カーボンニュートラルとは、どんな状態を指すのか
菅義偉総理大臣が「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指す」という方針を語った。
カーボンニュートラルとは「人間や企業、社会の活動で人為的に発生する二酸化炭素(CO2)がプラスマイナス・ゼロである状態〟だ。2020年にEU(欧州連合)や中国、韓国も国家としてのカーボンニュートラルへの目標時期を宣言するようになった。菅総理の宣言も、こうした国際的な潮流に沿ったものだといえる。
では、どうしたらカーボンニュートラルになるのか。わかりやすい例は水素を使う方法だ。クルマのガソリンエンジンを使って説明しよう。
ガソリンは水素と炭素の化合物だ。水素の元素記号はH=ハイドロジェンであり、炭素はC=カーボンである。ガソリンエンジンは燃料の中のHとCを空気中の酸素=O(オクシジェンまたはオキシゲン)と高温で燃焼(化学反応)させ、そのときに発生するエネルギーを取り出してピストンを押し下げる。押し下げられたピストンの力でクランクシャフトを回し、燃焼エネルギーを回転運動に変換し、駆動力に使う。
このとき、ガソリンの中のHとCが余らないで、全部がエネルギー反応を起こせるだけの酸素があれば理想的だ。それが理論空燃比と呼ばれる数値で、ガソリンは燃料1グラムに対して空気14.7グラムである。このバランスで燃やせば理想的にエネルギーを取り出せる。酸素が多いと、燃焼に使われなかった酸素が空気中のN(窒素)と結合してNO2(二酸化窒素)などに姿を変えるほか、燃えないで残った炭素と結び付いてCO(一酸化炭素)になったりする。COは毒性が強い。だからガソリン中のHとCを使い切るだけの酸素で十分なのである。
しかし、エネルギーを発生した後の燃えカスのCはCO2になる。Hはほとんど燃えきってしまい、ごく微量がH2O(水)になったり、排ガス規制対象のHC(炭化水素)になるが、炭素はエネルギーを放出したあとで酸素と結合する。燃焼によって電子を放出しても原子核同士が残り、ひとつになる。
ガソリンの代わりに水素だけを使うとどうなるか。かつてマツダとBMWは、水素を燃料として利用するエンジンの研究を続けていた。炭素成分を含まない純粋なHは、燃やしてもCO2を排出しない。水素燃料でエンジンが運転できればカーボンニュートラルになる。
水素燃料の発展型として、水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池車(FCEV)がある。トヨタはミライを市販し、ホンダはクラリティFCEVを個人ユーザーにもリースで提供中だ。
水素を利用する場合、「どうやって水を作るか」が問題になる。
たとえば、理科の実験で行う水の電気分解は、電力を使って水(H2O)をHとOに分ける。だから「分解」と呼ばれる。このとき、風力や太陽光などの自然エネルギー(再生可能エンルギー)を使って発電した電力を使えば、カーボンニュートラルになる。石炭や天然ガスのような炭素を含む燃料を燃やす火力発電で電気を作ると、カーボンニュートラルにはならない。
風力発電、太陽光発電、太陽熱発電、地熱発電、水力発電、潮力発電といった「ものを燃やさない」発電が注目されている理由は、カーボンニュートラルになるからだ。では、ガソリンに代わる液体燃料を風力や太陽光発電だけの電力を使って作ることはできるだろうか。
生産・使用・リサイクル、すべての段階で火力発電に頼らない社会を目指す
答えはイエス。これが、いま注目されているe(イー)フューエルである。空気中のCO2を集め、そこからCを分離してHと結合させる。この行程をすべて再生可能エネルギーでまかなえば、できた燃料はカーボンニュートラルになる。その燃料を燃やして排出されたCO2は再びeフューエルの原材料になるから、炭素は使わないという理論だ。
バイオ燃料もカーボンニュートラル燃料である。植物はCO2を吸って育つ。その植物からアルコール系の成分を抽出したバイオフューエルは、たとえエンジンで燃やしてCO2を排出しても、それは「植物が育つために吸っていた分」であり、CO2の増加にはならない、という考え方である。
