世界的な半導体供給不足や新型コロナウイルス感染再拡大が自動車製造に大きな影響を及ぼしている。ASEAN地域の現地工場が操業停止に陥っており、部品供給の不足から国内自動車メーカーに納期遅延が発生している。
新型カローラクロスは当初は2~3か月待ちだったが、好調な受注状況にも後押しされてさらに納期がが伸びているようである。大人気のヤリスクロスなどは、半年待ちとされていたがこちらもさらに伸びそうだ。
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比較的影響の少ないメーカーもあれば、かなり深刻な影響を受けているメーカーもある中での、各メーカーの現在の状況を調査した。
文/小林敦志
写真/TOYOYA、ベストカー編集部(トビラ写真=AdobeStock@Connect world)
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■メーカーによって影響の大小はさまざま
日産では深刻な納期遅延はほとんどないが、発売したばかりのノート オーラは人気が高く、受注多数による納期の遅れを招いている
本稿執筆時点で、日系8メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スバル、ダイハツ、スズキ)のウエブサイトを見ると、トヨタ、ホンダ、スバル、スズキが、“納期遅延”が発生しているとのお詫びを掲載している。
これは世界的な半導体供給不足やASEAN地域の新型コロナウイルス感染再拡大により、現地工場が操業停止などに陥り、ASEAN地域からの部品供給不足が発生しているためだ。メーカーによっては実際に国内各工場の操業停止スケジュールを公開しているところもあった。
ただし、このような案内をしていないからといって、そのブランドモデルの納期が順調というわけでもない。
筆者が販売現場をまわると、日産系ディーラーでは
「日産では半導体やASEANからの部品供給の滞りによる、深刻な納期遅延はほとんどありません。発売したばかりのノートオーラは、おかげさまで人気が高く多くの受注をいただいているため、ご納車が年内間に合うかどうかという状況で、納期にお時間をいただいております(取材時)」と話してくれた。
それでも日産もまったく影響がないというわけでもないようなので、現状では日本の新車販売市場全体が、深刻な納期遅延に悩まされていることになっているといえよう。そのなかでも深刻なのはトヨタとなるようだ。
前述した日産系ディーラーのセールスマンは、「トヨタさんは、日本だけでなく世界的にも生産台数がハンパなく多いですからね。受ける影響も大きいでしょうね。ウチぐらいの生産キャパならば、深刻な影響は受けませんけどね」と、やや自虐的に話してくれた。
■正確な納期が読めないという状況も
2021年9月より発売されているトヨタ カローラクロス。当初は2~3カ月待ちとなっていたが、部品供給不足の影響を受け、予定に乱れが出てきたようだ
9月14日に正式発売となったトヨタ カローラクロスは、ウエブサイト上の“工場出荷時期目処”では、当初2~3カ月(ただしSグレードは2022年3月から生産開始予定ということもあり、半年となっている)となっていたが、後日改めて確認すると“詳しくは販売店にお問い合わせください”となっていた。
発売後に急速に受注が積み上がったこともあるだろうが、それに部品供給遅延もあり納期が本格的に乱れ始めたように見える。販売現場で聞いたところでは、「発売と同時に本社(ディーラーの)から、グレードを問わず、納車予定は2022年3月以降との連絡がありました」との話であった。
事前の予想通りに受注がかなり好調なペースで入っているものの、ヴェゼルの想定外の好調な販売もあるのか、長期の納期遅延となっているのに、受注を増やすようにとプレッシャーがきついとのことであった。
なお、すでに新型アクアでも、納車時にナビキットが間に合わなくなっていたが、カローラクロスでもナビキットの供給遅延が別途記してあったので、ナビキットの生産は車両以上に混乱しているようである。
カローラクロスについては、Sグレードを2022年3月から生産開始としているので、あとは最上級グレードのZと、廉価グレードのG系(G“X”も含む)のみが現状では生産されていることになる。
