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クルマ好きが唸る演出!大橋守さんが語る「真夜中のスーパーカー」への熱い思い

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クルマ好きが唸る演出!大橋守さんが語る「真夜中のスーパーカー」への熱い思い

以前、NHKBSプレミアムにて3月28日22時より放映予定の、トヨタ博物館でトヨタ2000GTが活躍するナイトミュージアムテイストのファンタージドラマ「真夜中のスーパーカー」のロケ取材会の模様をお伝えしましたが、先日NHK名古屋放送局広報の宮形さんより「演出担当の大橋の真夜中のスーパーカーへの思いについて聞いてほしい」というお話をいただき、2月某日、NHK名古屋放送局へ伺ってきました。

NHK名古屋放送局に到着すると

これぞオトナの運動会!?「クラシックポルシェスポーツデイ」に行って来た!

ちょうど平昌オリンピック真っ只中とあって、エントランスはオリンピック中継のパブリックビューイングスペースにもなっており、ボブスレーやスキー板の展示もありました。

CL 鈴木:まさか、NHKの演出さんから私みたいなフリーライターを指名でインタビューに読んでいただけるとは思いませんでした。今日はよろしくお願いします。(モニターのレースシーンを見ながら)あ、これは取材会でも流れていた映像ですね。

大橋:ドラマ公式ホームページにも載っています。このエンジン音はLFA開発チームの棚橋さんがアドバイスしてくださいました。

CL 鈴木:時々自宅のパソコンで見ているんですよ。トヨタ2000GTは僕も子供の頃からずっと大好きで。

大橋:一緒ですね。(笑)鈴木さんは何年生まれですか?

CL 鈴木:僕は昭和51年(1976年)です。実はトヨタ2000GTの時代ではないんです…

大橋:僕は昭和40年、トヨタ2000GTと同い年くらいです。トヨタ2000GTの時代ではないですが。スーパーカーブームの時期にトヨタ2000GTといえば日本唯一のスーパーカーでした。

CL 鈴木:そうですね、僕はどちらかというとトヨタ2000GTが再評価された頃より後の、スーパーカーブームの頃に生まれたので…。悲しいですが、その頃にはスカイラインRSが出てその後にR32GT-R出て、海外のスーパーカーに肉薄する国産車が出て、トヨタ2000GTとかヨタハチとか忘れ去れた時代なんですよね。鉄バンパーのクルマの最後の時代に生まれて、クロームメッキに丸ライトのクルマが町中から消えていくのが寂しかったんですよ。その時に日本にトヨタ2000GTというクルマが昔あったということを知って衝撃を受けたんです。こんなクルマ日本で作ってたの?って。

大橋:衝撃ですよね。でもなかなか実物にお目にかかれない…。モーターショーには行かれるんですか?

CL 鈴木:当時は小矢部にあったんですけど、現在は小松市にある日本自動車博物館で初めて2000GTを見ました。

ここで当時の2000GTの話に

大橋:当然、走らないですよね。2000GTをやっぱりスチール(静止画像)でしか見たことなかったり、また実車でも止まっている状態でしか見たことなかったりというのがあって、今回こういう撮影のために2000GTを撮ってね、一番びっくりしたのは高速カーブを曲がるときの車体の傾き方ですね。あの独特のサスペンションの効いてる感じ!

昔、スーパーカーブームの時の少年達には、どうやって撮るかはみんなこだわりがあって、でもやっぱりみんな、ちょっと斜め前からやや視線を低くして、こう煽って撮るとノーズの部分がガッとレンズに迫ってきてそれを若干ワイドに撮るみたいな。そんな事でなぜかあの頃の小学生はみんな地面に這いつくばっていました。

CL 鈴木:それで事故になったというのは何かの記述でよく読んだりしますね。

大橋:NHKの資料映像でも子供たちがカウンタックを追いかけたりしています。(苦笑)路肩に止まったカウンタックのそばにひざまずいたり、もう腹ばいになったり、運転席を一生懸命写真撮ったりしているのが、このあいだ昔のニュースの映像に出ていました。それらは実際の番組には使っていませんが、僕らゲラゲラ笑いながらみてました。でもね「あ、この中に俺いた(笑)」っていうんですよね。

