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スーパー耐久第2戦富士24時間から緊急対応で供給されるブリヂストンのスリックの印象は

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スーパー耐久第2戦富士24時間から緊急対応で供給されるブリヂストンのスリックの印象は

 5月26~28日に静岡県の富士スピードウェイで開催されるENEOSスーパー耐久シリーズ第2戦NAPAC富士SUPER TEC 24時間レースは、今季のスーパー耐久にとっても大きな転換点とも言えるレースだ。すでに既報のとおり、3月に発生したハンコックタイヤ大田工場の大規模火災の影響で、ブリヂストンが緊急対応を行うことになり、4月28日に行われた公式テストでのST-4/ST-5クラスに続き、ST-X、ST-Z、ST-Q、ST-1~3の各クラスでもブリヂストンのスリックタイヤが供給された。これまで使用されたハンコックのスリックとの違いを複数のドライバーに聞いた。

 スーパー耐久シリーズは2021年からハンコックがワンメイクタイヤサプライヤーを務め、安定したクオリティを保ってきたが、2024年からはブリヂストンがサプライヤーを務めることが決まっている。そんななか、3月に起きたハンコック工場の火災の影響により、スーパー耐久ではブリヂストンがシリーズの危機に際し緊急対応を行うことになった。

ハンコック工場の火災をうけスーパー耐久第2戦からブリヂストンが緊急対応でタイヤ供給を開始へ

 4月に行われた公式テストから、ST-4、ST-5、ST-Qの一部車両ではポテンザRE-12D、ポテンザRE-71RSといった市販タイヤが使用され、この富士24時間のレースウイークから、ST-X、ST-Z、ST-Q、ST-1~3の各クラスでもブリヂストンのスリック、ハンコックのウエットが使用されることになった。5月25日に90分が2回、60分の夜間走行が1回行われた専有走行は、ブリヂストンのスリックを使用されての初めての公式スケジュールとなった。

 まず、ST-Xでは中升ROOKIE AMG GT3をドライブする片岡龍也に聞くと、「距離を走ったタイヤしか僕は乗っていませんが、パッと乗った印象は全体的に柔らかい印象で、縁石に乗ったときに“コンフォート”な感じ。『レグノかな?』みたいな(笑)」と片岡は語った。

「グリップのレベルはハンコックと比べると、少し高いような感じ。ただ全体的に剛性が“受け流す”と言うか、スライドの仕方がマイルドな印象ですね。独特な感じがありますが、乗り慣れればつかみとりやすいと思います。ジェントルマンドライバーには良いのでは」

 なお中升ROOKIE AMG GT3は、わずかにセッティングを変更しているという。

 同じST-Xに参戦するHELM MOTORSPORTS GTR GT3をドライブする平木湧也に聞くと、「すごく良いですね。出ていった瞬間にグリップがあります」と温まりが非常に早いという。「ピークはない印象ですが、その後ぜんぜん落ちません」と高いグリップのままずっと走ることができるという。

 ただ、一方で重要な指摘も。「ST-Xはタイヤが柔らかくなっているから、ピックアップの問題があります。今までのハンコックではありませんでした。プロはつかないのですが、ジェントルマンドライバーはついてしまうんです。しかも全然とれない」

 これについては、ST-Zクラスに埼玉トヨペット GB GR Supra GT4で参戦する川合孝汰も同様に指摘した。「ジェントルマンが乗っているときに『ガタガタする!』と無線が入って見たら、左フロントだけすごいことになっていました」と川合。タイヤの印象自体は「柔らかい印象。ハンコックのときはどちらかの方向が弱い印象がありましたが、ブリヂストンは良い感じですね」とのことだった。温まりの早さは川合も指摘した。

■使いこなすためには課題も。戦略に変化も?
 同様にST-Zにraffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4で参戦する富田竜一郎に聞くと、「思ったほどハンコックとは差がありませんでしたが、乗りやすさがありますね。ただ根本的にキャラクターが違うので、使い方をまだつかみ切れていないところがあります」という。

「ハンコックの方がショルダーの固さがあまりなく、つぶれていく印象。挙動の変化しろが大きい感じがありますが、ブリヂストンはショルダーがしっかりしているので、クルマが耐えようとする。でもそこがまた難しく、ある程度内圧が張っていないと、ショルダーが倒れず、接地性の変化が大きくなります。そこをどう一定にするかの内圧が難しいところです」

 また富田は、平木、川合同様「アウトラップからピークグリップのようなものが出ていて、1周目にアタックできてしまう。それがいちばんのピークなのかはまだ分かりませんが、1周目ですぐにタイムが出ます」と温まりの早さを指摘した。さらに「ピークから落ちることは落ちますが、落ちきらないです。ワンメイクタイヤとしてはすごく優秀ですね」と語った。

「日本のシリーズなので、日本のタイヤでやって欲しいとも思いますし、逆にこのタイヤを他のシリーズでも使ってもらえるようになって、どこにいってもブリヂストンでレースをできるようになったらいいですよね」

 また、ST-1クラスにD'station Vantage GT8Rで参戦する織戸学は「ハンコックに比べると荷重に対して強くなっていて、今までタイヤが動いて曲がれなかったところが曲がれるようになったけれど、逆にゴムのグリップが高すぎて、ケースが弱すぎるかもしれない。運転は楽だけど、重いからフロントタイヤの摩耗がすごい」と語った。

「ブリヂストンと言っても、スーパーGT用のタイヤとは違う。ゴムの落ち込みはないけど、摩耗していっちゃう。リヤは大丈夫だけど、左フロントが厳しい。100Rなどの荷重が支え切れていないのでは」と語った。なおアベレージタイムで言えば「1秒くらいは上がるのでは」という。

 ST-2クラスにKTMS GR YARISで参戦する荒川麟は「基本的に良い方向で、グリップ感もタイヤの保ちも上がっています。僕としてはすごく楽しいですし、落ちがないですね」と語った。GRヤリスはレース中フロントのみ交換するパターンも多いが、この話を聞く限り、リヤタイヤについてはかなり引っ張るパターンもあり得そうだ。

「ブリヂストンは柔らかい印象がありますが、サイドウォールの剛性があるので、セットアップも変更していき、かなり落ち着いてきました」

 車種によってもちろん事情は異なり、またハンコックもシリーズと調整しながら決めてきたグリップレベルやタイヤの保ち具合ではあったが、さまざまな声を総合すると、ブリヂストンのスリックはグリップはこれまでより高め、温まりが良い、タイヤの落ちが少ない……というところだろうか。セッティングの調整も車種によってさまざまだが、戦略の変化もあり得そうだ。タイヤの変化で、予選からこれまでと違うシーンが見られるかもしれない。

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