残暑でまだまだ暑さが続く日本列島。自動車ユーザーはエアコン(冷房)を駆使しながら暑さをしのいでいる。
そんななか、ガソリン価格が6月以降高騰している。ただでさえ、エアコンで燃費が悪化するというのに、ガソリン価格が上がってしまってはやるせない……。
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そこで、燃費とエアコンを両立させるにはどうしたらいいのか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock(トビラ写真/mikitea@Adobe Stock)
取材協力/「ガソリン価格比較サイト gogo.gs」
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■昔はエアコンを使うと1割前後燃費が悪化したが今は?
外気温が30℃を超えるなか渋滞すると迷うのはエアコンの温度調整やアイドリングストップを解除するか、そのままにするか。そして燃費のことを思うとどうすれば……(xiaosan@Adobe Stock)
真夏はエアコンを頻繁に使うのでどうしても燃費が悪化してしまう。そんな時にガソリンがこうも高いとエアコンを快適に使いたいけれど、燃費が悪くなるのは嫌だ、燃費がなるべく悪くならずにエアコンを使いたいとジレンマに陥っている人が多いのではないだろうか。
より実態に近い全国のガソリン価格の情報を掲載しているガソリン価格比較サイトの「gogo.gs」を見ると、レギュラーガソリンの全国平均店頭現金価格は6月6日(149.4円)から高騰し、8月15日から若干値下がり傾向(154.7円)ではあるものの、値下がり幅は1円以下。8月27日時点では154.3円と高値傾向は変わらない。
一方、ハイオクガソリンの全国平均店頭現金価格を見ると、6月6日(160.5円)から高騰を続け、7月4日以降165円台をキープ、8月15日(165.8円)から若干値下がり傾向になったものの、値下がり幅は1円以下で高値傾向は変わらず、8月27日時点では165.4円。
最近のクルマのエアコン稼動による燃費低下率は非常に低い。昔はエアコン(冷房)を夏に使うと、燃費は1割前後ダウンするのが常識だった。
しかしエンジンの熱効率や変速機の伝達効率の向上だけでなく、エアコンシステムの損失軽減もかなり進んでおり、コンパクトカーでは冷房を使っても燃費は2、3%の低下に留まるほど効率が高い(当然、車種や使用条件によって上下する)。
エンジンパワーの少ない軽自動車や、室内空間が広いミニバンとなると、もっと燃費に影響はあると思うが、それでも昔に比べればエアコンの使用/不使用での燃費の差はずっと少なくなった。
したがって、小まめに空調を調整して使うのが煩わしいと感じるなら、オートエアコンを快適と感じる温度に設定して、そのまま使い続ければいい。
なぜなら走行中のドライバーは、信号待ちなど停車中以外は運転操作以外の動作は、なるべく慎んだ方が安全だ。そういった意味では、オートエアコンは車内を一定の快適さに保ってくれるので、燃費だけではない快適さや安全性にもつながる装備と言える。
それにオートエアコンが風量を自動的に調整してくれるのは、電力消費を最小限にしてくれるから燃費にも貢献している、と考えることもできる。しかし冷房で微妙な温度調整を実現しているのは、実は暖房のヒーターとの組み合せなので、冷房を無駄なく使うなら、できるだけ暖房を使わない方がいい。
これが家庭用エアコンの話であれば、電気代を節約するために冷房機能をキメ細かくコントロールして無駄に冷やすことはしない。したがってせっかく冷やした空気をちょっと暖める、なんて無駄なことはしていない訳だ。
しかしカーエアコンの場合、家庭用エアコンのように細部に渡って効率を追求すると、エアコンだけでコストアップに繋がってしまうため、これまでは大部分がいまだアナログな制御系のままだ。
効率化されているのは、いかに熱交換をロスなく行なうかという部分とコンプレッサーの駆動損失を減らすこと。オートエアコンで温度調整や風向の切り替えを自動化しているのは快適性を追求している部分が大きく、燃費のための効率化ではないのだ。
