■新型「エクスパンダー/エクスパンダー クロス」世界初公開!
日本では販売していないものの、2022年度のグローバル販売台数では三菱自動車のナンバー3を誇るモデル、それが「エクスパンダー」です。
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同車は東南アジアなどで販売され、全長約4.5mのボディに3列のシートを備えるMPV。派生モデルとしては20mmの車高アップにラギッド感あふれるエクステリアの仕立てを組み合わせたSUVテイストの「エクスパンダー クロス」も設定しています。
先日、そんなエクスパンダーとエクスパンダー クロスのタイ向けモデルに、HEV(ハイブリッドEV)が追加されました。果たしてどんなモデルでしょうか。
大きな特徴は「アウトランダーPHEV」や「エクリプスクロスPHEV」といった同社のプラグインハイブリッド(PHEV)のテクノロジーを受け継ぐHEVだということ。
エクスパンダーHEV/エクスパンダー クロスHEVはプラグインハイブリッドではありませんが、発進時や低速走行は「EVモード」としてエンジンをかけずに駆動用バッテリーからの電力でEVのように走行します。
加速や登坂時は、エンジンを発電用として動かして駆動用バッテリーの動力と合わせてパワフルにモーターで走ります。一方で高速域では、エンジンの動力をメインとしつつモーターがアシストするハイブリッドモードとして走行する仕組みになっています。
そんな仕掛けは、エンジンを止めてモーターだけで走行できる範囲の違いはあれど、アウトランダーPHEVやエクリプスクロスPHEVと基本的に同様。だから同社のPHEVの血を受け継ぐHEVというわけです。
組み合わせるエンジンは新開発の1.6L自然吸気で、モーターの最高出力は85kW。モーター走行が中心となる低速から中速にかけてはレスポンスが良く、EVのように滑らかな走行フィーリングを味わえることでしょう。
また、ハイブリッド化によってガソリン車に対して市街地走行と高速走行を組み合わせた走りでは約15%、市街地走行では約34%の燃費改善が図られています。
■HEVの「エキスパンダー」導入の意図とは?
さて、そんなエクスパンダーHEV/エクスパンダー クロスHEVの登場で、筆者(工藤貴宏)はふたつのことを考えました。
ひとつは、三菱の電動化戦略の本気とさらなる加速です。エクスパンダーのデビューは2017年で、もちろん設計において電動化は考慮されていません(新興国向けのリーズナブルな車種としてコストを抑えることが最優先)。
すなわちHEV化にあたってはフロア形状まで含めた大改良(大改造)とそのための莫大な投資が必要だったのは言うまでもないのですが、そのハードルを乗り越えてハイブリッドモデルが登場したことは戦略上大きな意味を持つのです。
同車のプラットフォームは2012年にデビューした「ミラージュ」系のもの。電動化を一切考えていない設計だったそのプラットフォームにハイブリッドを組み合わせるのは、電子プラットフォームも含めて大幅な構造変更が必要だったことでしょう。
もうひとつは、新興国における環境意識の急激な変化です。6代目ミラージュの生産が始まった2012年はもちろん、エクスパンダーが投入された2017年でも東南アジアマーケットにおける環境意識は「(タイでのエコカー政策などはあったものの)ハイブリッドを投入するほど意識が高い」というわけではなく、「ハイブリッド化して車両価格を上げる方向よりは、できるだけリーズナブルに新車を提供する」という考え方でした。
しかしその後、東南アジアの人々の環境意識が急激に高まってハイブリッドカーを受け入れる土壌が育ってきたというわけです。
もちろんガソリン代高騰などの背景もありますが、いずれにせよ「コストダウンで車両価格を抑えることがすべて」という時代ではないということが分かります。
ちなみにこのところタイでは、新車販売におけるBEV比率が10%程度で、これは日本(2023年通年で2.3%)を大きく上回ります。そういった市場環境の変化もあり、三菱は「(タイをメイン市場とする新型ピックアップトラックの)トライトンにも電動モデルを設定する必要があると考えている」と同社の加藤社長が述べているほどです。
筆者はエクリプスクロスへのHEVモデル追加で、改めて東南アジアにおける電動化ニーズと環境意識の高まりを実感しました。
ちなみに同社における2022年度のグローバル販売台数最上位は「トライトン」、そして2位は「アウトランダー」です。
今後、トライトンに電動化モデル(EVもしくはHEV、PHEVなど)が追加されれば、同社の販売ランキング上位は電動化モデルを選択できる車種が占めることとなります。
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