ホンダからリッタークラスの排気量を持つ2台の新型車が登場したことで、大型バイクカテゴリがにわかに盛り上がりを見せています。
その1台は、2022年3月に発売された新型スポーツツアラー「NT1100」。大型AT免許で運転可能な、デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)が搭載されるNT1100は、十分なストローク量が確保されたサスペンションやアップライトなライディングポジションなどにより、長時間でも快適なツーリングが楽しめるモデルに仕上げられています。
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もう1台は、2022年9月に発売される予定の新型ロードスポーツ「HAWK11(ホーク11)」。存在感ある一体成型FRP製のロケットカウルが装備されたホーク11は、最新モデルでありながら往年の名車を感じさせるたたずまいが魅力です。
この2台に、2021年3月に発売されて以来人気を博す大型クルーザー「レブル1100」を合わせた3台は、基本設計を同じくするエンジンが搭載されているという共通点があります。
なぜ、コンセプトやデザインがまったく異なるモデルに、同じエンジンが搭載されているのでしょうか?
これらの3台に搭載されているのは、1082ccの直列2気筒水冷4ストローク4バルブのエンジンです。これは、2021年に登場した「CRF1100L アフリカツイン」に搭載されていた「SD08E」というエンジンをベースにしたもので、レブル1100のものは「SC83E」、NT1100とホーク11のものは「SC84E」という型式名が与えられています。
バイクの心臓部となるエンジンは、いうまでもなく重要なパーツのひとつ。エンジンの出来がバイクの出来を左右するといっても過言ではありません。しかし、開発や製造に掛かるコストを考えると、モデルごとに新たなエンジンを用意することは現実的ではありません。
一方、近年のバイクは電子制御が多く盛り込まれており、それらを司るECUのプログラミング次第で、エンジンの性格を変えることができるようになりました。そこで、多額のコストを掛けて基本となるエンジンを設計し、各モデルに合わせてチューニングすることで、モデルごとの特徴を演出するという手法が一般的となったのです。
アドベンチャーモデルであるアフリカツインは、過酷な環境下でも走り抜ける信頼性と耐久性が求められるモデルです。そんなアフリカツインに搭載されるエンジンには、ホンダの技術の粋が詰まっていることはいうまでもありません。
NT1100やホーク11、レブル1100のために新型エンジンを開発するよりも、アフリカツインの優れたエンジンを改良したほうが、コスト面はもちろん、パフォーマンス面でも有利であったことが、この3台が同じエンジンを搭載することになった大きな理由です。
基本設計を同じくしているとはいえ、コンセプトが異なる3台であるだけに、その乗り味は大きく異なります。
まず、現代的なスポーツツアラーであるNT1100は、DCTによるなめらかな走りを最大限に楽しめるよう、専用設計の給排気系を持たせることで、低速から高回転までトルクフルかつスムーズに回るようなチューニングとなっています。
また、NT1100には「ツアー」、「アーバン」、「レイン」という3つのモードが用意されており、さらにはパワーやエンジンブレーキなどをユーザー自身で任意に設定することも可能。その組み合わせは非常に多岐にわたるため、最初は自身にマッチしたセッティングを見つけるのに苦労するかもしれません。
しかし、1台のバイクでさまざまなセッティングを楽しめるのも、NT1100の魅力です。そしてそれを可能にしているのは、やはり懐の深いエンジンであることは間違いないでしょう。
往年の名車のようなスタイリングが魅力のホーク11には、NT1100やレブル1100のようにDCTが設定されておらず、6速MTのみとなっています。
そんなホーク11がターゲットとしているのは「大人のライダー」で、カタログ上のスペックよりも実際に運転した際の操る喜びに主眼が置かれていると説明されています。そのため、「スポーツ」、「スタンダード」、「レイン」のどのライディングモードを選んでも、アクセルのレスポンスが唐突すぎるということはなく、あくまでも扱いやすいチューニング。また、NT1100とサイレンサーを共有しているものの、取り付け角度がより高いこともあり、NT1100よりも低音の強いエンジンサウンドとなっていることも特徴です。
NT1100が現代的な機能性を重視したモデルであるのに対し、ホーク11は新型モデルでありながら、どこか昔懐かしい印象を与えてくれる1台に仕上げられています。
そして、ホーク11とはまた違った意味で、味わい深さを感じさせてくれるのがレブル1100。大型クルーザーの魅力は、なんといっても余裕のあるゆったりとした走りであり、それを彩るのはドコドコと心地良い響きを奏でるエンジンです。
レブル1100では、この小気味良いサウンドを実現するために、カムシャフトの変更やフライホイールの質量増加など、サウンドのチューニングがおこなわれています。
※ ※ ※
今回紹介した3モデルでは、基本設計の同じエンジンが搭載されていますが、エンジンチューニングやほかの部品との組み合わせにより、モデルごとにさまざまな特徴を出すことに成功しています。ちなみに、クルマの場合も、同じブランド内でエンジンを共有することはめずらしくありませんが、各モデルで性格の違いを強調することはあまりないとのこと。
クルマに比べてバイクは趣味性が高い傾向にあるため、ユーザーのニーズも多様化しているということなのかもしれません。
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みんなのコメント
昔っからエンジン使い回し(チューニングや吸排気系だけいじる)ってのは普通にあった気もするが