■運転席側から助手席前まで幅141cmの巨大スクリーン
メルセデス・ベンツは2021年4月15日、新型電気自動車(EV)の「EQS」をオンライン上でワールドプレミアした。
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そのEQSで注目されるのがインテリアだ。ダッシュボードの全幅に広がる「MBUX Hyperscreen(ハイパースクリーン)」だ。現在の「MBUX」の進化版ともいえるもので、メルセデス・ベンツの次世代インフォテイメントシステムとして注目される。
EQは、メルセデス・ベンツが電動車に特化して立ち上げたサブブランドだ。
その最初の市販車として登場したEVが、SUVスタイルの「EQC」で、このモデルはすでに日本にも上陸している。それ以降、第2弾としてミニバンの「EQV」が、第3弾としてコンパクトSUV型EVの「EQA」が登場(日本未発表)。新たに登場するEQSはそれらに続く、いわば新型「Sクラス」のEVバージョンという、EQシリーズのフラッグシップに位置付けられる。
なかでも注目は、新開発した電動車向けアーキテクチャー「EVA(エレクトリック・ヴィークル・アーキテクチャー)」をEQSが最初に採用することだ。
EVAはアーキテクチャーとして、今後のメルセデス・ベンツの技術的ベースとなるもので、モジュラー設計とすることでメルセデスEQブランド各車に広く適用できるよう設計されている。そのEVAを採用する車両向けに開発された新たなインターフェースが「MBUXハイパースクリーン」となる。
MBUXハイパースクリーンが世の中に披露されたのは、今年1月に完全デジタルで開催された「CES2021」でのことだった。発表そのものはCES2021開催前の1月7日にオンラインでおこなわれていたが、より具体的な内容が披露されたのはCES2021が初めてとなった。
披露されたMBUXハイパースクリーンは、左右に広がる3つのディスプレイを141cmにまで拡大したもので、運転席から助手席の前までを一体してカバーする巨大な湾曲スクリーンに集約。その面積は2432平方センチメートルにもおよび、しかもそれを自発光のOLEDを採用して鮮明な表示を隅々まで追求した。このインパクトはまさに強烈だった。
システムはハイグレード感一色に包まれている。全体を「シルバーシャドウ」と呼ばれる3層コーティングを施した高品質プラスチック製フレームで囲み、さらにスクリーン下部にはアンビエント照明を組み込む。これによって、ディスプレイユニットを立体的に浮かんでいるような演出を施しているのだ。
■インターフェースも一段と進化。直感的に操作が可能
インターフェースの進化も一段と進んだ。「ゼロ・レイヤー」と呼ばれる新手法で重要なアプリケーションを表層で表示させ、ユーザーはサブメニューをスクロールしなくても直感的に操作できるようにしている。
しかもそれらは人工知能(AI)によってユーザーの使い方に合わせた表示へと自動的に最適化していく。対象はマッサージプログラムから「To Doリスト」まで多岐にわたり、20以上の機能がAIによって自動化されているのだ。
触感で伝えられるインターフェースも搭載する。タッチスクリーンの下に配置された12個のアクチュエーターによって動作するもので、これがより確実性のある操作を実現。画面の明るさについても多機能カメラと光センサーによって最適化され、ドライバーは常に最良の状態でシステムと対話することができるのだ。
そして、見逃せないのが助手席側に配置されたディスプレイだ。
ここでは運転に関係ない動画などのエンターテイメントを走行中でも再生可能となった。これまで走行中に動画を再生することは安全上、御法度とされていたわけだが、視線監視機能によってドライバーののぞき込みを不可とすることでこれを実現。助手席に座った人はドライバーと関係なく、いつでも自由に好みのコンテンツが楽しめるようになったわけだ。
そして、注目の新機能が「メルセデス・トラベルナレッジ」だ。
これは車両が走行中に周辺のランドマーク情報を、ドライバーの要求に応じて適宜提供するというものだ。これにより、乗員が「メルセデス、あそこに見える建物はなに?」とか、「左側のレストランの名前を教えて」と訊ねると、その答えがディスプレイ上で表示されたり、音声で返答したりする。走行中にふと湧いてくる疑問にもシステムが答えてくれるのだ。インターフェイスは音声認識機能が基本だが、対象を特定するにはドライバーの視線とリンクさせて実現していると思われる。
MBUXハイパースクリーンは新型EQSに搭載された後、他モデルに広がっていく予定になっている。
クルマが電動化や自動運転へと向かうなかで、インフォテイメントシステムの存在はますます重要度を増しており、それだけにこの分野がライバル各社の競争領域となっていくのは間違いない。
こうした状況下で登場したMBUXハイパースクリーンは、そんな時代に先手を打つのに十分な仕上がりとなっているようだ。これをきっかけに、この世界がさらなる進化を遂げていくことを楽しみに待ちたいと思う。
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