昨年度に最優秀賞を手にした匠が製作
4代目にあたるマツダ・ロードスターをベースにワンオフボディキットを装着した『SD-1』を覚えているだろうか。富山県にオフィスを構える「SANO DESIGN(サノデザイン)」が手がけたコンセプトカーで、2018年の東京オートサロン・ドレスアップカー部門で最優秀賞を受賞している。その同社があらたにトヨタ86をベースに製作した『86Future Sports(フューチャースポーツ)』を披露した。
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一見するとヨーロッパ系のスーパーカーフェイスだが、ベースはトヨタ86。会場を訪れた多くの人も、「後ろを見るまで86とわかりませんでした」というほどの作り込み。今回、出展されたモデルは「乱人(ランド)&K-one Racing×SANO DESIGN」のコラボレーションによって完成した1台である。
デザインを手がけた「SANO DESIGN」代表取締役社長の佐野雅幸さんに話を伺ってきた。昨年はマツダ・ロードスターを手がけた同社だが、なぜ86をベース車両に選んだのか訪ねると「今回製作にあたり、K-one Racingさんと乱人さんの協力がなければ実現しませんでした。車両は、K-one Racingさんが現役で使用しているジムカーナマシンをベースに製作を致しましたが、競技車を作るにあたり、いかにもレースカーというよりは、スーパーカーのようなルックスのクルマを出したら面白いのではないか? というのがスタート地点でした」と話す。
ジムカーナに参戦しているマシンということもあり、スペシャルチューンのエンジン(3S-GT型2リットル直4ターボ)を搭載。機能面(熱対策や空気抵抗)も含めてこの形になったという。佐野さん自身もスーパーカーのようなルックスとコメントしているように、ぱっと見が日本車らしくないデザインだが、コンセプトについて聞いてみた。
「欧州のスーパーカー、スポーツカーを意識しています。例えばイギリスのマクラーレンやフランスのブガッティ。昨年は(SD-1)イタリア車をモチーフにして仕上げましたが、今回はイタリア以外のテイストのクルマをモチーフにして、あえて流行のオーバーフェンダーではない造形で作り上げました」と言う。
よく見ればレーシングカーのような空力を意識したデザインだが、両サイドのフェンダーはエッジのきいたラインが2本流れており、膨らみを見せることで車幅感覚を掴みやすい。ジムカーナーのようなパイロンコーンを目がけて走るようなシチュエーションには重要な要素。さらに、エッジ効果が出て鋭く張り出したフロント周りは文句なしに格好良い。
「デザインイラストは2週間ぐらいかかりましたが、作りながら変更するところが多くてその都度変わっていくことが多かったですね。今回の拘りはなんと言っても、フロントフェイスです。ボンネットからノーズまで一体で、両サイドのフェンダーの中は空洞になっています。これは、空気を取り入れるような冷却効果もあります。 また、SD-1に続く、エンジンフードはアクリルパネルを採用しています。エンジン見える=サノデザインの特徴と思われている部分もありますね。フェンダーフィンの形状は、実はそのままリア周りにも持ってきています。うまく空気を流す手法を取り入れています。リアは、一つの大きな造形の中にバンパーがあるというイメージです」と佐野さんが語る。
聞けば、元々はSD-1同様に赤いボディカラーを纏う予定だったが、もう1台出展しているランチア・デルタ(世界ラリー選手権のグループAカテゴリーで1987年から1992年まで6年連続でマニュファクチャラー・チャンピオンシップを制覇した市販モデル)と色がかぶってしまうことから色映えのする青を選んだとのことだ。
今回は埼玉県にある畑野自動車が持ち込んだランチア・デルタのボディワークを担当したのも佐野さんだという。元々デザインは決まっており、フロントドア意外は全てFRPで作り替えているというのだから驚きだ。「幅ありきだったので、とても難しかったですね。ブリスターフェンダーは特にデザインバランスを取るのが大変なので・・・・・・」と語る。 ちなみに、このランチア・デルタ・フェニックス105は、東京オートサロン2019の国際カスタムコンテスト・インポートカー部門優秀賞を獲得している。
会場ではランチア・デルタは「おっさんホイホイ」となっていたが、『86 Future Sports』は若者ウケが良く、小さい子供がスマートフォンを片手にパシャパシャと写真を撮っている事が多かった。なにより外国人が「Nice car!」と言っていたのが印象的だった。
そして気になるのは、SD-1に続く『86 Future Sports』の量産化だが、すでに2号車と3号車の話はいただいているとのこと。「改善しなければならないところがいくつかありますが、それも含めて楽しみにしててください」と言うが、すでに頭の中は来年の東京オートサロン計画を練っているようだ。
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