一方、カーボンニュートラルの点で優等生といわれているBEV(バッテリー電気自動車)はどうか。火力発電をいっさい使わないで発電した電力をBEVに充電すれば、それはカーボンニュートラルといえる。ただし、リチウムイオン電池のような高性能電池の製造にも電力を使う。BEVを1台生産するとき、最も大量のエネルギーを使うのが電池生産だ。
多くの研究機関の試算で、ガソリン車1台を作るときのエネルギー消費よりも、BEVを1台作るときのエネルギー消費のほうが多い実情がわかっている。BEVを完全にカーボンフリーにするには、電池製造のための電力をすべて再生可能エネルギーにする必要がある。
カーボンニュートラルとは、何かの製品が製造される過程、その製品が世の中で使われる過程、そして役目を終えて解体処理される過程のすべてでCO2排出ゼロでなければならない。この技術はまだ世界に存在しない。多くの場合は使用段階だけのCO2排出量を見て「カーボンニュートラルだ」と判断されている。
現在、日本にはグリーン購入法という法律があり、自治体や企業はなるべくCO2排出量の少ない製品を選ぶよう推奨されている。また、クルマには燃費規制が設定されており、この目標値も次第に高くなっている。こうした点では、日本も少しずつカーボンニュートラル社会へと動きつつあるといえる。
世の中の活動すべてをカーボンニュートラルにするには、技術的ハードルはまだまだ高い。この状況は世界各国ともに共通だ。日本だけが遅れているのではない。また、欧州だけが進んでいるという状況でもない。だから技術革新が求められている。
この分野に研究・開発のための資金が流れているのは、カーボンニュートラル技術が確実にビジネスになるためだ。世界中でファンドやコンサルティング企業が活発に動いている。最後はすべてビジネスに結び付いていく。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
新型「クラウンパトカー」発見にSNS騒然!? 発売から2年 そもそもパトカーとして“使える”のか?
299万円!? トヨタ「ランクル250」が手に届きやすい価格に? 「VX(新車545万円)」を月々抑えて買う方法とは
“約214万円”からのトヨタ「新型SUV」正式発表! 「RAV4」サイズの快適モデル!? 25年3月に「bZ3X」発売、衝撃価格で中国に投入
11月1日から装着義務化されたバックカメラは一度味わったらもう手放せない! 1000円台から買える後付けカメラって大丈夫!?
スズキの「“2階建て”軽バン!?」公開! 斬新“横開き”式で「4人も寝られる」!? タフ仕様もカッコイイ“エブリイ”「スマイルファクトリー オフタイムBASE」お台場で実車展示
ナンバープレートは個人情報じゃないけどネットで写真を出しても問題なし? 議論百出のナンバー晒し問題をオフ会の達人が法とマナーから考える!
「やっと来たか!」ホンダ『CB750ホーネット』日本発売決定に、SNSで膨らむ期待
「バスが発進しようとしたので、急いで前に詰めたら、鳴らされました。運転手は懲戒処分ですよね?」質問に回答殺到!?「常識外れ」「もう運転やめてくれ」の声も…法律では誰が悪いのか
「右車線ずっと走って何が悪いんですか?」質問に回答殺到!?「捕まるよ」「違反です」の声も…投稿者は「後ろから煽るほうが悪い!」と主張 法律ではどちらが正しいのか
マツダ「3列シートミニバン」復活する!? スライドドアの新型「ビアンテ」「プレマシー」はあり得る? 待たれる「“魂動”ミニバン」登場の可能性とは
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
世界的で売れてるのは圧倒的に燃料車
実はHV系は、世界販売の半分が日本向けなんだよね。
世界で日本市場は1割程度なのに、HVの半分がそこで売れてる。
今の日本人は外国を見ないから煽られて、お人よしだよね。
中国が35年までに完全電化を宣言したらしいが、数千万台からあるのに、どこから電力を持ってくるつもりなのかね
→ 欧州なんか法で後押ししようとしてるけどたぶん無理、いずれ後退せざる得なくなるだろう。
スマホみたいな数万の安価品じゃないから
儲けが出なきゃ産業界からは総スカン
核防止条約みたいなもので、都合が悪くなれば平気で撤回されるよ
EV系は今は買いたい人が買えばいいだけ。
今の車大事にします。