現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則166】アルファ159は「156」とは異なるキャラクターの持ち主だった

ここから本文です

【ヒットの法則166】アルファ159は「156」とは異なるキャラクターの持ち主だった

掲載 更新 2
【ヒットの法則166】アルファ159は「156」とは異なるキャラクターの持ち主だった

アルファ159は、大ヒット作となったアルファ156の後継として、2005年のジュネーブオートサロンでデビューした。その半年後に欧州で販売開始、2006年早々に日本でも販売が開始された。日本にはまず2.2JTS+FF+6速MT+右ハンドル仕様が上陸した。当時アルファ159はどのように受け入れられたのか。日本上陸直後の試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年4月号より)

FRのような空間デザイン、ムード作りは本当に上手い
「フェンダー部分が最大幅」という、なんともダイナミックなフロントからの眺め。そんなフロントビューでの最先端中央部に誇らしげに輝くのは、ますます大型化された盾型グリル。そしてそのグリルの上部から左右に細く伸びた彫りの深い空洞の中に並べられるのは、精緻な3連シリンダー型をしたフロントライトユニット。ついに新着なったアルファ159の「ジウジアーロとアルファロメオのデザインセンターのコラボレーションによる」というそのスタイリングは、大胆かつ躍動的なプロポーションをとっても、ディテール部分に目をやっても、まさに文句なしのカッコ良さだ。

【くるま問答】アイドリングストップ機能はよいことばかりではない。OFFスイッチはいつ使う?

こうして、159がその周辺を取り囲む多くのライバル車たちに比べてもより一層のダイナミズムと存在感を放つ要因のひとつは、ボクはこのクルマが「どこをとってもFF車離れをしたルックスの持ち主」であるからだと考える。ロングノーズにスモールキャビンというこのクルマの基本プロポーションは「ノーズ部分は可能な限り短く、一方でキャビンはできるだけ大きく」という合理精神に基づいた一般的なFFレイアウトとは全くの正反対だ。

そう、こんなカッコつけのパッケージングからまずはクルマづくりに取り掛かるというところからしてが、いかにもアルファロメオの作品たるところなのである。

そんな159のドアを開き、ドライバーズシートへと腰を下ろして、今度はインテリアの雰囲気を味わってみる。ゆったりと脚を前方へと投げ出すドライビングポジションも、大型のセンターパネルがドライバー側へと強く捻られたダッシュボード周りの造形も、やはり「アップライト気味に座って強い広々感が味わえることが特徴」という一般的なFFの謳い文句とはほど遠い。

特に、パワーパック横置きのFF車では度々耳にする「足元スペースがすっきりと広い感じ」は、このクルマではまったく認められない。むしろ、BMWのようなフロントミッドシップのレイアウトを意識した囲まれ感すら受ける。

こうして、確信犯的に随所で「FFモデルであること」に背を向けた各部のパッケージングを採用する159ではあるが、しかしキャビン空間がそれなりにゆったりと感じられるのはボディサイズが大きいからだ。全長×全幅4690×1830mmというサイズは、156に比べるとそれぞれ255×65mmも拡大している。

110mm延長されて2705mmとなったホイールベースは、もはや兄貴分である166シリーズを追い越そうという値。159の室内が広いというのは当たり前なのだ。

それにしても、アルファロメオというのはどうしてこれほどにインテリアのムード作りが上手いのだろう。シートやドアトリムに「Alfatex」なるスエードばりの人工皮革の新素材を採用したモデルも、教科書通りに天然のレザーを用いたモデルも、その風合いや色合いがちょっとゴージャスで、かついかにも活動的という独特の雰囲気を醸し出す。丸型の空調吹き出し口やサブメーターを配したセンターパネルのデザインも、もはやアルファロメオ車の定番という、いかにもスポーティなイメージだ。

樹脂パーツを中心とした各部の素材感は必ずしも一級品とは言えない部分も見受けられるが、メカニカルなムードを演じるのはとても上手い。アルファロメオオーナーの中には、走らせる以前の段階でそんな見せ場に「やられてしまった」という人も少なくないのではなかろうか。なるほど、159のインテリアデザインを目にすると、ついフラッとアルファを欲しくなってしまうという人の気持ちがよく理解できる。