G系はレンタカーなどのフリート販売向け仕様と見られるので、一般消費者向けでは、Xに当面は生産をかなりの割合で絞り込んでいることになるだろう。これも現状での部品不足だけでなく、新規受注が多く入ってくることによる納期遅延を少しでも押さえ込むことを狙っての生産計画のように見える。
販売現場で話を聞くと、「カローラクロス以外の車種についても、正確なご案内ができないところが厳しい」と語ってくれた。納期遅延の案内をして、お客さんから「じゃあ、いつになるんだ」と聞かれても、正確どころか、ザックリした時期すら案内できないほど混乱しているのである。
「トヨタのウエブサイト上の工場出荷目処は9月3日現在のものとなっています(本稿執筆タイミング)。
ざっと見ると、1~2カ月という早めのものもありますが、9月中旬に改めてトヨタ系ディーラーで納期を聞いてみると、『現状では2~3カ月かかるとご案内し、さらに半導体やASEANからの部品供給遅延などの問題で延びることがあります、とご案内します』と話してくれました。
2~3カ月、つまり『年内に間に合って欲しい』という希望であって、はっきりした納期が読めない状況にあるようです」と事情通は様子を説明してくれた。
現場のセールスマンはいまの状況について、「われわれが受けとる販売マージンは、当該月に何台登録できたかで支払われる額が決まります。9月は事業年度締めでの上半期末決算セール月でしたが、店舗スタッフのほとんどが受注した車両のうち登録できたのは1台ずつでした。
こうなると、受け取る給料はほぼ基本給に近いものとなり厳しい状況がしばらく続きそうです。仕事としては、“どのクルマが納車早いか”などと考えながら売っていられないので、とにかくお客様が希望されるクルマを販売し、受注が1台でも多くなるようにしております」と、混乱した様子を語ってくれた。
■グレードや装着オプションによって納期が前後するという現象も
発売直後のスタートダッシュにやや元気のないトヨタ アクアには際立った納期遅延はない。しかしグレードやオプションによって納期が変動する
また、例えば発売直後の立ち上がりがやや元気のない新型アクアは、全体では際立って納期遅延となっていないようだが、同じアクアでもグレードや装着するオプションによって納期が変わる(より遅くなる)というのが、今回の問題の特徴となっている。
人気のヤリス クロスは、問題が顕在化する以前から納期は半年かかるとされていた。それが、今回の問題が影響し、さらなる納期遅延となるのは間違いないというか、そのように覚悟してもらいたいと、トヨタ系ディーラーセールスマンは語っていた。
またトヨタにとっては、今回の問題について“逃げ道”がないところも深刻となってきている。
人気が高く受注が集中した、つまり少し前のヤリスクロスのような納期遅延車を購入希望として検討しているお客さんが納期で契約を躊躇していたら、そして仮に他車の納期がひどく遅延していなければ、「ライズやRAV4はいかがですか?」として勧めることもできる。
だが、今回はラインナップすべてで納期が読みにくい状況(遅れている)にあるといってよいので、“逃げ道”がないのである。納期が短く、高収益が期待できるアルファードも、現場では「配車予定が2週間延長になった」と、警戒するセールスマンも目立つようだ。
事実、再度ウエブサイト上の工場出荷時期目処をみると、やはり1カ月ほど時期が延びているのが確認できた。
「大変だ!」と言っているだけでは新車が売れないので、例えばカローラは7月に改良を行なっているが、その改良前の在庫車があったので、そのような在庫車をお客さんに事情を説明しながら販売するケースもあるようだ。
■トヨタ以外のメーカーにチャンス!? ともいかない事情
普段はアルファードのような短納期の車種の販売を促進して販売実績を積み上げるが、全車種が遅れている現在は事情が深刻だ
トヨタはコロナ禍となってから、“トヨタ一強”と言われるほど、新車販売の好調状態が続いていた。
ヤリス クロスのような人気が高く、納期のかかるモデル(受注したけど生産が間に合わず登録申請や納車ができないクルマ=受注残車両)を半ば“貯金”として、アルファードなどの短い納期のモデルの販売促進を進め、新規販売実績を積み上げる。
そして登録及び納車の目処のついた受注残車両をさらに販売実績として上乗せすることで、他メーカーを圧倒する販売実績を誇っていた。しかし、今回ばかりは納期の短い車種が皆無に近く、受注残ばかり積み上がってしまうことになりそうである(トヨタ以外も状況は大きく変わらないが)。
