世界のハンドリングの標準機とも呼べるVWゴルフ。コンパクトハッチに詰め込まれた世界がお手本にするその乗り味。
国産車はそこに挑んでいるワケでもないけれど、どうしても比べられてしまうもの。ここにきてトヨタがカローラスポーツの名で、元気なハッチバックを導入した。こうなるとやっぱり比べちゃうのは自動車媒体の性。
【よくなった? 悪くなった?】 クルマ界 時とともに評価がガラリと変わったもの
と、いうことでレーシングドライバー松田秀士さんに、カローラスポーツとVWゴルフをダブルレーンチェンジとスラロームでテスト。ISO準拠のコースで性能丸わかり!!
文:松田秀士/写真:池之平昌信、平野学
■カローラの限界速度はゴルフより高い!!
両車のスペックを眺めて意外だったのは車重差が50kg程度(カローラスポーツ:1370kg、ゴルフ:1320kg)だったこと。ハイブリッドのカローラスポーツはもっと重いだろうと想像していたのだ。
だがしかし、1300kg台の車重の50kg差は大きいともいえる。タイヤサイズはカローラスポーツが225/40R18、ゴルフTSIが225/45R17と、インチと扁平率違いで幅は同じだ。
ダブルレーンチェンジでは挙動の違いがはっきりと出た。カローラスポーツの限界速度は110km/h弱なのに対してゴルフは105km/h弱と、その差はわずかなのだが、ゴルフの挙動が大きい。
カローラスポーツには電子制御可変減衰ダンパーのAVSが装備されていて、「スポーツ+」のドライブモードにセットしたのでサスペンションがハードな状態。
ゴルフTSIはコンベンショナルなダンパーなので、電子制御はない。また、もともとのスプリングセットではゴルフTSIのほうがソフトなので、緊急回避操舵では挙動が大きく出る。
そのためリアが大きくスライドすることとなった。ゴルフTSIもスポーツモード(スポーツ+はない)にセットしていたので、VSCの制御が甘かったこともこの挙動を引き起こした要因と考えられる。
これに対してカローラスポーツはリアの安定感が高く、リアよりも先にフロントのグリップがなくなりドライバーが限界を感じ取る。
ただし、このハンドリング特性も一長一短で、緊急回避をしているのにフロントが先に抜けて回避挙動性が下がるのも考えもの。
要するに前後バランスの問題だ。答えは難しいが、総じてレベルはカローラスポーツが高いといえる。
【ダブルレーンチェンジ通過速度結果】
・カローラスポーツ:105km/h~110km/h
・VWゴルフTSI:100~105km/h
【ダブルレーンチェンジコースについて】
■ゴルフは腕利きならよく曲げられる
次はスラロームだ。カローラスポーツの旋回速度は約70km/hなのに対してゴルフTSIは60~65km/h。ここでもゴルフTSIは大きくリアをスライドさせる。
しかし、ゴルフTSIはこのリアのスライドを利用して、アクセルをあまり戻さず、前輪で引っ張りながら少し戻してタックインを誘発させれば、駆動輪である前輪を切らずに(操舵角を少なくして)連続したパイロンをクリアすることができる。
つまり、腕に覚えがあればよく曲げられるのだ。
これに対してカローラスポーツはハイブリッドであることもマイナスに働き、アクセルOFFで充分な減速が得られないので前後の荷重移動がダル。
したがってスムーズに旋回弧を大きくとって、旋回スピードを上げて走るしかない。
言い換えると、コーナリングスピードを上げてタイムを稼ぐセッティングのカローラスポーツに対して、挙動を利用して旋回弧を小さくして最短距離でタイムを稼ぐゴルフTSIと評価できる。
タイム的にカローラが速かったが、両車ともワントライのみなので、もう一度トライしたらゴルフTSIが速くなる予感。加速力もゴルフTSIが優っている。
そしてブレーキだが、こちらはゴルフTSIが優っている。50kgの車重差も影響していると思うが、ABS作動中の制御の細かさではゴルフTSIが優る。
ブレーキペダルのABSによる踏力プレッシャーOFFとONの間隔が短く、速度に相応したデバイスコントロールを行っている。
カローラスポーツもペダルの剛性感があり安心してフルブレーキングできるが、高速になるにしたがってこのような差が広がる予感がする。
【スラロームタイム】
・カローラスポーツ:29秒31
・VWゴルフTSI:29秒75
【100km/h→0km/h 制動距離】
・カローラスポーツ:31.8m
・VWゴルフTSI:30.9m
【テスト車両のスペック】
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