ショーファードリブンのカタチが変わってきている今、レクサスから新たなフラッグシップモデルが登場した。それが「LM」である。今回は日本が誇る新しいハイエンドMPVで古都・京都を巡りその伝統や文化に触れつつ、東京まで約500kmのロングドライブでLMの実力を測った。(MotorMagazine2024年5月号より)
ミニバンとしての動的質感に対する期待と不安が入り混じる
ロングドライブはいつも“期待と不安”に満ちている。とくに今回のレクサスLM500hのように、そのブランドにとっての新規カテゴリーに属するモデルともなると、動的な質感から世界観の表現まで興趣が尽きない。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
レクサスは“ドライビング”を重視するブランドだ。スポーツカー的な狭義のドライビングファンではなく、ドライバーズカーとしても快適であることをファンであるとするブランドだと私は思っている。少なくとも日本市場では。
だから海外市場向けに先代アルファード/ヴェルファイアをベースとしたレクサスLMが登場した際も、日本市場に投入すればかなり売れそうだとは思ったものの、あのプラットフォームを使って走りのクオリティをブランドイメージに見合うよう鍛えることは厳しいと思っていた。
最新世代となってついに日本でもLMが販売されると聞いて、別の“期待と不安”が生まれる。
ポテンシャルの高い「GA-K」プラットフォームを使うからそれはきっとブランドイメージに見合ったエンジニアリングに成功したはずだという期待と、とはいえ大きな筐体でスタイルはミニバンだけに動的な質感をどこまで高めることができたのだろうという不安もあったのだ。
通常のフルモデルチェンジよりも大きな期待と不安を抱きつつ、はるばる京都にやってきたLMのまずはドライバーズシートに収まった。
まずは運転席から。意外にすんなりと「入って」いける
誰がどう見てもショーファーカーなのだから、後席の評価からだろうと思われるかもしれない。けれども前述したどおり私はレクサスを“ドライバーを疎かにしないブランド”だと思っている。必ずそういう目線で評価し、数多の苦言も呈してきた。だから“話題の後席”への誘いを遮って、コクピットへと腰を落ち着けたのだ。
ちなみに私は京都在住で、今回のドライブでは案内役も仰せつかっている。後部座席からあれこれ指示を出すよりも運転席を陣取った方が何かと都合も良い。
リクエストに応じて観光名所やランチ、喫茶、土産物店巡りが始まった。京都に住まう人は普段から贔屓の店を何軒も買いまわることが好きだ。さほどよろしくない交通事情にあってクルマでの移動を割と苦にしない。
とはいえLMのようなフルサイズのミニバンで、ただでさえ観光客で賑わうスポットを走りまわるのは……という気持ちもあったのだけれど。
京都の混雑した街中を走り出してまず感心したのは、フロントアクスルの手応えのよさだった。ある程度の意のまま感はもちろん、操作フィールが滑らかで嫌味がない。「あ、これならドライブしていたいかも」、とスンナリ入っていける。
私×ミニバンでは「さっさとドライブを終えよう」という気分になることの方が多いから、珍しいパターンである。
そろそろ観光客が動き出す朝。清々しい気分で1日を始めるべく、祇園を抜けて八坂神社の脇を入り、高台寺を目指した。
気兼ねなく京都の小路をドライブできた
目障りな建造物の少ないこのエリアは決してドライブルートではない。整備の行き届いた道も急に狭くなったり、細く直角に折れ曲がったりする。基本的には歩いて巡る街だけれど、京都らしい風情を車窓からも味わえるスポットだから、“京都にやってきた”という気分になってもらうには最高の場所だ。
要するに大きなクルマで走ることは逡巡してしまうようなルートだったのだが、走り始めたときの好い印象と、実際の視界の良さやカメラやアラームのおかげで気兼ねなく入っていけた。意のままに動いてくれているという感覚が、狭い路地への進入をためらわせない。
ショーファーカーだからといってアメリカの送迎バンのようにドライバーを無視したかのような作りよりも、気持ちよくドライブしてもらえる設計である方が安心で安全というものだ。
ドライブ環境における静粛性の高さもレクサスらしい。エンジンノイズは極力抑え込まれ、不快な振動も伝わってこない。段差や目地をパスする際のショックも、かえってドライブのアクセントになるような感覚で心地良くいなす。
街中の舗装路面では市バスなどの大型車両によって造られた大きなくぼみなどが散見される。そんなところでもミニバンに特有の“大きな箱がよじれて震える”といった感覚がまるでなかった。