「受注時に納期がかかるとされたクルマが急に配車されると端末に表示されましたが、すぐに削除されました。メーカーもかなり混乱しているのだなと思いました」とは現場のトヨタ系セールスマン。
単純に納期遅延が深刻になるだけではなく、ある日突然“引き当たる(配車される)”こともあるのが、今回の問題をより複雑にしているようである。
世界のどこの自動車メーカーでも、納期遅延に悩まされているのは同じようだが、やはり生産や販売でスケールの大きいメーカーほど影響が大きいというのも確か。
それでは前述したように、半導体やASEANからの部品供給不足の影響をあまり受けていない日産が有利に新車販売を進められるのではないかと、日産系ディーラーセールスマンに聞いてみた。
「それがですね。あれだけテレビなどでトヨタさんの減産などが報道され、納車まで長い間待つことがわかっているのに、トヨタ車をみなさん買われるのです。ウチは最近何かと世間をお騒がせしていましたので、まだまだイメージが良くないようです」
■遅延からの回復でのスタートダッシュが肝心
カローラクロスの遅延で、ライバル車のヴェゼルの販売が増える可能性もあるが、ヴェゼルは人気が高く納期はすでに遅れており、カローラクロスを待ったほうが早いかもしれない
ホンダとて、カローラクロスが登場したので、相乗効果で販売増も期待できるヴェゼルがあるのだが、PLaY以外のグレードの納期はすでに2022年2月や3月に、PLaYにいたっては2022年7月あたりとなっているようなので(早くてという話)、下手したらカローラクロスのほうが納車は早いかもしれない。
前述した日産系セールスマンの、「納期遅延でも多くの人がトヨタ車を購入する」というのは、「どうせトヨタ以外のメーカー車も納期がかかるなら」という気持ちがあるのかもしれない。
残価設定ローンの利用が増え、新車購入時にリセールバリューを意識して選ぶひとも増えているので、短期間で新車を入れ替えるひとには、トヨタ以外のディーラーから「うちはすぐ納車できますよ」と言われたとしても、魅力的に映ることはあまりないようである。
もちろん、事情があってすぐにでも新車が欲しいというひとにとっては、納車が早いというのは大きな魅力となるだろう。日系ブランドより、海を渡ってくる外資系ブランド車(輸入車)のほうが、さらに問題が切実なものとなっているとも聞いている。
すでに、新車ではなく高年式車の多い各メーカーの認定中古車や、未使用中古車へ流れるひとも多くなっているとの話も聞いている。
ただ、ある意味“納期遅延慣れ(そもそも納期遅延車が多かった)”しているトヨタ以外のブランド系ディーラーで、例えばヴェゼルなら半年や1年待ちとなっているが、しっかりと納車を待っているお客を引き留め続けられるかという疑問が残る。
受注してからの生産状況の案内など、担当セールスマンから積極的にコミュニケーションを続けないと、たちまち納期遅延が、キャンセルも含めクレームとなって大問題になってしまうからである。
さらに、トヨタ並みといかなくとも、今後は受注残を抱えながら、新規の受注を積み上げていく、いわばトヨタ系ディーラーのような状況がトヨタ系以外のディーラーでもしばらくは続くことになる。現状の生産遅延状況は時期が未定だが、いつかは回復されるだろう。
ただ、その回復にトヨタが乗り遅れ、他メーカーが回復ペースでリードしてしまうと、人気の高さなどもあって納期遅延となっていた車種以外は、再び即納体制が整う。
販売台数でトヨタ以外のメーカーが逆転することはまずないだろうが、“トヨタ一強”とは言っていられないほど、トヨタにはプレッシャーがかかることも間違いないだろう。
本稿執筆時点では、間もなくライズが1200ccNAエンジンへの換装及び、ハイブリッド仕様の追加設定を行う改良を実施予定で予約受注活動を行っているとの情報がある。
また年末とされているノア&ヴォクシーのフルモデルチェンジは、発表だけは予定通り年内に行われ、11月から正式な予約受注がとれる体制が整うのではないかとの情報も入っている。
このようなことからも、おそらくトヨタの方が現状打破してリカバリーするのは早いだろう。だがもし他メーカーに出遅れるようなことがあった時、トヨタがどのような手を打ってくるかは実に興味深いところだ。
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