走行距離10km 奇跡のGT-R(R34)出品
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】ある時から大きく変わった……日産GT-R R34と現行型【比べる】 全147枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
世界中で価格高騰が続いている日産スカイラインGT-R(R34)にはさまざまなバージョンがあり、それぞれ4~5年前に比べると信じられない高額となっている。
最上級グレードでは3000万円以上で落札されるケースも増えており、もはや一般のGT-Rファンには手が届かない金額まであがっている。
2021年7月5日11時に入札ページがオープン、本人確認が済んだ人から入札可。
「奇跡のGT-R」についてまずは紹介しておきたい。
今回、出品される個体は昨今、高額落札が続いているGT-R(R34)の中でもかなり希少な限定車「Vスぺニュル」である。
正式名称は「2002日産スカイラインGT-R VスペックIIニュル(BNR34)」
奇跡といわれるゆえんは、走行距離わずか10kmの未登録の新車だからで、なぜ発売から20年近くを経て未登録で残っていたのかは謎であるが、とにかくオドメーターの数字は「10km」となっており登録された履歴はない。
なお、このVスぺニュルは、かつて日本のオークションにて高額落札された経緯がある。
2018年1月に初めて開催された「東京オートサロン・オークションwith BH Auction」なるイベントである。
1994トップシークレットTS8012V(JZA80改)(900万円)や1990日産スカイラインGT-R(BNR32)(800万円)などとオークションにかけられ、「Vスぺニュル」はスタート価格2000万円!
そして、3200万円(手数料別)という驚きの価格で落札されたのだ。
当時(とはいっても3年半前だが)は、現在ほどにGT-R(R34)の価格は高騰していなかったが、そろそろ上り始めていた状況である。
「Vスぺニュル」 どんなクルマ?
あらためて「Vスぺニュル」について説明をしておこう。なお「ニュル」(Nur)とはGT-Rの開発にあたって走行テストがおこなわれた、ドイツ・ニュルブルクリンクサーキットを意味する。
2002年1月24日に日産自動車から公開されたプレスリリースには、以下のように記されている。
「今回発売するMスペック・ニュル/VスペックIIニュルは、ニュルブルクリンク24時間耐久レースや国内のスーパー耐久レースなどのベースエンジンに使われているN1仕様エンジンをベースとして、エンジン中心部品であるピストンやコンロッドを重量バランスの均一化を図った高精度バランス品とすることで、エンジン高回転域における爽快な回転フィーリングにより磨きをかけた」
「さらに、限定車専用としてゴールドシリンダーヘッドカバーを採用し、特別仕様のエンジンであることが一目でわかるものとした」
「また、限定車特別装備として、フルスケール300km/hの専用スピードメーター、立体成形の専用グレードネームエンブレムなどを採用した。さらに特別塗装色ミレニアムジェイド(M)を限定車専用色として追加設定した」
リリースにはスカイラインGT-R(R34型)が2002年8月初旬をもって生産を終了する説明も添えられている。
生産終了の理由は平成12年排ガス規制に対応できなくなるためだ。この規制で同時に80スープラ、S15シルビア、RX-7(FD)も販売を終了している。
MスペックとVスペック合計で1000台の販売だったが、実は当初は300台の予定だった。
あまりの反響の大きさに500台に増やし、さらに1000台に拡大した。それも予約開始日の2002年2月26日に即日完売となった。
スーパーカー並み 相場はどのくらい?
「ニュル」の名前が付くMスペックとVスペック。新車時の全国希望小売価格(消費税を含まず)は以下。
「Mスペック・ニュル」630万円(東京/名古屋/大阪)、632.9万円(福岡):販売台数約250台
「VスペックIIニュル」610万円(同)、612.9万円(福岡):販売台数約750台
当時の国産車としては600万円超の新車価格はかなり高額な部類に入る。
これが即日完売なのだから、「伝説」はもう新車時から始まっていたといってもいいだろう。
完売から間もなく中古車市場では1000万円を超えて取引されるようになり、10年前の2011年頃は800~1500万円前後、近年は3000万円超が当たり前になった。
2020年10月24日にAUTOCAR JAPANに掲載された「【3000万円超で落札も】日産スカイラインGT-R(R34)高騰 いったいどこまで高くなる? 一時的との見方とも」という記事の中で、これらの限定車が業者オークションにて2020年9月末に3000万円超、10月上旬には3300万円超で落札されたことを紹介した。
消費税を加えると3600万円以上となりもはやスーパーカーの世界だ。
現在はどれくらいの価格で販売されているのだろうか?
