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2021年の最高を選出 シンプルなケータハム 見事な統合のフェラーリ BBDC 2021(2)

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2021年の最高を選出 シンプルなケータハム 見事な統合のフェラーリ BBDC 2021(2)

1年で最も長く喜びを得るならi20 N

BBDC選手権の審査員の1人、プライヤーがあごひげを触りながらヒュンダイi20 Nを降りる。「1年に走るすべての道で、最も長く喜びを得られる1台をノミネート車両から選ぶなら、i20 Nでしょう。とても楽しい」

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「神経質に運転する必要も、擦り傷を過剰に心配する必要もありません。気兼ねなく乗れるというのは、重要なことです」。彼の意見に賛同する。2021年のノミネートで、最もお手頃な価格のモデルだからだ。

適度にコンパクトで、目立つカラーで、ワインディングを3速で爽快に駆けられる。攻め立てて走って欲しいと、クルマがドライバーに訴えてくる。ドライバーはそれに応える。グリップの限界付近で、深い充足感を得られる。

ホットハッチとして、グリップもスピードも、アグレッシブさも、期待以上のモノを備えている。サーキットへ持ち込まずとも、その能力を英国の一般道で充分に味わい尽くせる。日常的な使い勝手の良さも、乗ればすぐにわかる。

アングルシー・サーキットでは果敢に回頭し、コーナーへ食らいついた。シンプルさとダイレクトさで、多くに伍する体験を与えてくれた。

ライトブルーのヒュンダイi20 Nの対局にあるモデルは何か。ノミネート車両を遠くから眺め直す必要はない。ワイド&ローでレッドな1台がある。電動化技術を採用し、時々静かで、とても騒がしいクルマだ。

そう、フェラーリSF90 ストラダーレ。審査員のフランケルはこのクルマを次のように表現する。「活発なサラブレッドを、狭い部屋で放っているようなもの」

度肝を抜くほど速いSF90 ストラダーレ

イタリア生まれのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)を、公道では思う存分捲し上げることができなかったようだ。「とてつもない。展開しきれません。公道は完全に間違った環境といえます。すべてを完璧にこなせますが、誰のためのクルマなのでしょう」

「生産台数は無制限で、英国価格は約50万ポンド(約7700万円)。まともな荷室はない。フェラーリ488 GTBを運転して、あまり楽しくないと感じる場面は一度もなかったのですが」

確かにSF90 ストラダーレは、英国東部のスノードニア周辺のカーブを、ノミネート車両のどれより余裕を持って処理した。だが、クルマとして現実離れした能力が審査員を悩ませた。

パフォーマンス・モードを選ぶと、PHEVのパワートレインは度肝を抜くほど速い。僅かなアクセルペダルの操作に対して、極めて敏感に反応する。ヒュンダイi20Nとは異なり、ペダルを深く踏み込むと、社会的に認められないと感じてしまうほど。

審査員のディスデイルは、このPHEVが素晴らしく統合されていると表現した。確かに、そう感じる。超シャープなエンジン1基が、超シャープに反応しているようだ。瞬間的に発生する巨大なトルクで、ドライバーを陶酔させる。

フェラーリの特色の通り、ステアリングホイールを握る指先の細やかな操作に、ボディは機敏に反応する。正確で独特の緊張感がある。複雑なPHEVは見事なまでに統制され、軽くない車重も感じさせない。だが、それが印象のすべてではなかった。

思い切って運転を楽しめるセブン 170R

2021年のBBDCのノミネート車両には、超軽量なスポーツカーも含まれていた。440kgのケータハム・セブン 170Rは、余分なものがすべて削ぎ落とされている。現在購入できるケータハムで最も軽く、最もシンプルで、繊細なモデルだ。

エンジンは85psという控えめな最高出力を発揮し、タイヤは14インチの155/65と小さい。先祖返りしたクルマともいえる。公道でも、審査員に強い印象を残してくれた。

ディスデイルが、「1950年代のシングルシーターのようです」。と言葉を漏らす。プライヤーが続ける。「古いオースチン・セブン・スペシャルを走らせている感じ」。似たような印象を受けたようだ。

ケーターハムの限定的なパワーとコンパクトさ、高効率という純粋な組み合わせは、唯一無二。サーキットで本当に楽しいと感じるには、かなり積極的な運転が求められる。高くないグリップ力が、その楽しさを引き立てている。

「オーバースピードでコーナーへ侵入すると、セブン 170Rは耐えきれずにリアタイヤのグリップが抜けます。でもクルマに勢いはさほどなく、カウンターステアを当てて少したつとスピードが落ちてしまう」

「だからこそ、思い切って運転を楽しめる。笑顔になれますし、体験として悪くありません」。と、フランケルがケータハムの印象をまとめた。

素晴らしいバランスのアトム 4

2020年のBBDC選手権で優勝した、アリエル・アトム 4も爽快。シャシーは素晴らしく表現豊かで、大パワーを受け止めスタビリティーも高い。

2021年仕様はパワーアップされ、最高出力355ps、最大トルク48.3kg-mを獲得。車重は600kgにも満たないから、かなりパワフルだといっていい。ブースト圧調整のノブをサーキット重視のレベル3に設定し、思い切りアングルシー・サーキットを疾走させた。

アトム 4はシンプルがゆえに、物理の法則の存在も大きい。充足感が高い反面、これほど体力を奪うクルマも少ないだろう。ステアリングはクイックで重いものの、フィードバックが濃い。数周も走れば、腕の筋肉がパンプアップされてくる。

セットアップを好みの状態へ整えると、グリップとスピード、ハンドリングが見事なバランスを見せる。素晴らしい可能性が、ドライバーに与えられる。

さらにオーリンズ社製ダンパーをサファリ・モードに切り替えれば、一般道でまったく別の体験も与えてくれる。アスファルトを滑らかに走破する。アトム 4の素晴らしさは、2021年もそのままだった。

さて、今年はプジョー508 PSE、BMW M3 コンペティション、アルファ・ロメオ・ジュリアGTAmという、3台の高性能4ドアサルーンがノミネートした。価格差は大きく、10万ポンド(約1540万円)以上という値札を英国で下げているモデルもある。

先にフランケルが508 PSEに触れた。「プジョーは、運転好きが選ぶファミリーカーとしての核心に迫ったようですね」。だが、その動的能力には常に制限が掛けられたようでもあった。

トップ3選考の続きは(3)にて。

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