乗り味は優しくなったがアルファ独特の感覚は健在
日本に上陸した159は、まずは2.2Lエンジンを搭載した左ハンドル仕様の6速MT車、2.2JTSのみ。すでにヨーロッパ市場ではリリース済みのV6エンジン車や、「現在開発中」という2ペダルMT「セレスピード」採用車、さらには右ハンドル仕様車なども、間もなく追っての日本上陸になるという。

サイズを増した159の車両重量は、156 2.0JTSと比べると270kgほど増しの1570kg。そこに搭載する2.2Lの直列4気筒エンジンは、最高出力185ps/最大トルク230Nmと発表されている。この出力値を156 2.0JTSと比較すると、それぞれ19ps/Nm増しという計算となる。

予想よりもストロークが長めのシフトで左上の1速を選択し、クラッチをエンゲージしてスタート。ちなみにそんなクラッチは全ストローク量が大きめである一方、いわゆる半クラッチの領域が逆に短め。うっかりすると意図しない急発進になりやすく、ややコツを要する印象だ。

スタート時の力強さはまずまず満足のいくレベル。エンジン出力に対して車両重量がやや重めなので、加速の軽快感は飛びぬけているとは言い難いが、それでもひとたび走り出してしまえば各ギアポジションでの加速の伸び感は好印象。クロスレシオの6速ミッションも効いている。

一方、 アルファサウンドを期待する人にとっては、高回転まで引っ張った際のその音色はちょっと物足りないものかもしれない。決して不快にこもったりすることがないのは幸いだが、同時に156のそれのように「もっと回して!」というメッセージが込められたような官能度には乏しいと言わざるを得ない。

アクセルペダル踏み込み時のレスポンスは悪くはないのだが、逆にアクセルオフ時の回転落ちが鈍いのは軽快感の演出という点では損をしている。エクステリアデザインに見合った、よりダイナミックな動力性能を求めたいというのであれば、間もなく上陸という3.2LのV6モデルを待つべきかもしれない。

ボディの剛性感はさすがは最新のモデル。どんな凹凸路面を乗り越えてもミシリとも異音を発しないのは、内装各部の 建て付けの良さを含め、乗る人にボディの高いしっかり感を印象づける重要なポイントだ。

走りのフラット感はまずまず。細かな路面凹凸の乗り越えから大きなアンジュレーションのいなし方まで、このクルマの乗り心地を「悪くない」と評する人は少なくないだろう。が、156に比べると路面への当たり全般が優しくなったそんな乗り味を、「アルファらしい」と受け取れるかどうかはまた別問題だ。

アルファロメオは156よりもグンと大型化した159に、「より高級車らしい乗り味」というものを意図したのかもしれない。しかし、特にこれまでの「アルフィスタ」の人々は、そうした部分を好意的に受け取るか否か……。端的に言えばそうしたマイルドさを得たのと引き換えに軽快感を失ったのが、159のフットワークの感覚だからだ。

一方、相変わらず徹頭徹尾アルファらしいと思える部分は、いかなるシーンでもアンダーステアを感じさせないという、これもまたFFレイアウトをとるモデルとしては例外的なまでの、その奥の深いハンドリングのテイスト。こちらは、156でお馴染みだったあの感覚を見事に受け継いでいる。ただし、それでも動きのシャープさという観点では、やはり156からのある程度の後退感は否めないのだが。

アルファ159は、156に比べると、「より豪華に、よりゆったり」と大人びた走りのテイストの持ち主へと変わっている。それを「進化」と受け取れる人にとっては、もはや156というのは「過去のモデル」と言えるだろう。

しかし、156が備えていたあの軽快な走り味こそがアルファの美点のひとつだと考える人にとっては、今度の159が備えたゆったりとした動きのイメージは、ちょっと納得いかないものかもしれない。156とは似て非なるそんな走りのキャラクターの持ち主が、159というモデルでもあるのだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年4月号より)



アルファロメオ アルファ159 2.2JTS(2006年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1830×1430mm
●ホイールベース: 2705mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2198cc
●最高出力:185ps/6500rpm
●最大トルク:230Nm/4500pm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:399万円(2006年当時)

[ アルバム : アルファロメオ アルファ159 2.2JTS(2006年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