2000GTの場合は、前からもカッコイイいいんですけど後ろが…リアビューがすごくセクシーなんです。

CL 鈴木:奇跡のデザイン、ですよね。

大橋:セクシーカーブというセリフも入れたんです。トヨタ2000GTという設定ではなく、劇中ではナゴヤ2000GTということもあって野崎さんというデザイナーの「野崎ライン」という言葉は出しませんが、その代わりヒロインに
野崎ラインをなぞらせながら2000GTの話をする事で2000GT=野崎ラインの美しさを愛でてくださっている人からも、しっかりと野崎ラインをなぞりながら話していると思ってもらえると嬉しいです。

これCLさんだからいうんですよ。普通こんな話したって「?」ですし。(苦笑)

ディープな話は更に盛り上がっていきます

CL 鈴木:いえいえ、有難い話です。実は僕、ちょうどいいタイミングで、別の媒体の仕事でNDロードスターのレッドトップの試乗に行ってきたんですよ。

どなたか覚えてないのですが、海外の自動車ジャーナリストが「長らく日本のクルマには色気が無かった」っていうんです。「デザインにも内装にも色気が無い」って、「この何年かでようやくその重要性に気が付いて、色気のあるデザインをするようになった」ってあったんですけど、そのロードスターは本当に色気のあるデザインなんですよ。

ロードスターというと初代のファニーなロードスターがやっぱり今でも絶大人気なんですけど、僕も初代が一番大好きなんですがそれを差し引いてもND型のセクシーさには捨て難いものがあるんですよね、お尻もイタリアンスーパーカーを思わせるデザインなんです。

大橋:広島局の仲間が、ロードスターの開発者を丹念に追ったドキュメンタリーを作ってまして。やっぱり初代のスポーティな仕様からちょっと外れたという逡巡があったんだろうということを番組で取り上げていました。もう一度スポーティな方向性に戻したいという事だったと思います。

2000GTは後継機もなく単独です。ヨタハチと似ているけど作ったメンバーは全く異なるし、なぜあのタイミングで突然変異的に出来て、しかも引き継ぐ車種があるわけでもなく、単独で存在したことはなんだったんだろうと、日本車ファンにはあるのではないでしょうか。今回、ファンの皆さんの間でも有名な話はたくさんあって、僕はそこまで詳しくなかったので少しずつ勉強するにつれて、やっぱり10年前でも、10年後でもなく本当にあのタイミングだったからこそ2000GTという車が作られる時代の要請があったんだなと感じました。

CL 鈴木:まぁ…生まれるべくして生まれた…

大橋:生まれるべくして、生まれたあの時代の前でも後ろでもないと、やっぱりあのタイミングだったんだという事を知ってびっくりしました。そういう事を知ると、実際に動いている2000GTを見た時には、すごくいじらしい気持ちというのか、元々シンパシーがありますから、2000GTに対してどんどん思い入れが深くなります。その中で実際に走っている姿を見た時に感動がありました。2000GT オーナーズクラブ主催の50周年祭で、自分はストレートの中ほどで目の前を通り過ぎていく2000GTを見ていました。

それは普通のレースでいう観客席の観戦の仕方です。しかしドラマの撮影では、クレーンブームの付いたカメラカーで2000GTと同じ速度で並走したり迎え撃ったりして、2000GTを追いかけるという稀有な経験をしたんです。カーブを曲がるときに、こういう動きかたをするのかとか、自分が乗っているわけではないですが、一般道でトヨタ2000GTが横にならんでいてもあのような体験にはならないです。やっぱりじっくりと撮ってあげたいと思いながら、一緒に走っている時は、さっきおっしゃった「色気」や「セクシー」な感じを見て、2000GTとはこうだったんだなっとあらためて思いました。

盛り上がった話題は当時の怪獣ブームの話に

大橋:全く例えは違いますが、僕は昭和40年生まれなので、スーパーカーブームの前は怪獣ブームの洗礼を受けています。46年の帰って来たウルトラマンが、はじめてリアルタイムで見れた世代です。なにが起こるかというと、ほぼ神格化された昭和41年の「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」昭和40年代前半の最初の三部作に間に合っていないわけです、そこで穴のあくほどスチール(静止画像)を見つめていました。例えば動いているガラモンや動いているカネゴンを見たことが無いんです。

CL 鈴木:あ~、なるほど。(注 当時は家庭用VTRも普及していなく、放映後ソフト化されることもなく、セルビデオ、レンタルビデオも存在していないため、放映終了後のTVコンテンツを視聴するのは非常に困難だった)

