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「感性」で買うスーパーカー マセラティMC20 長期テスト(1) 心を鷲掴みにする優美な容姿

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「感性」で買うスーパーカー マセラティMC20 長期テスト(1) 心を鷲掴みにする優美な容姿

スーパーカー界におけるMC20のポジション

マセラティMC20のオーナーズマニュアルをめくっていると、「クルマを理解する」という項目が15ページ目から始まる。約20年ぶりにこのブランドが生み出したスーパーカーの、複雑なメカニズムを学ぶことができる。

【画像】心を鷲掴みにする優美な容姿 MC20 最新の電動マセラティ 2004年のMC12も 全128枚

1950年代のレーシングカー、マセラティ250Fに影響を受けたという色っぽいフロントノーズを保護する、ノーズリフト機能の使い方はわかりやすい。10km/hを過ぎた辺りで聞こえる、カチッという小さな音は、ABSの自己診断に伴うものらしい。

カップホルダーの安全な使い方まで、説明されている。マセラティのトリセツでは共通することだが、とても興味深い読み物だと思う。

MC20が、2024年のスーパーカー界でどのようなポジションにあるのか。それを理解することは、分厚いマニュアルを読破しただけでは把握できない、ややこしい問題といえる。それが、今回AUTOCARの長期テストへ加わることになった理由だ。

富裕層も少なくないロンドンでは、フェラーリやランボルギーニと頻繁に出会う。ところが、トライデントのロゴを掲げた美しいMC20は、発売から3年が経過するものの、筆者は1度しか目撃していない。

それは、別の自動車媒体のスタッフが飛ばす、広報用車両だった。英国の登録台数を調べると、フェラーリ296 GTBは277台が2023年に売れている。しかしMC20は、その5%にも満たないようだ。

スペック上の数字競争から一歩引いた姿勢

恐らく、MC20を購入できる恵まれた人々は、このマセラティを深くは理解していないのだろう。スペック上の数字競争から一歩引いた姿勢が、大きく影響しているように思う。そしてこの事実が、自分をこのスーパーカーへ強く惹き付ける。

一般的に、過度な馬力や最高速は、現実世界では期待ほど役に立たないことが多い。それを追求しなかったのは、プロダクトに対する自信の表れといえるだろう。

とはいえ、ミドシップの娯楽アイテムへ22万ポンド(約4224万円)以上も費やせる人にとって、数字は重要な指標になる。同郷のライバルより最高出力が200ps近く低いことは、見逃せない弱点になり得る。

296 GTBのように、鋭敏なアクセルレスポンスを叶えハイテク感を演出する、ハイブリッド技術が盛り込まれているわけでもない。MC20はカーボンモノコック・シャシーを採用するが、マクラーレン750 Sより車重は軽くない。エンジンは2気筒少ないのに。

最新のランボルギーニ・テメラリオは、V8エンジンのハイブリッドで、最高出力は920psがうたわれる。多くの要点を満たし、富裕層を誘惑するはず。電動化へのシフトが進む中で、過去にないほどスーパーカーの競争は熱気を帯びている。

競合に並ぶ価格 小柄なサイズが機敏さを想起

他方、MC20の英国価格はライバルに並ぶ。長期テスト車両は、オプションを付けて31万735ポンド(約5966万円)に達していた。

カッコいいカーボンファイバー製のボディトリムやエンジンカバーは、ファッション性が強いものといえるが、それを省いても26万ポンド(約4992万円)。ちょっと深呼吸したくなる金額だ。しかし数字に囚われていては、本質を見逃してしまう。

ガルウイングドアを開けば、アップル・カープレイへ対応した、大きな液晶モニターが2面現れる。キャビンの人間工学も素晴らしい。

車内の雰囲気は、1980年代の耐久レーサーのよう。もうすぐ登場するMC20 GT2が、モータースポーツとの結びつきを強化することになるだろう。

ボディサイズは、機敏なジェット戦闘機をイメージさせるように小柄。着座位置は低いが前方視界は広く、路面がお尻の直下を流れていくような感覚を抱ける。若干強固さが足りないように思えるカーボン製シートも、このクラスとしては大柄で、座り心地が良い。

最高出力はライバルに劣っていても、もちろんめっぽう速い。0-100km/hではなく、0-161km/h加速は6.5秒。ツインターボのブーストが効くと、630psではなく、830psあるように感じられる。

心を鷲掴みにする落ち着いたスタイリング

サスペンションは、惚れ惚れするほどしなやか。構えることなく、普段使いできるスーパーカーだ。ソフトということはないものの、ライバルとは異なるアプローチにある。

ある程度の慣れは必要ながら、筆者はすぐに親しくなれた。アルピーヌA110と比べたくなる、特長があるように思う。どちらも清々しいほど流暢で、ドライバーがクルマと意思疎通しやすい。

優雅なスタイリングも、筆者の心を鷲掴みにしている。アグレッシブな488 GTBから、有機的な造形の296 GTBへシフトした、フェラーリのデザインも素晴らしいと思う。だが、MC20は異なる次元にある。落ち着いた中に、他を威圧するような凄みがある。

スリークなスタイリングには、どこかクラシカルな趣が共存している。リアのプロポーションはたおやかで、過剰さはなく、大きくえぐられたサイドも煩雑には感じられない。走り込んだ後に付着した汚れすら、優美さを引き立てる要素に見える。

セカンドオピニオン

MC20は、価格や数字で選ぶスーパーカーではない。筆者も、レーンに同意する。自分の感性で買うスーパーカーだといえる。

街なかでの反応はイイ。多くの人が笑顔でスマートフォンを向けて撮影し、子供は目を輝かせ、ドライバーは道を譲ってくれる。英国人は、派手好きな金持ちとは違う人間が運転するクルマだと、理解しているようだ。 マレー・スカリオン(Murray Scullion)

テストデータ

英国価格

モデル名:マセラティMC20(英国仕様)
新車価格:22万2025ポンド(約4263万円)
テスト車の価格:31万735ポンド(約5966万円)

オプション装備

エクステリア・カーボン・パッケージ:3万6240ポンド(約696万円)
ジャッロ・ジェニオ塗装:9650ポンド(約185万円)
ライトウエイト・モノコック・レーシングシート:5900ポンド(約113万円)
カーボンファイバー・エンジンカバー:4855ポンド(約93万円)
バードケージ20インチ・アルミホイール:3840ポンド(約74万円)
ソナスファベール・サウンドシステム:3750ポンド(約72万円)
ノーズリフト付きスポーツサスペンション:3250ポンド(約62万円)
アルカンターラ・インテリア:3000ポンド(約58万円)
電子制御LSD:2150ポンド(約41万円)
ブルー・ブレーキキャリパー:1100ポンド(約21万円)
エンボスロゴ付きヘッドレスト:850ポンド(約16万円)
電動ドアミラー:650ポンド(約12万円)
シートヒーター:550ポンド(約11万円)

テストの記録

燃費:8.7m/L(WLTP値)
故障:一時的なノーズリフト機能の警告表示
出費:なし

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みんなのコメント

5件
  • 鉄人21
    買った瞬間にマイナス1千万円を覚悟しないとですかね。
  • 20191010
    買えるだけの金があればフェラーリではなく、ランボでもなくMC20が欲しい…。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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