン・バッテリーが搭載されていたが、充電率90%の状態で、走行可能距離は300kmと表示されていたようだった。しかしこの数字はかなり積極的に走らせた場合の、実際より控えめに算出された数字だと思う。
試乗では市街地を65kmほど走行させたのだが、バッテリーの残量は75%と表示され、残りの走行可能距離280kmとなっていた。そこから算出すると、日常的な利用で320kmから400km程度の距離が走行可能ということになる。おそらく実際の交通状況で使用しても、現実的な数字といえるだろう。さらに大容量の77kWhバッテリーを搭載するグレードなら、480km以上の航続距離も充分期待できそうだ。
「買い」か?
経営陣が目指すVWの姿
乗り心地の最終的な仕上げは残っているとはいえ、既にID 3の完成度は高い。純EVのライバルモデルだけでなく、できの良い内燃機関モデルと比較しても、優れた印象を残すために残された課題は僅かなように感じた。日産のリーフや、テスラ社のモデル3などのEVとは異なる個性を持ち、フォルクスワーゲンらしいEVが完成するであろうことは疑いようがない。
今回の試乗で最も深く印象に残った点は、ゼロエミッションであるということ以外にも、多くの面白さを内在していることと、正真正銘のフォルクスワーゲンと呼ぶに相応しいクルマになるだろうということ。
ID 3こそ、フォルクスワーゲンの第3章に向けて、経営陣が目指すすべてが込められたモデルなのかもしれない。まだ70~80%程度の仕上がりだとはいえ、既に充分納得できるプロダクトだった。残るは、われわれ自身やインフラなど、世界が準備を進められているかどうかだろう。
フォルクスワーゲンID 3 58kWh 203psプロトタイプのスペック
■価格 3万5000ポンド(476万円・予想)
■全長×全幅×全高 ―
■最高速度 160km/h(リミッター)
0-100km/h加速 ー
■航続距離 ー
■CO2排出量 ー
■乾燥重量 1650kg(予想)
■パワートレイン ACシンクロナス・モーター
■バッテリー 58kWhリチウムイオン
■最高出力 203ps
■最大トルク 31.6kg-m
■ギアボックス ダイレクトドライブ
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