大橋:この感覚わかりますか。穴のあくほどスチールを見つめて、動いてるガラモンや動いてるカネゴンを想像するんです。

CL 鈴木:それが僕でいう所のスーパーカーブームを見たことが無いってヤツですね。

大橋:そのブームに決定的に乗り遅れてしまった中で、さかのぼって出会いなおす事ができるということは、すごい事だったんだなっと今、撮影を終えて思うんです。例えばカネゴンがどういう行為をして、どういう動作でお金を食べていたのかを知らなかったり、ガラモンが歩くときにどういう風に両手を振って、歩くときにはどういう足音で歩くのかを知らなかったり、ケムール人がパトカーの前で走るときにはどういう声と、どういう歩幅で走るのかを動画として知らなかったり、これは後々、やっと現物に触れることが出来るようになるわけです。それは自分がオタクとしてしっかり追いかけることができるようになった中学生くらいからです。

中3~高1の頃にウルトラマン80(エイティ)がありました。その80が放映されるまでに5年くらい空いていたと思いますが、その間に何度か怪獣ブームの揺り戻しがあって、80が出た頃にVHSソフトが出始めて、それではじめてウルトラQなどを実際の尺でみることができました。「昔懐かしTV大全集」という番組で20秒くらい映っただけでもすごい感動なわけです。「うわ、カネゴンだ!カネゴンだ!」って、大喜びで。(笑)

CL 鈴木:それは、僕より上の世代の、オタクの人からよく聞く話ですね。とにかく、あのビデオ持ってないか、このビデオ持ってないか、ってビデオを交換して…。今でこそDVD化されてたり、場合によってはユーチューブにあがってたり、簡単に見られますけどね…

大橋:だから、贅沢な時代ではありますがこの緊張感の無さをユーチューブに思う事もあるし、ありがとうユーチューブと思う事もあります。(笑)そういう意味でウルトラQ、ウルトラ7をフルで見られた喜びに似たような、こうだった、こういうことだったのか2000GTという感激が撮影中に凄くあったんです。撮影中もそうですが、台本を組んでいくときも「ああ~こうだったのか」と…。

撮影エピソードも語ってくださいました

大橋:思い起こすと去年8月にレース場面を撮ったのですが逡巡するまでもなく、感激に浸る間もなく実際の撮影を仕切らないといけない中で、とりあえず撮影下見のために2000GTに乗って一周するわけです。これが「俺の2000GT初乗り」なのですが乗り終わったら、すぐに撮影の段取りをディレクターに指示しなくてはいけない中で、ポ~っとしている暇なんかないんです。それでも一瞬、「こんなに目線が低いんだ」「こんなに目の前にロングノーズが手前から奥に広がっているんだ」これが2000GTに乗って前を見ることか、その都度感激があるわけです。次にLFAに乗って200km/h以上こそ出さなかったですが、130km/hまでは出してくれていたかな…。

広報 宮形:最高速度200km/hを超えていたと思います。テストコースが250km/hまで出せるということだったので。

大橋:僕200km/h体験していたんだ。一番大変な事になっていたのは音響効果の菊池君で、降りたあとヘトヘトになって地べたに転がっていました。(笑)エンジン音を収録したくて彼の時は一番ふかしていたと思います。

僕は下見の時に乗ったんですがLFA開発チーフの棚橋さんが、番組の仕上がりにおいてしっかり真剣勝負でやってる感じを、演出家が体現して編集してくれないと困ると思ってらっしゃったと思うんです。とにかく体験しなさい、と「ファンtoドライブ」を体験しなさい、ということで、横に乗せてもらうだけですが、しっかりと体験しました。やはりあの体験は大きかったと今にして思います。

CL 鈴木:やっぱり本物を知らないと、創作でもウソを書けばすぐバレちゃうし、物語を書いても薄っぺらい話になっちゃうんですよね…

実は1時間のインタビューの予定が3時間近いロングインタビューになってしまいましたので、次回は貴重な「本物の素材」を集めてどうやって臨場感あふれる映像を撮影したかについてのお話をお送りします。

取材協力:NHK名古屋放送局
真夜中のスーパーカー
http://www.nhk.or.jp/nagoya/supercar/
出演:山本美月/上遠野太洸/大森博史/MEGUMI/深沢敦/水木一郎/団時朗/唐沢寿明 ほか

▼2000GT VS LFA 新旧スーパーカー真剣勝負!プロモーション映像はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=VhlLkoT3b4w

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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