電動化の方針を大幅に変更したボルボが、新たに投入した「EX90」に島下泰久が北米で試乗した。ピュアEV(電気自動車)の大型モデルに迫る。
サステナビリティへの配慮
ボルボのBEV、EX90がワールドデビューを果たしたのは2022年11月。つまり、もうすぐ2年が経とうかというタイミングで、ようやくそのステアリングを握ることができた。
もちろん、本来はもっと早いタイミングで世に出るはずだったわけだが、どうやら社内でのソフトウェア開発に時間を要し、ここまでずれこんでしまったようだ。
結果として、市場導入は昨年6月発表の「EX30」に先を越されてしまった。それどころか、この9月4日にボルボは、当初掲げていた2030年完全BEVブランド化の方針を撤回。将来の完全電動化は見据えつつも、2030年までの世界販売の90~100%をBEV、そしてPHEV(プラグイン・ハイブリッド)とすると発表した。実際、同時にEX90と同じ大型SUVセグメントに属する既存モデル、XC90の大幅リファイン版をお披露目したのである。
EX90は、そんな言ってみれば厳しい状況の中で走り出した。さて、その出来映えはどんなものだったのだろうか。
全長5037mm、2もしくは3列のシートを持つEX90のエクステリアは、EX30でも見られたデジタル表現、要するにドット絵のようなかたちで描かれたトールハンマー形状のヘッドライト、リヤウインドウ両脇の縦型+コの字型の分割式テールランプなどの目新しいディテールを採り入れつつも、全体には落ち着いた印象で、端的に言ってボルボらしい。新鮮味も程よくあり、今までのファンにもすんなり受け入れられそうな、いいバランスと映った。
インテリアも、極限までシンプル化されたEX30と同様に縦型のセンタースクリーンに多くの機能を集約してはいるが、ドライバーの眼前には速度、地図、ナビゲーション情報などを表示する小さな画面が置かれ、更にヘッドアップディスプレイも備わる。こちらも容易に馴染めそうな雰囲気とは言えるが、EX30の斬新なサウンドバーの搭載、潔いほどの割り切り感を知った後だと、すごく新鮮というほどではない、とも感じられたのは事実である。
車体の基本骨格にはBEV専用設計のSPA2プラットフォームを採用。約15%の再生スチール、約25%の再生アルミニウム、約48kgの再生プラスチックとバイオベース素材を使用しているという。内装も、再生ペットボトルなどから作られた合成皮革の「Nordico」を用いるなど、サステナビリティへの配慮ぶりはさすがボルボだ。
自然な走行感覚試乗した最上級のEX90 Twin Motor Performanceは、前後2モーターを搭載してシステム最高出力517ps、最大トルク910Nmを発生する。バッテリー容量は111kWhで、航続距離は欧州のWLTPモードで最長614kmとされる。
感心させられたのは、そのスムーズな走行感覚である。自社開発という電気モーターのドライバビリティは力強くも自然な仕上がり。味わい深いとは言わないが、ボルボに殊更それを求める人は多くないだろうと思えば、特に不満はない。
それより印象的なのは静粛性の高さで、電気モーターやその周辺機器が発する騒音をはじめ、ロードノイズ、風切り音などもきわめて低レベルに抑えられている。各部に制振材が入れられているだけでなく、シャシーへの液封マウントの採用など、ノイズ低減には相当力が入れられたそうだ。
ライドコンフォートも、やはり重厚且つ滑らか。特に前席に居ると、正直ここまで柔らかくなくてもいいのではと思うほど、ふんわりとしている。ホイールベースの真ん中近くに座る2列目が、乗り心地的には特等席かもしれない。
そんな足まわりなので走りが楽しいというタイプではないが、車重こそかさむが前後バランスは良く、重心はXC90より10cmも低いということもあり、フットワークはナチュラルで心地良い。デュアルチャンバー構造のエアスプリングを用いたボルボ曰くセミアクティブサスペンション、リアに搭載されたトルクベクタリング機構なども、自然な走行感覚を作り出すのにひと役買っているのだろう。
安全性こそがブランドのもっとも重要な価値ということで、ADAS機能も充実している。目玉はフロントウインドウ上部に備え付けられたLIDARで、これが既存のカメラ、レーダーなどと連携して、より緻密な制御を可能にしているという。実際には、これは将来のレベル3ないし4自動運転に備えたもので、現状の貢献度がどれほどかは分からないが、ともあれ現状でも試乗の後半はほとんどパイロット・アシストを入れたままにしてしまったくらい、違和感無く使えるものになっていたことは確かである。
最初に外観を見て感じたように、ちゃんと新鮮だけれども、しっかりボルボらしいクルマだったEX90。内外装デザインもそうだし、EX30では少々飛ばし過ぎかなと思わせた室内の使い勝手も、面白みは程々だけれど快適、安心な走りも、あらゆる部分でそんな風に感じさせた。BEVに斬新さを求める人にとっては物足りないかもしれないが、ボルボに慣れ親しんできた人にはちょうど良い辺りと言えるだろうか。
但し価格は、欧州でのそれを見ると今回乗った最上級版は1千万円台後半と、慣れ親しんだ感じからはやや遠くなりそう。しかも冒頭に書いたようにボルボはこのタイミングで2030年完全BEV化の目標を取り下げ、しかもXC90の改良まで実施してきたから、ユーザーは困惑するのではと、ちょっと心配になる。
そんなEX90の日本導入はまだもう少し先。今のところ2025年後半の予定だそうだ。
文・島下泰久 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
将来はともかく、まだまだEVだけにするには時期尚早。
可能なら評判が良かったディーゼルのハイブリッド仕様を出してほしいくらい。
ハイブリッドのXC30登場も期待したい。