京都を代表する和食の名店で弁当を予約しておいた。桜も散り新緑が繁る4月から5月。日に日に気温は上がって屋外でも気持ちよく過ごせるという、夏は暑くて冬は寒い京都では実は貴重な季節がやってくる。ランチの名店は数あれども、この時期だけは葉桜のもとでいただく名店の味ほど楽しい食事はほかにない。
おすすめのスポットは京都御所。ついでにぜひ御所内も散策してみてほしい。広大な敷地にあって、見上げるとビルなどの背の高い建築物がまるで見えない。360度、空がひらけて見えるのだ。平安の時代と変わらぬそれは景色だろうと想像を逞しくする。
ずっと運転席にいられるのはドライバーズカーである証
かつて京都から東京へと拠点を移した和菓子の老舗「とらや」で食後の抹茶とデザートを楽しみ、お腹と心も満たされて、それでもなおドライバーズシートに収まっていられること自体、ミニバンであるLMにドライバーズカーの本質が備わっていることの証でもあるだろう。もっとも、パーテーションに遮られた向こう側の様子もそろそろ気になり始めてはいた。
東京への土産物を買い回る。洛中の繁華街、洛北、山科あたりを巡ってこの日は京都駅に近いホテルで心地よい疲れを癒すことにした。結局、私は日がな一日LMをドライブしたのだ。しかも京都市内をぐるぐると。
確かにお楽しみ(後席)は取っておくタチとはいえ、それだけLMの日常的なドライバビリティに慣れ親しめたということだろう。
翌日。いざ東京を目指すとなってなお、私はドライバーズシートに居座った。街中での良さはわかったけれど、高速道路での性能はどうか、知りたかったからだ。
京都に住んでいるため月に数度、最近ではほぼ週イチ、最新モデルを往復のテストドライブに供するという生活をかれこれ十年以上も続けてきた。おかげで高速道路に入って半時間もドライブすれば、その先の長い道のりが快適かそうでないかの見当もかなり高い確率でつくようになっている。
ビジネスユースだけではもったいないと思わせる後席
はたして京都東インターから名神高速に入り、大津トンネルへ向かう登り坂を加速しはじめたとき、「これなら大丈夫」という手応えを早くも感じ取った。街中で感心した前輪の動きは高速域になると程よく安定し、目線を先に置きさえすれば車線を正確にトレースする。これなら運転支援も不安なく使えそう。
しばらく高速ドライブを楽しんでグランドツーリングとしても使えることを確認すると、ようやく「とっておき」を試したくなった。サービスエリアでドライバーチェンジ。最新の「ビジネスクラス」シートへと移った。
極楽だ。48インチの巨大なモニターでテレビのニュース番組をチェックしたり、リラクゼーション機能で日々の疲れを癒す。
上質な仕立てや快適な装備をビジネスユースだけに使うことはもったいない。頭の揺れを抑えた後席重視の心地良さとこのエンターテインメント性さえあれば、日頃から長距離ドライブを嫌う妻を遠出に誘うこともできるだろうか。
否、そうなると私はドライバー。できれば二人で後席を楽しみたいがショーファーを雇う甲斐性などない。かといってパーテーションの窓を開けておくのも……。
あれこれ想像を掻き立てることもまた新しいモデルの魅力だ。期待と不安で始まったLMのドライブは大いなる満足で終わろうとしている。ゆうに200kmぶんは後席でぐっすり眠っていたけれど。
(文:西川 淳/写真:永元秀和)
レクサスLM500h “エグゼクティブ” 主要諸元
●全長×全幅×全高:5125×1890×1955mm ●ホイールベース:3000mm ●車両重量:2460kg ●パワートレーン 種類:2.4L直4ターボ+2モーター ●エンジン最高出力:202kW(275ps)/6000rpm ●エンジン最大トルク:460Nm(46.9kgm)/2000-3000rpm ●モーター(フロント/リア)最高出力:64kW(87ps)/76kW(103ps) ●モーター(フロント/リア)最大トルク:292Nm(29.8kgm)/169Nm(17.2kgm) ●システム最高出力:273kW(371ps) ●トランスミッション:6速AT ●駆動方式:4WD ●WLTCモード燃費:13.5km/L ●燃料・タンク容量:プレミアム・60L ●タイヤサイズ:225/55R19 ●車両価格:20,000,000円
[ アルバム : 「レクサスLM500h」で巡る古都 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
このコメントして『自分は田舎住まいです』ってアピールしちゃったね
匿名掲示板で居住地までわかっちゃうアホな弱低所得層君。↓
↓⇩
4人乗りはキツイとか言った過疎地住まいの低所得層
一人で運転する車じゃねだろマジにw