新型ディフェンダーは、初代モデルに対する愛情や情熱、そしてリスペクトの念をもって誕生したという。そもそも初代ディフェンダーとはどんなクルマだったのか? ここでは、新旧モデルを連れ立ってその進化を検証してみた。
似て非なる新旧ディフェンダー
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新型ディフェンダーとの衝撃的な出会いの後、幸運なことに旧型ディフェンダーとの再会も果たすことができた。
新型だけを見ていたときは旧型の雰囲気が残っていると感じたのに、旧型と並べてみたらまったく似ていないことに気が付いた。ルーフ脇に設けられた細長い窓や横から見たシルエットなど、新型には旧型のオマージュが散りばめられてはいるものの、やっぱりまったくの別物である。おそらく決定的に違うのは全幅/全高の比だろう。旧型の独特なフォルムは全高に対して全幅が狭く、正面からの造形が縦長だが、新型はフェンダーがかなり張り出していて、縦長というよりは横長に近い。メルセデスはGクラスのエクステリアをフルモデルチェンジには見えないくらいいじらなかったが、“旧型へのオマージュ”という解釈がメルセデスとランドローバーとではすいぶん異なるんだなと思った。
この旧型は日本で限定正規販売された2002年式の「ディフェンダー110Td5」で、直列5気筒のディーゼルターボエンジンを搭載。オーナーは知人で、最近手に入れたばかり。いつ見ても綺麗に洗車されていて、「もっと汚したら?」とからかっている。
新型ディフェンダーが日本へ導入されるタイミングは知っていたようだし、そもそも数多のクルマがある中で、どうしてこれを選んだのかあらためて聞いてみた。
「自分で初めて買ったクルマがボルボ240だったんです。それで、クルマの機械的な側面に興味を持って、自分でいじることが好きになりました。以来、機械や道具としてクルマと向き合った時、こっちが求めていることにちゃんと答えてくれるかどうかが、クルマを選ぶ基準になりました。ディフェンダーには快適装備こそないですが、求めているものはすべてちゃんと揃っている。で、10年来ずっと探していたんです」
彼の言う通り、旧型のディフェンダーはクルマという名の道具みたいなもので、快適性や容易性はほとんど考慮されていない。でも、道具としてみれば機能性も性能も極上だ。デザインに関しても、誰かに見せて喜ばせるためではなく、機能を追求した結果ああいう形になっている。
で、旧型オーナーの目に、新型はどのように映ったのだろうか。
「新型はサイズさえ気にならなければ、最新の技術を詰め込んだ誰にでも乗れる至極快適なクルマに仕上がっているとは思います。ただそれが、旧型のオーナーが求めている姿なのかどうかはまだちょっとよく分かりません。やっぱり旧型のディフェンダーは旧型のままでしかあり得ないのではないでしょうか。だから正直に言えば、個人的に新型はディフェンダーとしてはナシですが、今のランドローバーとしてはアリなクルマだと思います」
せっかくなので少しだけ、旧型を運転させてもらった。まず驚いたのは乗り心地がいいこと。自分の記憶とは雲泥の差である。とても板ばねの乗り心地とは思えない。と、思わず彼に漏らしたら「板ばねは、ディフェンダーを名乗る前のモデルですよ (笑) 。ディフェンダーになってからはコイルばねです」と笑われた。どうやら自分が前に乗ったのはシリーズIIIあたりだったようだ。
当日は猛暑日で、吊り下げ式クーラーが役に立たないほどの暑さだったけれど、運転そのものはとても心地よかった。シンプルな構造の使い慣らされた道具は自分の手足になったように要望通り確実に働いてくれるからだ。
「そういえばつかぬことを聞くけれど、このクルマ、どこかに穴が開いてたりする?」
「ええ、開いてますよ(笑) 」
やっぱり穴は開いていた。
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