ダイムラー・トラックAGは9月16日、電動化に向けた技術戦略を発表。メルセデス・ベンツ燃料電池トラックのコンセプトモデル「GenH2」を初公開した。
1つの水素タンクで1000km以上の航続距離を実現するこの「GenH2」は、2023年には顧客によるトラックの実用供試を開始し、2020年代後半に量産を開始する予定となっている。
トラックの超特盛!? 1台でトラック2台分の荷物を運べるダブル連結トラックの進化にワクワクが止まらない!
燃料電池トラックコンセプトモデル「GenH2」を通して見えてくるダイムラー・トラックの「脱カーボン」への取り組みを考察する。
文/フルロード編集部、写真/ダイムラー・トラックAG
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■ダイムラー・トラックのコンセプトモデルは伝統的トラクタで近未来フェイス!
9月16日にドイツでお披露目されたメルセデス・ベンツ燃料電池トラックのコンセプトモデル「GenH2」
ダイムラー・トラックは現在、運行ルートが決まっていない長距離運送業務を燃料電池式大型トラックで遂行する技術に取り組んでいるが、1つの水素タンクで1000km以上の航続距離を実現するこの「GenH2」は、2023年には顧客によるトラックの実用供試を開始し、2020年代後半に量産を開始する予定だという。
ヨーロッパで長距離トラックといえばトラクタが定番。「GenH2」もトラクタである
「GenH2」の燃料電池(FC)は、水素ガスではなく液体水素を利用しているが、液体水素(LH2)は水素ガスに比べて体積あたりのエネルギー密度がはるかに高く、燃料タンクを小さくでき、また圧力が低いため軽量にできるというメリットがある。
このため、トラックは荷室空間を広く取ることができ、積載重量も増やすことができる。同時に充填できる水素の量も多くなるため、トラックの航続距離を大きく延長することができる。ちなみに「GenH2」のパフォーマンスは、従来の同クラスのディーゼルトラックに匹敵するものになるとみられている。
■動力系の二段構えで万全! 加速や登坂の負荷をバッテリーでサポート
「GenH2」に2つ搭載される燃料電池システム
量産型「GenH2」に用いられる2つのステンレス製液体水素タンクは、長距離に対応するため、80kg(各40kgずつ)という大容量となっている。
タンクシステムは2つのステンレスチューブで構成され、1つがもう1つのチューブの中に収納されている。両者は互いに接続され、真空断熱されている。量産型「GenH2」の場合、燃料電池システムが2×50kWを供給し、追加でバッテリーが一時的に400 kWを供給する仕組みだ。
1充填の航続距離1000km以上というのは、長距離トラックとしては必要十分だろう
バッテリーはエネルギー供給目的というよりも、加速中のピーク負荷時や満載時の登坂など、状況に応じて燃料電池をサポートすることが主な目的である、従ってバッテリー容量は70 kWhと比較的低く抑えられており、重量も比較的軽量だ。充電は回生ブレーキと燃料電池の余剰エネルギーによって行なわれる。
燃料電池とバッテリーシステムの高度な運用戦略の要となるのは、全構成部品を理想的な動作温度に保つ冷却・加熱システムで、これにより最大限の耐久性が確保される。
量産前バージョンの場合、2つの電気モーターは連続出力合計2×230 kW、最大出力2×330 kWで設計されている。トルクは連続で2×1577 Nm、最大で2×2071Nmである。
■長距離仕様の電気トラックも! 来年の量産化へ向けて順調に試験運用中
この「eアクトロス・ロングホール」も「GenH2」と同様、IAA国際商用車ショーで披露された「アーバンeトラック」の「鉄仮面」フェイスを採用している
またダイムラー・トラックは同日、電気長距離仕様トラックのメルセデス・ベンツ「eアクトロスロングホール」も初披露した。
これは特定のルートを走行する定期便を最も高いエネルギー効率で行なうことを想定し設計したトラックで、1回の充電で約500kmの航続距離を実現。この長距離仕様の「eアクトロスロングホール」については2024年に量産準備が完了する予定だという。
いっぽう、都市配送向けの電気大型トラックであるメルセデス・ベンツ の「eアクトロス」は、2018年に発表されて以来、顧客による日々の試験運用が実施されているが、ダイムラー・トラックは同車の量産を来年より開始する予定だという。
「eアクトロス」量産タイプは、1回の充電での航続距離がプロトタイプ時の約200kmを大幅に上回る見込みになっている。
発表イベントで披露された3台の電動車両。左から「eアクトロス」、「eアクトロス・ロングホール」、燃料電池トラックの「GenH2」
ダイムラー・トラックでは、北米市場と日本市場でも欧州と同様の車両投入スケジュールを予定しているという。
2022年までに、ダイムラー・トラックの主要販売地域である欧州、米国、日本において、商品ポートフォリオにバッテリー式電動車両の量産型を含める計画を立てている。
同社はまた、欧州、北米、日本において、2039年までに新車ラインアップはすべて走行中(タンクから車輪まで)にカーボンニュートラルを実現する車両のみで構成するという野心的な計画も掲げている。
ちなみに欧州議会とEU理事会は昨年2月、「COP21パリ協定」の目標達成に向けて大型商用車のCO2排出量を2025年までに対19年比で15%、30年には30%削減するという厳しい環境規制を策定している。
ディーゼル車の改良だけでこの環境規制をクリアすることはむずかしいため、電動化や水素燃料電池の実用化が待ったなしの状況になっているわけだが、それは日本も例外ではない。
■大手トラックメーカーが垣根を越えて電化に着手。新しい時代は確実にそこまできている!
百年に一度の大変革により、世界は燃料電池トラックへと舵を切り始めている!
今年1月15日にいすゞ自動車と本田技研工業の子会社である本田技術研究所がFC大型トラックの共同研究契約を締結したのに続いて、3月23日にはトヨタ自動車と日野自動車がFC大型トラックの実用化に向けた共同開発を発表。
続く26日には三菱ふそうトラック・バスがCO2排出削減に向けた取り組みを強化し、2020年代後半までにFCトラックを量産化する計画を明らかにしている。さらに4月21日には、今回のダイムラー・トラックとボルボグループがFC事業の合弁会社を設立するという大きなニュースもあった。
世界1位と2位のトラックグループが手を携えて燃料電池システムを開発・製造・販売する新規共同事業を立ち上げるというの極めて注目される動きだろう。
また、イヴェコを擁するCNHインダストリアルは米国の二コラ・モーターとFC大型車開発の独占的戦略提携を結ぶなど、メーカーの垣根を越えた態勢づくりは確実に進んでいる。
世界は確実に燃料電池トラックへと舵を切り始めているのだ!
(トラックマガジン「フルロード」編集部)
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みんなのコメント
電気自動車は結局環境に優しいとは言えないからね。
特に中国みたいに石炭で発電していたら本末転倒。