McLaren 720S Spider
マクラーレン720Sスパイダー
アウディ R8はなぜ万能スーパースポーツなのか? その秘密はV10エンジンにあった【Playback GENROQ 2017】
究極の爽快感をもたらすスパイダー
カーボンコンポジットのボディと720ps/700Nmの類稀なるパフォーマンスを味わえるマクラーレンのスーパーシリーズ、720Sにスパイダーボディが加わった。速さと爽快さに加えて優れた実用性も併せ持つ、新たなフラッグシップの誕生である。
「マクラーレンの販売台数の半分はスパイダー」
マクラーレンのスポーツシリーズには540C、570S、570GT、600LTという4種類のラインナップがある。そのうち570Sと600LTにはスパイダーが用意されており、今回新たにスーパーシリーズの720Sにもスパイダーボディが加わった。派生モデルである570GTを除いたスポーツ&スーパーシリーズ基本4車種のうち、3車種にスパイダーが用意されることになる。これは相当なオープン率だといえるだろう。こうなると540Cにスパイダーがないのが不思議にさえ思えてくる。
思えば過去には12C、675LT、650Sにもスパイダーがあったのだから「ロードモデルにはスパイダーを用意する」というのはマクラーレンの社是のようだ。今回、アリゾナで行われた720Sスパイダーの試乗会での食事の際、隣に座ったプロダクト・マネージメント統括のイアン・ディグマン氏に「なぜそんなにたくさんスパイダーを造るのですか?」と聞いたら
「決まってるじゃないか。人気があるからだよ。マクラーレンの販売台数の半分はスパイダーなんだよ」という、明瞭な答えが返ってきた。
「カーボンモノコックのボディ構造がマクラーレン・スパイダーの有利な点だ」
ビジネス上のメリットを考えて商品を作るのは当然であろうし、マクラーレンは基本的に商品開発の段階からオープン化を考慮しているという。昨今、他ブランドもそういう例はあるだろうが、マクラーレンが有利なのは言うまでもなくカーボンモノコックを用いたボディ構造を採用している点だろう。この強固なボディのおかげで、屋根を切っても新たなボディ補強は行わなくても大丈夫、というのがマクラーレンのスパイダーたちの宣伝文句だ。
ただ720Sスパイダーが採用しているモノケージIIと呼ばれるカーボンコンポジットは、オープン化に伴っていくつかの変更を受けている。ルーフ部分をカットしてリヤまわりの形状を変更したことに加えて、Aピラーを強化して同時にフロントウインドウの上部を少し前進させている。またリヤデッキの高さを25mm下げて、後方視界を改善するという改良も行われた。しかし、いわゆるボディ剛性を上げるための補強はなされていないという。
ちなみに720Sをスパイダー化するにあたって施されたハード面の変更メニューは、そのモノケージIIのリファイン(呼び名はモノケージII-Sとなった)と、新デザインのドアとヒンジ、フロントとリヤフェンダーのデザイン変更、新デザインのホイール、とこれだけだ。重量は1468kgで、これはクーペよりもわずか49kgの増加にとどまる。そのためかサスペンションの設定などもクーペと同じだが、アクティブリヤスポイラーは、クローズド時とオープン時でその制御を変えるなどの変更が加えられている。
「スーパースポーツカーとしては異例に後方視界が良い」
リヤまわりがトンネルバックとなったことで、どことなく570S風のルックスとなった感はあるが、独特の昆虫のような顔つきは健在。しかし外観上の最大の特徴であったルーフまで一体となって開くスタイルのディへドラルドアが、スポーツシリーズと同じような形状となったのはやや残念だ。リトラクタブルルーフは570Sスパイダーとは違ってワンピース構造なので、その動作はシンプルでスムーズ。オープンに要する時間はたったの11秒で、スイッチを押すと本当にあっという間にフルオープンとなる。おそらくこれは世界で最も早い動作の電動ルーフだろう。
またこのルーフは中央部がガラスとなっており、クローズドでも外の風景や陽射しを楽しむことが可能。しかもこれはエレクトロミック・ガラスと呼ばれる調光式で、ルーフにあるボタンを押すことで瞬時に濃いブルーに変えられるので、真夏でも大丈夫だ。遊び心溢れる装備だが、ガラスは重量的にはかなり不利なはずで、もしここをカーボンや樹脂製としていたら、重量はもっと軽くできたに違いない。
