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【国産旧車再発見】117クーペ譲りの強心臓、国産初のGTがRヘ昇華した瞬間。1970年型いすゞ・ベレット1600GTR

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【国産旧車再発見】117クーペ譲りの強心臓、国産初のGTがRヘ昇華した瞬間。1970年型いすゞ・ベレット1600GTR

自社開発によるベレルが商業的に失敗すると次なるベレットで起死回生を図ったいすゞ。生まれながらのスポーティさを進化させた国産初のGT、1600GTはレースでも大活躍。そしてその"ベレG"には、最終兵器が用意されていた。

117クーペ譲りの強心臓、G161W型エンジンを搭載したベレット最強のパフォーマンス

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いすゞは戦前からトラックなどの生産を続けてきた日本最古の自動車メーカー。戦後もトラックの生産を続けるなか、イギリスのルーツグループと業務提携。ヒルマン・ミンクスのノックダウン生産を始めたのは1953年のこと。当時、国内の乗用車ニーズは大半がタクシー需要であった。未舗装で悪路が多かった当時の日本で、ヒルマン・ミンクスは走破性、乗り心地を両立させていたことで評価を受け、ライバルである日野ルノー4CVとともに戦後日本の復興期を支えた。

ヒルマン・ミンクスのノックダウン生産は当初、全てのパーツをイギリスから輸入していた。だが、特殊な道路事情の日本では独自の改良が必要で、順次パーツの国産化を進める。純国産化が実現したのは1957年のことで、わずか4年の間に乗用車生産のノウハウを得たとも言えた。この技術と、ルーツグループとの提携が切れることを背景に、いすゞは初の自社開発セダンであるベレルを生み出す。

だがベレルは商業的に成功したとは言い難い。この失敗を乗り越えて開発されたのがベレットであり、タクシー需要よりオーナーカーであることを重視し、エンジン排気量を1.5リッター以下として開発された。

ベレットが優れた小型車として評価されたのは、シャシー性能の高さだ。リジッドアクスルが一般的だった時代にダイアゴナルリンクによる後輪独立懸架サスペンションを採用。フロアシフトによるスポーティな操作性と相俟って、当時の日本では希薄であったスポーツドライビングを根付かせることになる。

しかし優れたシャシー性能があっても、ライバルのパワフルなエンジンには敵わない。そこで1964年に排気量を1579ccに拡大した2ドアクーペモデルで、国内初となる『GT』を追加発売する。ツインキャブレターや圧縮比アップにより1500の68psから88psへと向上。さらに1966年のマイナーチェンジでは1584ccまで排気量を拡大し、90psに達する。同時にトランスミッションを改良してフルシンクロ化。操作性を大きく向上させた。

実に'64年はプリンスからスカイラインGTが発売された年であり、"スカGかベレGか"というのがマニアの間で話題になったもの。レースではスカイラインの圧勝だったが、軽くて小柄なベレットは一般道でスカイラインに立ち塞がった。1969年にはOHVだったエンジンをSOHC化し、この年いすゞは鈴鹿12時間耐久レースにベレットGTXという名のマシンをエントリーさせる。1968年に発売したいすゞ117クーペのエンジンを搭載したスペシャルマシーンで、初陣にも関わらず優勝を遂げる。このGTXを市販化したものがベレットの最終モデルで、今回取り上げた『GTR』だ。

【写真18枚】G161W型エンジンを搭載したベレット最強のパフォーマンス、いすゞ・ベレット1600GTRの詳細を写真で見る

私も今から40年ほど前の小学生時代、117クーペに恋い焦がれたものだったが、ベレットのことはずっと後になってから知った。現在70代半ばになる叔父から「若い頃はベレGに箱乗りしてな……」というエピソードを聞いて興味を持ったのが最初。そのためベレット通からすれば完全な門外漢なわけだが、初めて接した時の記憶は鮮烈なものだった。