中古車情報誌「カーセンサー」を見てみると、2021年7月4日現在でのスカイラインGT-R(R34/1999年1月~2002年8月)は53台が掲載されており、平均価格は1782万円、価格帯1280万円~3580万円となっており2010万円以上が29台もある。
53台のうちもっとも高額は3580万円(消費税込み)の「2.6 VスペックIIニュル4WD BBS LM18アルミ・ニスモマフラー」という個体で走行距離は3.4万km。
次に高額(3480万円)なのも同じ、Vスペックニュルでこちらは走行距離1.3万km。
ニュルはいずれもVスペックのみでMスペックの方は掲載されていない。
なぜこんな高額に? ワイスピが人気後押し
ところで、「ニュル」を含むスカイラインGT-R(R34)はなぜこんなに高額なクルマとなってしまったのだろうか?
その理由の1つはやはり、世界的なJDMブームを引き起こした映画ワイルドスピードシリーズ(原題:Fast and Furious saga)の存在が大きい。
映画が作られた1990年代の終わり頃から日本製スポーツカーをカスタムしたり、チューニングしたりするいわゆる「スポコン」(スポーツコンパクト)ブームがあったからこそ、この映画が誕生したともいえるが、シリーズ1~3作目に登場する80型スープラやランエボ、インテグラ、マツダRX-7をベースにヴェイルサイドによる大胆なカスタムで話題となったRX-7 Fortuneなども非常に高い人気となっている。
そしてGT-R(R34)に関していえば映画の主人公であるブライアン・オコナー刑事の愛車として登場したこと、演じる俳優のポール・ウォーカーが2012年にプライベート使用中のスポーツカーで事故死したことなどもカリスマ性を際立たせることとなった。
ちなみに2021年6月に開催された世界最大の自動車コレクターオークション「バレット・ジャクソン」において、ポール・ウォーカーが1作目の撮影で実際に運転した証明付きのオレンジ色のスープラがなんと約6000万円で落札されている。
R34までのスカイラインGT-Rがとくに人気なのは、「アメリカでは販売されてこなかった」車種であることも関係している。
右ハンドルという真のJDM、希少価値という理由だ。
本来、アメリカでは右ハンドル車の販売は特別な理由がある場合を除いては禁止されているが、製造から25年を過ぎれば、「25年ルール」の対象となってアメリカの保安基準(FMVSS)や排ガスの基準なども原則として撤廃されるため右ハンドル車の輸入/販売/登録が可能になる。
1989年8月発売のスカイラインGT-R(R32)が2014年に解禁となったことでGT-R(R32)の価格が高騰し、以降も高額で取引されている。
誰でも「奇跡のGT-R」に入札の権利
最後に「2002年型日産スカイラインGT-R MスペックIIニュル」のオークション参加方法についてお知らせしておこう。
このオークションはBHオークションとヤフオクとのコラボによる第2回目で、今回のテーマは「新車未登録コレクション」。ほかにも世界中で価格が高騰している空冷ポルシェ993、世界限定356台の997スピードスターが色違いで2台、そしてシボレー・コルベット(C4)の5台が未登録車として出品される。
Vスぺニュルにおいては7月5日(月)11時に入札ページがオープン。オークション終了は7月11日(日)21時。
入札にはヤフー・ジャパンIDが必要でさらにこのオークションのために特別な本人確認を受けてパスすればOK。
この原稿を書いている1週間後の今頃はオークションも終わりに近づいている頃。
終了間際に価格高騰することは十分予想されるが、一体いくらで落札されるのだろうか?
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みんなのコメント
日産に返した方がいいんじゃない?
メーカーが発行する完成検査証は有効期限がとっくに切れているから、登録するには陸運支局に持ち込んで保安基準適合検査を受けなければならない。
その際の保安基準はこの車が生産された20年前の保安基準ではなく現在の保安基準が適用されるから、それに適合しないとナンバーは貰えない。事実上不可能。
結局、この先もずっと置き物として過ごすしかないのではないか、この車は?