BMWのEVテクノロジーを「空」に活かす
BMWの出自は、言わずと知れた航空機エンジンメーカーだ。かつて飛行機を天空高く舞わせるための原動力をつくっていたBMWが、ウイングスーツを作る。それはつまり彼らにとっての原点回帰と言えるのかもしれない。
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BMWのeモビリティ向けサブブランド「BMW i」が開発するのは、ウイングスーツ用の電動システム。独自のeDriveテクノロジーをもとに、オーストリア人ウイングスーツパイロット、ピーター・ザルツマンとタッグを組み実現を目指している。33歳のザルツマンは、スカイダイビングのプロフェッショナル。インストラクターを務める傍ら、映画のスタントや飛行ショーなどでも活躍する人物だ。
カーボン製プロペラを2基設置
2013年のi3導入以来、BMWは長年EV開発の技術を磨き続けてきた。そうして作り上げたパワフルかつ軽量、コンパクトな電動パワーユニットの応用として、今回発表したのがウイングスーツというまったく新しいプロダクトであった。
飛行用ユニットには2基のカーボン製プロペラ「インペラー」を採用。それぞれの出力は7.5kWで、毎分およそ2万5000回転、約5分間駆動することができる。オーストリアの山で敢行した初飛行までに、約3年の開発期間を要したという。
飛行速度は300km/h超に達する
電動のツインプロペラ駆動システムと蓄電ユニットはウイングスーツの前側へ装着。空力性能面に関しては、ミュンヘンにあるBMWグループの風洞試験設備を活用して実験を行った。
ザルツマンは崖上や飛行機からウイングスーツで飛び立つ際に、腕と足の間に張った布をピンと広げて、パラグライダーの要領で飛行する。その際の飛行速度はおおよそ100km/h超。一方、BMW iの電動ウイングスーツを着用した場合には、飛行速度は300km/hに達することになるという。
標高3000mからの初フライト
BMW iの電動ウイングスーツによる初飛行は、ザルツマンのホームグラウンドであるオーストリアの山で行われた。2名のウイングスーツパイロット同行のもと、ザルツマンはヘリコプターでスタート地点に到達。3人は標高3000mからフォーメーションを組んで山稜を羽ばたいた。
3名による飛行の様子は公式YouTube上で公開されている。同時にヘリコプターから出発した3名は最初同じペースで飛行しているが、電動ウイングスーツを着用したザルツマンが「インペラー」を始動した瞬間、他2名のパイロットを置いてぐんぐんと加速。大きく弧を描きながら空を駆け上がっていく様子は迫力満点だ。しばらくして取り決め通りの地点で合流した3名は、パラシュートを開き無事に地上へと着陸した。
初飛行を成功裏に終えたザルツマンとBMW iの専門家は、世界初の電動ウイングスーツのさらなる開発を続けていくという。BMWの電動テクノロジーが、道路だけでなく天空でもそのポテンシャルを発揮する日はそう遠くないかもしれない。
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