それでも今後はハイブリッド車が完全に主流になり、電動コンプレッサーを採用するクルマばかりになれば、さらに燃費を追求するためにエアコンも家庭用並みに細部まで効率を追求するようになるだろう。
■内気循環は冷房の効きを高めるがデメリットも
ある程度温度調整が終わったら有効とされるエアコンの内気循環だが……(Nischaporn@Adobe Stock)
クルマのエアコンには、冷房や暖房が吹き出すダクトを切り替えるだけでなく、吹き出す空気の種類も選べる。それは外気を取り込んで空調した空気を送り込む外気導入と、車内の空気を取り込んで空調して送り出す内気循環の2種類で、車種によっては外気と内気をミックスした状況も作れる。
外気導入のメリットは温度調節した新鮮な空気をつねに取り込めることだ。しかし交通量の多い地点では、周囲のクルマの排気ガスが侵入してきてしまうなど、外気導入ならではのデメリットも存在する。
内気循環のメリットは、ある程度温度調整が済んだ状態であれば、室内の温度を維持しやすいことだ。外気温と室内温度の差が大きいほど、内気循環にした方が冷暖房の効率を高められる。
オートエアコンであれば、徐々に風量が下がっていく制御を実感しているだろうが、あれは設定温度に室内の気温が近付いたことから、冷房を弱めているのだ。
室内温度が設定温度に近づけば、強く冷房を続ける必要がなくなるので、エバポレーター(熱交換器)が空気を冷やす必要も少なくなり、風量も減らしていくのだ。つまり内気循環の方が冷房は効くし、燃費向上にもつながる。
しかし内気循環にもデメリットは存在する。それは室内の空気を循環させているため、乗員の呼気によって二酸化炭素の濃度が上昇してしまう。長時間、内気循環のままエアコンを使い続けてしまうと、酸欠状態になっていき、眠気や頭痛など、ドライバーの運転に対する集中力を阻害する恐れがあるのだ。
室内空間や乗員数にもよるが、内気循環を30分続けたら5分は外気導入にするなど、一定間隔で換気をすることを心がけることだ。
高級車のオートエアコンは、PM2.5センサーなどで外気が汚れているのを感知すると自動的に内気循環に切り替わり、一定時間後に再び外気導入に戻るという外気導入が基本の制御になっている。
■アイドリングストップと冷房はどう使い分けるか
真夏は基本的にアイドリングストップをキャンセルしたほうがいい(tarou230@Adobe Astock)
アイドリングストップ装着車と非装着車の燃費差
アイドリングストップ車でもエアコンの使い始めなど、空調が大きく働いている時には信号待ちでもアイドリングストップが働かないこともあるが、通常は信号待ちでアイドリングストップが効いてしまうとエアコンも効かなくなってしまうことが多い。
真夏であれば、エンジンの再始動とエアコン風量を増大させるためのブロアファンの高回転利用を繰り返すのは、電力消費が大きく、オルタネータの負担になって燃費にも影響するし、バッテリーの劣化も進めてしまう。
そもそも燃費向上のための機構だが、以前のカタログ燃費であるJC08モードでは効果が認められたものの、現行のWLTCモードでのアイドリングストップ機構ありとなしの燃費は、表に一例をあげたが、市街地でのアルファードの燃費差0.9km/Lをどうみるか、その効果は微妙。
つまり実燃費での効果も限られたものであり、バッテリーの寿命が縮まることを考えるとトータルでエコロジーではないし、あまりエコノミーでもないのだ。
真夏は基本的にアイドリングストップをキャンセルすべきと考えよう。車種によってキャンセラーを装着できるなら、装着してしまってもいいのではないだろうか。
エアコンフィルターは、室内に導入する外気の微細なゴミをろ過してくれるだけでなく、エバポレーターの汚れもかなり防いでくれるから、エアコンダクトからの悪臭は最近はほとんど聞かれなくなった。
一方でエアコンフィルターを定期的に交換しないとエアコンの風量低下につながり、冷房の効率が低下してしまう。ということは燃費にも悪影響を与える(ファンの電力消費が増える)ので、フィルターは定期的に(車種によって異なる)交換しよう。
またエアコンフィルターには単なる不織布を織っただけのタイプだけでなく、脱臭や抗菌効果のあるプレミアムなフィルターも存在する。コロナ禍の今は、抗菌効果のあるフィルターを使った方が安心だ。
■オートエアコンの温度設定は25℃がいい?
