東京ディズニーランドがオープンし、任天堂からファミコンが発売された1983年(昭和53年)に、ホンダ「GB250 CLUBMAN(クラブマン)」は登場しました。社会や文化の全てが怒涛の勢いで「新しい」方向に流れていた時代に、バイクメーカーも技術や性能、デザインを競い合い、次々に新型車をリリースし、そしてユーザーもその進化に興奮の日々でした。
その反動(?)なのか、当時日本国内に懐古趣味的な、いわゆるレトロブームが訪れます。レトロとは「古い物品そのものの愛好ではなく、古い雰囲気を持った新品を好むもの」と定義される事も多いのですが、ホンダはそのムーブメントを見逃さず、1983年12月「GB250クラブマン」を発売します。現代では定番となった1960年代の伝統的なスタイルを持つ、最新型のバイクが誕生したのです。
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ホンダもキャストホイールやフルカウリング、アルミフレームや水冷エンジンといった最新技術を投入することに躍起になっていたはずですが、そんな時期にクラシックバイクが持つ魅力を市販車に再現できたことに、ホンダの幅広い製品企画力が感じられます。
と言っても、これはすでに40年前の話で、現在ではこの「GB250クラブマン」自体がリアルなクラシックバイクになりつつあります。
発表当時、ホンダは10機種以上の250ccクラスのロードスポーツバイクをラインナップしており、その中でも最も印象深い1台に挙げるファンも多いのではないでしょうか。
バイクの世界でレトロを具現化した「GB250クラブマン」は、同じ年にデビューした最新のシングルエンジンスポーツモデル「CBX250RS」がベースとなっています。しかしタンクやシートはもちろんのこと、外装のほとんどが専用パーツで構成されていました。
エンジンヘッドカバーやクランクケースカバーの光沢のあるバフ仕上げや、「CBX250RS」とは異なるアルミリムとスポーク、クローム風のメーターやヘッドライトカバー、一文字バーハンドルの採用など、列記しきれないほど細かい部分まで作り込まれています。
一方、エンジン自体は当時の最新型で、DOHCのカムシャフトはセミカムギアトレインで駆動し、吸排気バルブは放射状に配置される凝った造り。さらにデュアルインテークキャブレターを採用し、最高出力は30PSを発揮しました。
フレームはダウンチューブに角断面のセミダブルクレドールタイプで、前輪には片押しのデュアルピストンキャリパーのディスクブレーキを装備し、1983年当時の最新の走りと、伝統的なスタイルを両立していました。
1983年12月7日に市販が開始され、その後に大流行するレーサーレプリカブームの中でも女性ライダーからベテランまで、幅広いユーザーに愛され、1997年に最終モデルが発売されました。その間モデルチェンジは何度もあり、機能面も外装面も洗練されていきましたが、そのスタイルは最終型までほぼ継承されました。
ホンダコレクションホール(モビリティリゾートもてぎ内)に展示されている実車は1983年生まれの初期型で、3年後の1986年に市販された「NSR250R」の隣に展示されていました。同じ80年代の250ccクラスのロードスポーツバイクですが、そんな時代背景を思い浮かべながら見比べるのも面白いものです。
「GB250クラブマン」の成功を受け、1985年にはシングルシートやロケットカウルなどを装備した「GB500TT」と「GB400TT」などの意欲的なモデルもラインナップされました。
そして2021年、インドで生産される「ハイネスCB350」をベースに、「GB」の名を冠した「GB350」「GB350S」が国内発売されています。
「GB250クラブマン」(1983年発売)の当時の販売価格は、37万9000円です。
■ホンダ「GB250クラブマン」主要諸元全長×全幅×全高:2015×1035×640mmシート高:780mm車両重量:145kg乾燥重量:130kgエンジン形式:空冷4サイクル単気筒DOHC4バルブ総排気量:249cc最高出力:30PS/9500rpm最大トルク:2.4kg-m/8000rpm始動方式:セルフ式燃料タンク容量:17リットル変速機形式:常時噛合式6段リターンフレーム形式:セミダブルクレードルタイヤサイズ(前):90/90-18 51Sタイヤサイズ(後):110/90-18 61S
【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
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みんなのコメント
かつてのGB400・500のスタイルだけでいいから復活させた方がはるかにマシ。