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F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する

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F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する

 F1スペインGPは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンと、マクラーレンのランド・ノリスによる、まさに精神戦となった。その勝負を決したのは、まさにスタート直後にあったようだ。

 F1スペインGPの舞台であるカタルニア・サーキットは、スターティンググリッドからターン1のブレーキングまでは非常に長い。それが、ポールポジションからスタートするマシンにとっては不利に繋がる可能性があるのだ。ポールポジションということは前にマシンがおらず、一方で2番手以下のマシンは前に何らかのマシンがいるためにスリップストリームを使うことができる……そのため、ターン1の飛び込みで順位が変わる可能性が大いにあるのだ。

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 今回のレースもまさにその典型的な例だった。予選でポールポジションを獲得したノリスは、フェルスタッペンを抑え込もうと、執拗に幅寄せ。フェルスタッペンは行き場がなく、コース外に右側のタイヤを落として砂煙を上げる、そんなシーンもあった。

 ただこの2台の攻防の後方で、チャンスを伺っているドライバーがひとりいた。メルセデスのジョージ・ラッセルである。ラッセルは先頭の2台に対してターン1で大外刈りを決め、一気に首位に。2番手にはフェルスタッペン、ノリスは3番手までポジションを落とした。

 その後、フェルスタッペンは3周目にラッセルを攻略することができたものの、ノリスはなかなかオーバーテイクできず、フェルスタッペンを逃してしまうことになった。レースの結果を見ると、まさにこのことが勝敗を分けたと言える。

 結局ノリスは、ラッセルがピットインするまでオーバーテイクすることができず、結局フェルスタッペンとの差は最大5.5秒(15周目)まで開いた。

 これが痛かったということは、マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラも認めている。

「ラッセルの後ろで失った時間は、あまりにも長すぎた。ターン1で失ったポジションとラッセルの後ろで失った時間。このふたつが(勝利を逃した)決定的な要因だったと言える」

 ラッセルを攻略できなかったノリスだが、決してペースが無かったわけではない。実際ラッセルがピットインし前が開けた後のノリスは、レース序盤のフェルスタッペンを凌ぐペースで走ったのだ。

フェルスタッペンを凌ぐペースで走ったノリス

 上のグラフは、スペインGP決勝レースでの、フェルスタッペン、ノリス、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)のペース推移をグラフ化したものである。上に行くほど速く、下に行くほど遅いということを示している。

 このうち、赤い丸で囲んだ部分をご覧いただきたい。ノリスのペースがそれまでよりも0.5~1秒ほど上がっているのがよくお分かりいただけるだろう。つまりそれだけ、ノリスはラッセルに抑えられていたということだ。

 さてその一方で、フェルスタッペンとノリスの戦略が異なったという点も興味深い。いずれのドライバーもソフト→ミディアム→ソフトとタイヤを繋いだ。しかし第1スティントではノリスが新品タイヤを履いたのに対し、フェルスタッペンは中古のソフト。一方で最終スティントは、フェルスタッペンが新品ソフトを履き、ノリスが中古のソフトを履くことになった。

 それもあってか、フェルスタッペンは第1スティントを早々に切り上げ、ピットイン。これには驚いたと、前出のステラ代表は語る。

「16~17周で他のドライバーがピットインしたのを見て、とても驚いた。私からすれば、それは自分で自分を苦しめるだけだと思う」

「ここでは、デグラデーションが大きいから、オーバーテイクできる。それで我々は、レースに復帰できると思った。そして自分たちのレースを進めたんだ」

 一方でレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、レースの最後に新品タイヤを履く戦略を採ったと明かす。

「ランドとは接戦になるのが分かっていた。スタートは重要だったが、新しいタイヤではなく、中古のタイヤでスタートした。レース後半にアンダーカットする必要があると考えていたんだ」

「ジョージを素早く抜くことが非常に重要だった。DRSの使用が解禁されると、マックスはすぐに彼をパスした。そしてその後すぐにタイヤマネジメントに入った。それで、楽に差を築くことができた」
「その時点で、戦略とピットストップの点で最適なレースをすることに決めた。一方でマクラーレンは当然スティントを伸ばし、最適なレースをしようとした」

 ホーナー代表が語るように、その後はフェルスタッペンが先にタイヤを交換し、ノリスが後でタイヤ交換に入るというレース展開となった。そして各スティントの後半に向け、ノリスがタイヤの使用履歴が若いというアドバンテージを活かして好ペースで走り、フェルスタッペンとの差を詰める……そんな展開となった。

ノリスがラッセルに引っかかっていなかったら……?

 上のグラフは、決勝レース中の先頭のマシンとの差を示したものだ。濃紺がフェルスタッペン、オレンジ色がノリスである。ノリスの線は、いずれも右肩上がり。つまり先頭を行くフェルスタッペンとの差を詰めているということが分かる。

 ただ前述の通り序盤ラッセルに抑え込まれたことで、ノリスは本来いるべきだった位置よりも5秒ほど後ろを走っていた可能性がある。

 もしノリスがラッセルに抑えられなかったら……その場合にはどこを走っていたのかという想定を、オレンジ色の点線で示してみた(簡易的に、第2スティント以降の全てのラップで、第1スティントでのフェルスタッペンとの最大差5.557秒を引いたモノ)。これを見ると、第2スティント終盤には、ノリスは少なくともフェルスタッペンの真後ろには迫っていたという計算だ。

 こういう状況となれば、フェルスタッペン陣営はもっと早いタイミングで2回目のピットストップを行ない、ハードタイヤを履かなければならなかったかもしれない。あるいは、もっと長い距離を新品ソフトタイヤで走る必要があった可能性も考えられる。

 そしてノリスが2回目のピットストップを終えた時、フェルスタッペンのすぐ後ろでコースに復帰。レース終盤15周ほどが、テール・トゥ・ノーズの激しいバトルになっていた可能性がある。しかもハードタイヤを履くか、あるいはソフトタイヤの使用距離が実際よりも伸びていたら、フェルスタッペンはより劣勢に立たされていたはずだ。

 確かに、ノリスに十分勝機があったと言えそうだ。

「コース上では僕たちが一番速かったと思う。最初から最後まで、僕らが一番速かった。オーバーテイクや乱気流のせいで、今日は優勝を逃してしまった。だから十分な仕事ができなかった。単純なことだ」

 レース後にノリスはそう言い放ったが、データを見るとそれも頷ける。

 今後も、フェルスタッペンとノリスの激しい戦いが繰り広げることになるのか? 第11戦オーストリアGPは、もう今週末だ。

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