今回発売された5代目ホンダ CR-Vは、ホンダとしては久しぶりのミドルサイズSUVである。というのも、日本では2016年にいったん販売終了したため。一時販売を見合わされていた理由は、ボディサイズの大型化(が日本市場に合わない)とも言われていたが、全幅1855mm程度では、いまや大きすぎるというわけでもないのだろう。
新型CR-Vは北米でヒットしているというだけあって(2016年実績で43万台販売)、スタイリングもアメリカ車のような適度な押し出し感がある。LEDがきらきらとちりばめられた大型ヘッドライトとグリルは上のほうにまとめられ、エアダム一体型バンパーは存在感が強い。
リアビューもなかなかよくて、L字型のコンビネーションランプとリアウィンドウまわりのクローム加飾がやはり上のほうにまとまっている。外観ではボディの上と下とにボリュームを2分しているのが、新型の視覚的な特徴だ。
ダウンサイジングターボの走りは“いい感じ”
「EXマスターピース」は「EX」に対してレザーシートや電動パノラミックサンルーフ、足の動きだけでも開閉可能なパワーテールゲートなどを備えた豪華仕様。ちなみに。2018年10月の時点ではハイブリッドを含めた4つのグレードのなかで、ガソリンエンジンの「EXマスターピース」が最も売れているという。
1496ccの直列4気筒ガソリンターボエンジンは190psの最高出力と240Nmの最大トルクを発揮する。組み合わせるトランスミッションはCVTだ。
ハイブリッドはまだ試乗できていないが、少なくともガソリンターボの「EXマスターピース」に乗る限り、なるほど、よく出来ているなと思った。「全方位」とは開発責任者の言葉だけれど、まさにそのとおりで、走りも曲がりも、ひとことで言って”いいかんじ”なのだ。
新型CR-Vでは「ドライバーの意思に応える」という開発キーワードが掲げられている。2.4リッターに匹敵する240Nmのトルクを2000rpmから発生する1.5リッターガソリンターボエンジンによるスムーズな加速性はそのうちのひとつだ。
また、フリクションを低減したターボチャージャーの採用も、低回転から高回転までパワーがよどみなく立ち上がるキャラクターに貢献しているはずだ。
一時期、クルマの世界ではダウンサイジングといって、1.0リッター台の小さな排気量のエンジンを採用する傾向が見られたが、いままた、多くのメーカーが2.0リッター程度の排気量へと戻ってきている。でもCR-Vに関しては、1.5リッターターボで十分という感があった。
ハンドリングももうひとつの魅力である。ステアリングギアボックスのマウントをリジッドにするとともに、ステアリングコラムシャフトの大径化により剛性を上げた。
さらに、可変ギアレシオを採用し、ステアリングホイールの切りはじめからクイックな応答性を追求する。前後左右のブレーキを活用してコーナリング時のライントレース性を確保したアジャイルハンドリングアシストも、ぼくが”いいなあ”と感じた理由だ。
ホンダでは新型車が出るたびにハンドリングのよさを喧伝する。レジェンドからシビックまで変わらぬ傾向であるが、CR-Vでも同様だ。実際にワインディングロードでの挙動は安定している。
トルクの出かたも自然で、速度を上げていくと、CVTがドライバーの意思を受け止めて、しっかり駆動力を伝えるので、自然なドライブフィールだった。
乗り心地はフラットだ。車体の動きは安定しているし、路面のうねりにあまり影響されない。外部からの細かい振動も丁寧に吸収する。
運転していて、どこかが突出して目立つ部分はないが、全体としてスムーズな走りだ。それゆえ、操縦しているうちに、じわっと"いいな"という感想が醸成されてくる。そこが最大のよさだろうとぼくは思う。
4輪駆動システムはホンダが「リアルタイムAWD」と呼ぶもので、センターディファレンシャルギアに電子制御を組み込む。基本的には前輪駆動ベースのオンデマンド型4WDだ。つまり路面状況によって、必要に応じて駆動力を後輪に伝達する。
各種センサーにより前輪が空転する前に後輪への駆動力を配分する。またコーナー進入時にアクセルペダルから足を離すと前輪駆動となって車両が後輪に押し出されて外側にふくらまないようにする。アクセルペダルを踏み込むと後輪へトルクがすかさず分配されるが、基本はニュートラルステアだという。つまり外側にもふくらまず、予想以上に内側にもノーズが向かない。
とはいえ、ドライバーのほとんどはそれに気づかないだろう。あくまでも自然な操縦性が身上なのだ。
運転席まわりはスペースが大きくとられているし、後席もかなり広い。荷室も広大だ。荷室から後席バックレストを倒すのも、そして戻すのも簡単に操作できる。こういうクルマを使い倒すのは楽しそうだ。
価格は1.5リッターガソリンターボが「EX」の323万280円から、今回試乗した「EXマスターピース」の359万1000円まで。ハイブリッドは前輪駆動が378万4320円から、4輪駆動は400万320円からだ。
ライバルは「トヨタ ハリアー」(294万9480円~)、「日産 エクストレイル」(219万7800円~)、「マツダ CX-5」(257万400円~)、それに「スバル フォレスター」(280万8000円~)などが思いつく。2WDも4WDもあり、ハイブリッドが設定されているモデルも多い。激戦区である。
これまでホンダは、このマーケットを「ヴェゼル」(1.5リッターガソリンと1.5リッターハイブリッド)にまかせていたが、ボディサイズがひとまわり大きく、スタイル的にもよりゴツめのCR-Vでも、勝算があると見たからこそ日本市場に再投入したのだろう。クルマの完成度を考えれば、激選区を生き残る素質は十分ありそうだった。
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