まさかの早期敗退、トップ8進出を逃す……。2年連続WRC(世界ラリー選手権)王者カッレ・ロバンペラにいったい何が起ったのか?
2023年、FDJ(フォーミュラ・ドリフト・ジャパン)に初参戦し、初戦のエビスでいきなり優勝。2度目のチャレンジとなった最終戦岡山では、優勝こそ逃すも、決勝まで勝ち上がっていったロバンペラ。それだけに、2024シーズン開幕戦富士でも、もちろん優勝候補の筆頭と見られていた。
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■相変わらず“荒ぶる精密機械”だった決勝初戦の走り
実際、単走で競われた4月6日の予選では絶好調だった。
クスコ・レーシングのチームメイト、中学生ドライバーの箕輪大也(ひろや、トヨタGR86)に『アングル(角度)』の評価で2点及ばずも2番手で予選を通過。これは、レッドブルGRカローラを駆るロバンペラがミスをしたわけではなく、昨年シリーズ2位の箕輪の走りが完璧かつアメージング過ぎたのだ。
今季、本場アメリカのFDにシリーズ参戦し、FDJにスポット出場する箕輪は、レッドブルもバックアップする、世界が注目する“スーパー中学生”である。
翌7日の決勝トーナメント、トップ32でロバンペラはまず中国のジェリー・ズー(BMW E92)に先行、後追いとも勝利をおさめた。その走りは、相変わらずの“荒ぶる精密機械”。先行ではWRC仕込みの超高速ドリフトで相手を突き放し、後追いでは無慈悲なビタビタ寄りで完勝し、余裕でトップ16に進んだ。
ところが、トップ8をかけた対戦で、ロバンペラはチームメイトの草場佑介(GR86)に敗れる。
先行は隙のない走りでしっかりまとめたが、後追いの草場もロバンペラのお株を奪うような“寄り添いドリフト”でほぼパーフェクトな走り。そして、先行にまわった草場は第1コーナー(=グリーンファイト100R)の出口でロバンペラに距離を築き、第2コーナー(=アドバンコーナー)でも接近を許さず、文句なしの走りでトップ8進出。勝利をかけたロバンペラの戦いは、大方の予想を裏切りあっけなく終わってしまった。
対戦を終え、マシンから降りてきた23才のロバンペラはさすがに渋い表情。悔しさを一切隠さなかった。スポット出場とはいえ、究極の負け嫌い男である。WRC第3戦サファリ・ラリーで優勝したその晩にはケニアを発ち、早々に日本入りしてコンディションを整えていた。それだけに、ベスト16敗退という結果は受け入れ難いものだったに違いない。
■2024 Formula Drift Japan Round 1 TOP 16
https://www.youtube.com/watch?v=E9wTaPpOqtM
(ロバンペラ対草場は1:00:22~)
■前後重量配分とコース特性
では、なぜ世界最高峰のドライビング技術を持つロバンペラは敗れたのだろうか? ベスト16敗退後、その理由を直接本人に聞いてみた。
「草場選手の走りは素晴らしかった。ベスト32を終えて彼が対戦相手になると知った時、これは厳しい戦いになるだろうと確信した。チームメイトとして、草場選手の実力は知っていたからね」と、まずは勝者を祝福するロバンペラ。
そのうえでの敗因分析は、非常に興味深い。
「先行の走りは悪くなかったと思うが、後追いではクルマのグリップとトラクションで明らかに負けていた。彼のGR86と自分のGRカローラを比べると、GRカローラは車重がやや重く、前後重量配分がやや前寄りという違いがある。ハイスピードなここ富士のコースでは、走り始めからGR86に対してトラクションがやや不足している印象があり、それが草場選手との対戦で露呈してしまった」
改めて予選日から戦いを振り返ると、ロバンペラが敗れた相手はいずれもクスコのチームメイトで、マシンはGR86だった。形状は違えど同じフィロソフィーで作られた2台ではあるが、ハイレベルな戦いの中でわずかな前後重量配分の違いが影響したのかもしれない。
「トラクションが足りていなくても、ロースピードでツイスティなコースだったらドライビングでカバーできていたかもしれない。しかし富士はかなりハイスピードで、ブレーキングで先行車との差を詰めるチャンスがない。自分としては全力を尽くしたし、走りも悪くなかったと思うけれど、富士のコースは自分たちにとって少々厳しかったね。できれば、今年またどこかのラウンドでリベンジしたい」
ロバンペラは直接言及しなかったが、他にもコースとタイヤのマッチングなどもある程度影響したようだ。マシンの素性、コースのキャラクター、タイヤの特性、そしてドライビングの違い。これらさまざまな要素のコンビネーションによりパフォーマンス差が生じ、その上でハイレベルな戦いが繰り広げられたのだ。
そして、それらすべての要素を揃えた高橋和己(TMS RACING TEAM GOODRIDE)が3年連続で富士大会を制し、2024年FDJ開幕戦は幕を閉じた。
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