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V8に代わる独自性を得るか? メルセデスAMG C63へ助手席試乗 直4ターボのPHEV

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V8に代わる独自性を得るか? メルセデスAMG C63へ助手席試乗 直4ターボのPHEV

V8エンジンのサウンドは響かない

2.0L直列4気筒ターボ・ハイブリッドは、伝統の大排気量V型8気筒の後を担うことができるのだろうか。始めに触れておこう。ウエストゲートのホイッスルを強調し、人工的なサウンドを重ね合わせても、V8エンジンほど特別な音響は得ていない。

【画像】直4ターボのPHEVへ メルセデスAMG C63 プロトタイプ 競合の高性能サルーンと比較 全114枚

メルセデスAMGの技術者も、それは理解しているようだ。「わたしたちのお客様は、V8エンジンのサウンドも理由に選んでいます。この4気筒エンジンには、もはやそのサウンドは備わりません」

同社のプロダクトマネージャー、アルネ・ウィーブキング氏は臆することなく話す。そして続ける。

「今は移行期です。将来のどこかのタイミングで、V8エンジンが完全に姿を消すという現実は、多くの人が知っていることだと思います。この直列4気筒は、今の世界で高性能モデルがどうあるべきか、われわれが導き出した解釈です」

実際のところ、C63の車内ではいい音が聞こえる。制限がなくなるレース・モードを選択すると、合成されたサウンドではあるものの、驚くほど聴き応えがある。

V8エンジンの響きを模しているわけではない。キャブレターで呼吸するツインカムV6エンジンのようでもあり、水平対向4気筒のような唸りも混ざる。そこに、ブースト圧が抜ける悲鳴が重なる。

BMW M3の直列6気筒ツインターボが放つサウンドと聴き比べても、遜色ないだろう。とはいえ、自然吸気のE46型BMW M3 CSLが放つサウンドとも、だいぶ違うが。

積極的に投資を行ったサスペンション

新しいAMG C63は、重要な個性といえたV8エンジンを失った。別の部分で独自性を強める必要がある。

今回ステアリングホイールを握ったのは、AMGで動的能力の開発責任を負う技術者、レネ・シュチェペック氏。EVモードで静かにプロトタイプのC63を発進させた。

AMGの性能試験を行うテストコースは滑らか。それでも、車内の静寂性は素晴らしい。マンホールを通過した際の、20インチホイールのマナーの良さにも驚かされた。

シュチェペックは、C63のダンパーに自信を匂わせる。「サスペンションは、わたしたちが積極的に投資を行った部分です。優れたダンパーを得ることで、優れたクルマの個性を得ることができるのですから」

「クルマに対して抱ける信頼感や、コーナリング中の気持ち良さには、前後アクスルからのフィードバックが重要になります。これは高性能ブランドとして、電動化という新しい時代で失うことのできないポイントの1つになります」

静かなEVモードの走りを充分に味わってから、エンジンが始動。レーススタートという名前が与えられた、ローンチコントロールを試してもらう。

0-100km/h加速を3.4秒でこなすが、最近ではこの数字に驚くことはないかもしれない。しかし、新しいC63は数字以上に加速が激しい。スリップ音1つたてず、猛然と速度を乗せていく。

可変の四輪駆動と四輪操舵を搭載

カーブが連続する区間では、四輪駆動と四輪操舵の2つの可変システムが、明確にクルマの挙動へ影響を及ぼしている。ドライブモードによる変化の幅も広いようだ。

コンフォート・モードではエンジンが静かに回り、4気筒らしい音質になる。駆動用モーターは、本来の出力の25%までしかアシストを加えないという。

至って安定してコーナーを抜けていく。走行時のバランスは、フロントタイヤが主軸のように感じられた。

スポーツ・モードへ切り替えると、駆動用モーターは65%まで力を開放する。動力性能が明確に高まり、リアタイヤ側の存在感が強くなるものの、上品さは失わない。

スポーツ+モードでは、駆動用モーターは本来の80%まで力を発揮する。このモードのまま下り坂のコーナーへ進んだところで、シュチェペックが四輪ドリフトを披露してくれた。

レース・モードは期待通り。エンジン音はボリュームを増し、約2.1tもあるサルーンを機敏に走らせるため、多くの技術が背後で働いていることを助手席でも感じる。四輪操舵システムは、コーナリング中にボディの向きを巧みに制御する。

リアタイヤは、アクセルペダルを深く踏み込むとサイドスライド。だが同時にフロントタイヤにも不足ないトルクが伝わっているため、深いドリフトアングルへ転じていくことはなかった。

システムの主張が薄いPHEV

新しいAMG C63はプラグイン・ハイブリッド(PHEV)ではあるが、そのシステムの主張はかなり薄い。同社の技術者は、可能な限りリニアで自然な印象のパワートレインにするべく、開発を進めてきたそうだ。

一般的なPHEVとは異なり、100kWもの回生能力を活かし、駆動用バッテリーの充電量を高く保つことも可能だという。ブースト・モードを選択すれば、バッテリー残量を維持させるため、駆動用モーターの出力を僅かに抑えることもできる。

モードに関わらず、駆動用バッテリーの充電量は驚くほど激しく変化していた。瞬間瞬間の走りに応じて。

メルセデスAMGが新技術を武器として捉え、強みに変換しようとした結果には唸らされる。しかし、実際にC63のステアリングホイールを握るまで、本当にリニアで自然な印象なのか、断言することはできない。

今回は助手席試乗に留まり、アッファルターバッハが手掛けた直列4気筒ターボのPHEVがどんな走りを示すのか、興味は尽きない。幸いにも、2022年中には実際に試乗する機会を得られそうだ。その時に、改めてお伝えさせていただきたい。

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