720Sスパイダーのもうひとつの大きな特徴は、ボディ後部に伸びるフライング・バットレスで、後方視界確保のためにここがスモークガラスとなっている。実際にシートに座って振り返ってみると、この手のスーパースポーツカーとしては異例に後方視界が良い。そもそもクーペの720Sがミッドシップスポーツとしては世界一と言えるほどの視界の良さを持っているが、スパイダーとなってもその美点は受け継がれている。そのガラス製フライング・バットレスもそうだが、リヤデッキの高さを25mm低くしているのも大きい。これにより、後方直後の死角は以前の650Sスパイダーと比べて7.5mも短くなっているという。
「卓越したダイナミクス性能。スピードを上げても挙動は徹頭徹尾乱れない」
センターコンソールのボタンを押してエンジンを始動し、まずはクローズド状態で走り出す。スピードを上げていってもルーフ周りから軋み音などは一切聞こえてこず、まるでクーペボディかのように室内は快適だ。ルーフのガラスを通してアリゾナの太陽がさんさんと室内に降り注ぐ。クーペの720Sもルーフをガラスにすることができるが、それよりも明らかに開放感は大きい。頭上にあるスイッチを押すとガラスは瞬時に着色されて陽射しと暑さがさっと遮られる。物理的なシェードがないと暑さは和らがないのでは、と危惧していたのだが、これなら日本の真夏でも快適に過ごせそうだ。
それにしても素晴らしいのは720Sスパイダーのダイナミクス性能だ。スピードを上げていってもその挙動は徹頭徹尾乱れず、多少の路面の荒れもダンパーが完璧に受け止めて、ボディはほぼフラットなままだ。すべてのダンパーを回路でつなぎ、油圧を電子制御するPCCIIは、例えばコーナリングの最中にステアリングを多少乱しても、不快な挙動変化をほとんど示さないという素晴らしさだ。しかも乗り心地が非常にしなやかなのも特筆すべき点。サーキットや峠を目を三角にして攻める、というのも楽しいが、街中や高速道路をゆったりと流す、という使い方も快適にこなせるのがクーペにも共通する720Sスパイダーの美点だろう。
「マクラーレンのピュアな操縦性能をスパイダーなら一層色濃く感じられる」
ここでルーフをオープンにする。開放感は非常に高いが、サイドウインドウを上げていれば60km/hくらいまでは風の巻き込みもほとんど感じないほどだ。風と日光と背後のややくぐもったV8サウンドを感じながら走ってみると、そのフィールにクローズド状態、もっと言えばクーペに対するネガさえもまったくない。それどころか、ステアリング操作に対するクルマの挙動がほんのわずかだがシャープになっていることに気づく。
上屋のガラスがなくなり、重心が低くなったことの効果だろう。720Sに限らず、マクラーレンは最近主流の電子デバイスによる制御機能に頼らず、ボディ剛性や重量、シャシー性能といった基本的資質を高めることで得られるピュアな操縦性能の高さが魅力だが、スパイダーならそれをより一層色濃く感じられるというわけだ。
もはや、あえてクーペを選ぶ理由がない、とさえ言える。あなたが絶対に屋根を開けることはない、と言い切れるのなら話は別だが。
REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/Mclaren Automotive
【SPECIFICATIONS】
マクラーレン 720Sスパイダー
ボディサイズ:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1468kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:530kW(720ps)/7500rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/5500-6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35R19(8J) 後305/30R20(11J)
最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒
車両本体価格:3788万8000円
※GENROQ 2019年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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