新型バッテリー電気コンパクトSUV! トヨタが新型アーバンクルーザーを世界初公開
新型バッテリー電気コンパクトSUV! トヨタが新型アーバンクルーザーを世界初公開
バイクのニュース
まだ装着してないの? 「雪降り始めたよ?」 覚えておきたい「冬タイヤ」の違い! イマ「履くべきタイヤ」とは
まだ装着してないの? 「雪降り始めたよ?」 覚えておきたい「冬タイヤ」の違い! イマ「履くべきタイヤ」とは
くるまのニュース
マジで「その要求」は無理っす……レンタカー店スタッフが実際に遭遇した迷惑客3選
マジで「その要求」は無理っす……レンタカー店スタッフが実際に遭遇した迷惑客3選
ベストカーWeb
われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
Auto Messe Web
2025最新版《アルファード&ヴェルファイア》ズバリ! “買い”のポイント
2025最新版《アルファード&ヴェルファイア》ズバリ! “買い”のポイント
グーネット
ヴィンテージ・デニムの風合いで個性をアピール!日産の人気6モデルに特別仕様「ビームスエディション」が誕生
ヴィンテージ・デニムの風合いで個性をアピール!日産の人気6モデルに特別仕様「ビームスエディション」が誕生
Webモーターマガジン
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
レスポンス
「えっ…!」この道「ウインカー」出す? 出さない? 真っ直ぐも行ける「道なりカーブ」どうする!? 「正解」の曲がり方とは
「えっ…!」この道「ウインカー」出す? 出さない? 真っ直ぐも行ける「道なりカーブ」どうする!? 「正解」の曲がり方とは
くるまのニュース
ベン・キーティングがWEC復帰、小泉洋史は外れる。コルベットZ06 GT3.Rのラインアップ確定
ベン・キーティングがWEC復帰、小泉洋史は外れる。コルベットZ06 GT3.Rのラインアップ確定
AUTOSPORT web
パイセンに続け!! 将来はトヨタで[WRC]のシートを掴むかもしれないラリードライバーの卵 
パイセンに続け!! 将来はトヨタで[WRC]のシートを掴むかもしれないラリードライバーの卵 
ベストカーWeb
ヒョンデの新型EV『インスター』、東京オートサロン2025で日本初公開へ
ヒョンデの新型EV『インスター』、東京オートサロン2025で日本初公開へ
レスポンス
クルマのホーンボタンには「ラッパのマーク」がないと違反! なんと「有名薬のラッパのマーク」を切り貼りしても「手書き」でもOKってマジか!!
クルマのホーンボタンには「ラッパのマーク」がないと違反! なんと「有名薬のラッパのマーク」を切り貼りしても「手書き」でもOKってマジか!!
WEB CARTOP
ブランドイメージ構築に課題? レクサスLBX 長期テスト(5) モデルの強みはNXと共通
ブランドイメージ構築に課題? レクサスLBX 長期テスト(5) モデルの強みはNXと共通
AUTOCAR JAPAN
[15秒でわかる]ブガッティの特別なガレージと展示台
[15秒でわかる]ブガッティの特別なガレージと展示台
レスポンス
実質約445万円で買える ホンダの燃料電池車[新型CR-V e:FCEV]は本気で買いたくなるほどのデキだったのか? 
実質約445万円で買える ホンダの燃料電池車[新型CR-V e:FCEV]は本気で買いたくなるほどのデキだったのか? 
ベストカーWeb
6速MTあり! ミツオカ最新「ビュートストーリー」がスゴい! 全長4m「ちょうどいいボディ」に超レトロデザイン×「豪華インテリア」採用! 「小さな高級車」どんなクルマ?
6速MTあり! ミツオカ最新「ビュートストーリー」がスゴい! 全長4m「ちょうどいいボディ」に超レトロデザイン×「豪華インテリア」採用! 「小さな高級車」どんなクルマ?
くるまのニュース
レッドブルのジュニアチームで5年目を迎える角田裕毅。ホーナー代表、2025年末で手放す可能性を示唆も、昇格も否定せず
レッドブルのジュニアチームで5年目を迎える角田裕毅。ホーナー代表、2025年末で手放す可能性を示唆も、昇格も否定せず
AUTOSPORT web
軽自動車サイズの布製タイヤチェーン「モビルシュシュ」が一般販売開始
軽自動車サイズの布製タイヤチェーン「モビルシュシュ」が一般販売開始
レスポンス

みんなのコメント

2件
  • アルファの皮を被ったアメ車
  • 159シリーズの問題は、フロントドアより前を156,ブレラ、スパイダーと共通化し過ぎで、手抜きをユーザーに見破られてるから。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

402.0565.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0245.0万円

中古車を検索
159 (セダン)の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

402.0565.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0245.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村