メーカーが推奨する最も効率のいいオートエアコンの設定温度は何度なのか? 世界8カ国の開発拠点と78の生産拠点を有する「カルソニックカンセイ」の見解(2017年8月10日広報資料)では、日本車は「25度」、欧州車は「22度」が温度設定の中心のため、この温度を基準にすることをオススメするとのこと
例えば設定温度を18℃にすると、その温度までは冷房を続けることになるが、真夏の日なたではどんなに冷房を続けても18℃まで室温が下がることはないから、冷房を強く掛け続けることになる。
一方、25℃あたりに設定しておくと、室温が近づくまでは冷房を強くかけているが、設定温度に達すると風量を弱くするだけでなく、そこから室温が上昇も下降もしないように日射量なども合わせて吹き出す温度を調整する。
家庭用エアコンは設定温度に達すると運転を停止してしまうが、クルマのエアコンは微妙な温度で作動を続けるのだ。クルマのほうが建物より断熱性能が低く、温度変化しやすいことから、この制御は理に適っているが、効率は良くない。
つまり設定温度を現実的な数字にしておくと、冷房だけでなく暖房も使って送り出す空気の温度を調整してしまうから、冷房が無駄になるのだ。
したがって風量を弱くして冷房を続けることが、結果として最も効率良く冷房を使うことになる。
前述の通り、運転中の操作が面倒ならオートエアコンにお任せでもいいが、燃費を考えるなら最低温度に設定して、風量で室内の温度を管理するようにしたほうがいいことになるのだ。
■朝イチ、午後イチで使い方は変わる?
運転席側のドアを開けて、助手席側のドアを開けたり閉めたりを繰り返す熱気を外に出す。ベストカー本誌のテストでは2分間で54度あった車内温度が45度まで下がった
最後にシチュエーション別に効率の良い使い方を考えてみよう。通勤にクルマを使っている場合など、朝にクルマで出掛ける場合、室内はまだ外気温より低かったり、日があたって暖められてもせいぜい30℃程度だろう。
この場合はクルマにすぐに乗り込んで、走りながらエアコンを使って冷やせばいい。内気循環にしなくても、ものの5分で快適な温度湿度の空間になるハズだ。
しかし出先で日なたにクルマを駐車して、再び乗車して出発する場合は、状況がかなり変わってくる。30分も止めていれば、車内の温度は50℃を超える。フロントウインドウにサンシェードを立てるなど、室内温度の上昇を抑える工夫をしても、いずれは50℃近くまで上昇することになる。
猛烈に車内が暑いのであれば、時間が許せばまずは車内の熱い空気を追い出すことだ。左後席の窓を開けて、運転席のドアを4、5回開閉させて室内の熱い空気を追い出す方法もあるが、それだけでは効果は限定的。
オートエアコンは装着されている場合、オートモードか外気導入にして冷房を最強にしてドアをすべて開けて車内の熱気を外に出す。走りながら冷房を使ったほうが有効(Adobe Stock@gudellaphoto)
スペースに余裕があれば、ドアやリアゲートを開けて、エアコンを外気導入のファン全開にしてエアコンシステム内の冷却と熱い空気の追い出しを図ろう。
早く室内温度を下げるのであれば、走りながら冷房を使ったほうがいい。なぜならアイドリングより、走行していたほうが冷房は強く効く。エンジン回転が上昇してコンプレッサーが多く稼動するだけでなく、走行風でコンデンサーが冷却されて、冷媒の液化が進むからだ。
アイドリングでは冷房のためだけにエンジンを使うので、無駄になるエネルギーも多いから、走行して移動しながら室内を冷やしたほうが燃費にもいい。
しかし50℃近くに熱せられたシートに座って運転するのは不快だから、まずは熱気を追い出して、冷房を直接、座るシートに当てて冷やし、それから出発するのもいい。瞬間冷却スプレーなどの冷却アイテムを使う手もあるが、ガソリンを使うのと同じくコストがかかるので、燃費向上策としてはいまひとつだ。
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