取材の場でオーナーの横に乗せていただいた。エアクリーナーが外されたソレックスの男らしい吸気音が室内に響く。固められた足まわりとクイックな操縦性は、1960年代の国産車であることを忘れさせてくれるほどコーナリングマシーン然としている。後に乗った117クーペの鷹揚な乗り心地とは比べ物にならないほどスポーティだった。

4mほどのコンパクトなボディと1.6DOHCエンジンが生み出すスポーツ性

今回、改めて借り出したのはいすゞ車の専門店『ISUZUSPORTS』がデモカーとしてレストアを施した1台。オリジナル開発したエグゾーストマニホールドとマフラー、サスペンションを装備しているが、肝心のエンジンはノーマルスペック。内外装も純正を保ったままという好ましい状態だ。

キーを渡されイグニッションをONにすると、あの懐かしい吸気音とともに目覚めてくれた。DOHCだからアイドリング程度の回転数では気難しいのでは?という先入観があったが、クラッチを繋ぐと意外なほどスルスルと前に出てくれる。呆気ないほど普通に運転できるのは、軽くて小さな車体によるものだろう。

当初の扱いやすい印象は、エンジン回転数が4000r.p.m.を超えると、それまでとは打って変わって俊敏なレスポンスとパワーの盛り上がりを感じる。事前に「低速を犠牲にして高回転向けのセッティングにしてあります」と聞いていた通りの印象。確かに3000r.p.m.以下で走ると際立ったところはないが、それ以上の回転数になって初めて、このエンジンの素性が現れる。

4輪独立懸架式サスペンションは、パワフルなエンジンを受け止めつつしっかりしたストロークと減衰力を発生。無駄な突き上げは感じず、コーナーで踏ん張る姿勢はスポーツカーそのもの。始めにグッと沈み込んだサスペンションは一定の位置で落ち着き旋回性が高まる。そのままスロットルペダルを踏んでいくと理想的なラインをトレースしてくれるのだ。

軽くて手頃な1.6リッタースポーツというと、その後のAE86やシビック&CR-X辺りが世代的にピッタリ。けれどベレットGTRに乗ると、それらの車種が霞んでしまうほどだ。確かにコーナリングスピードや加速力では負けてしまうだろう。けれどエンジンからパワーを引き出す感覚や、コーナー手前からコーナリング中のコントロール性はずっと楽しい。エンジンやトランスミッション、ステアリングなどの操作系に何も介在するものがないダイレクトさは、この時代のクルマならではの美点。そこに軽量パワフルな車体構成なのだから、楽しくないはずがない。

いすゞは117クーペをピアッツァへ進化する過程で、ベレットをジェミニにモデルチェンジしている。そのジェミニもFRからFFへと転換してしまい、小さな後輪駆動車がなくなってしまった。改めてベレットに乗ると、その歴史を嘆かわしく感じてしまうのだ。

【specification】いすゞ・ベレット1600GTR(1970年型)
●全長×全幅×前高=4005×1495×1325mm
●ホイールベース=2305mm
●トレッド(F/R)=1260mm/1240mm
●車両重量=970kg
●エンジン形式=水冷直列4気筒DOHC
●総排気量=1584cc
●圧縮比=10.3:1
●最高出力=120ps/6400r.p.m.
●最大トルク=14.5kgm/5000r.p.m.
●変速機=4速M/T
●懸架装置(F/R)=ダブルウイッシュボーン/ダイアゴナルリンク式スイングアクスル
●制動装置(F/R)=ディスク/ドラム
●タイヤ(F&R)=165-HR13
●新車当時価格=111万円

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みんなのコメント

9件
  • 格好いいな
  • サイドブレーキがステッキだっけ?
    大学の寮に置いてあったな
    当時でも珍しかったけど、あれば30万円ぐらい
    KP61 が検2年付きで20万円で買えた時代
    バイトで買えた。
    むしろ2ストバイク新車買うのに周りは苦労してた

    エアコン? そんなものお大尽車にしか付いてなかった
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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