脱炭素化で重責を担う自動車メーカー
アウディAGは現在、脱炭素化を急ピッチで進めている。2020年11月20日に、同社ではジャーナリストを対象にオンラインで現在の取り組みを発表。おもしろいのは、現在世界的に人気のSUVは、小型車に対してCO2排出量が多い、と指摘されたことに対して、ピュアEVのe-tronがひとつの答え、としたことだ。
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脱炭素化(英語だとカーボンニュートラル)とは、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることをいう。ご存知のように、クルマは、生産から販売にいたるまで、CO2排出量の多さが、ことあるごとに指摘されてきたプロダクト。
そのため、走行中のCO2排出量が多いクルマへの課税強化が実施されようとしているのも、やはり読者のみなさんならご存知のとおり。地球温暖化はない、と強弁していた某国の大統領もいるものの、一部のエネルギー企業を除いてそれに同調する向きはそれほど多くない。
私たちのいまの環境を考えると、台風、ハリケーン、暑い夏、熱波、海面の水位上昇、海水の温度上昇など、災害が増えているのは事実。それをCO2排出量と関連づけている研究者は多い。まあ、懐疑的なひとだって、CO2が増加するのは望まないだろう。
「炭素の足跡」を把握するという義務
今回、「テックトーク(技術的なトピックスを折りに触れて公開するアウディの企業活動)」のなかで、同社では「ミッション:ゼロ」と名づけた活動を紹介した。ゼロとは上記のように温室効果ガスの排出量をゼロにすること。
「クルマが排出する温室効果ガスの量は、(EVの拡販などで)減らしていくことが出来ます。これからは、製造過程におけるCO2排出量を減少させることに大きく注力していきます」。アウディAGのボードメンバーで、環境保全や安全対策などを含めた戦略的な経営管理を担当するペーター・ケスラー氏は語る。
カーボンフットプリントといって、構成部品から完成車の組み立てまで、さらに販売、そしてリサイクルにいたるまで、クルマによる温室効果ガスの量を把握することが、いまの自動車企業にとって、義務のようになっている。
サッカー場22面分の太陽光パネル
アウディが今回強調するのは、すべての過程において排出ガスの量をゼロに近づける努力をするということ。すでにアウディでは、完成車の輸送をトレーラーでなく、鉄道(それも温室効果ガスの排出が少ないもの)へと切り替えるなど、カーボンフットプリントの視野を広げている。
2025年にはCO2排出量を現在より30%減らすのが当面の目標、とアウディ。いま、ブリュッセルとハンガリーの工場がカーボンニュートラル(先述のようにCO2の排出と吸収で差し引きゼロ)で稼働中だ。地熱と太陽光発電を活用している恩恵だという。ハンガリーの工場の太陽光発電のパネルの面積は「おおざっぱにいって、サッカー場22面に相当」というから、本格的。
アルミニウムもリサイクルへ
クルマの製造についても、やはりカーボンニュートラルの立場を貫く。1994年発表の「アウディA8」でオールアルミニウムボディを採用するなど、ずっと、軽量化と操縦性の向上のためアルミニウムの使用に積極的だった。現在では、アルミニウム使用を継続するために、「アルミニウム・クローズドループ(循環使用)」という考えを採用している。
アルミニウムの製造には電力を多く消費するため、アウディでは使用じたいは継続していくものの、二次使用アルミニウムに着目している。これによって95%の電力消費を抑えられるそうだ。
「すべてはロジカルに繋がっている」
2025年までにカーボンフットプリントを約30%減らす、とアウディは主張する。EVのラインナップを増やしていくのもそのひとつだという。同じ年までに、EVを30車種にする計画をアウディでは発表している。販売でいうとこれら30車種で、4割というのが、アウディの目標なのだ。
おもしろいのは、SUVという売れ筋商品に関する考えかた。オンラインの記者会見上で、大型のSUVはカーボンフットプリントを増やすのではないか、と質問が出た。それに対して前出のペーター・ケスラー氏は言う。
「もちろん、顧客の希望を満たすのが、私たちの製品戦略の原点です。SUVには利点が多くあり、それゆえに好調なセールスを続けています。そこで私たちは、e-tronにまずSUVタイプを設定したのです。大容量のバッテリーを搭載できるボディサイズにして、長い航続距離を実現しました」
すべてはロジカルにつながっている、というのがケスラー氏の説明だ。
「もっとコンパクトなサイズのSUVを」という希望に対しては「まもなくQ4 e-tronというモデルを用意します。まだ姿を見せていないQ4 e-tronはフォルクスワーゲン ID.シリーズとプラットフォームを共用するピュアEVです」と答える。
テクノロジーの使い手に寄せる期待
ID.シリーズとは、MEBなるBEV(バッテリー駆動のピュアEV)専用プラットフォームをもったフォルクスワーゲンの新しいラインナップ。日本への導入はもうすこし先になりそうではあるものの、欧州では、ハッチバックスタイルのID.3が発売され、SUVのID.4が続く。
「我々はもはやクルマだけに注力した企業ではありません。視野を企業活動全体に拡げ、電気自動車をとりまく分野全体でもって温室効果ガス低減に尽力していきます」
これまで、パワフルなクワトロで世界ラリー選手権を席巻し、Rシリーズではルマン24時間レースで13勝し、さらにR8というランボルギーニ ウラカンとプラットフォームを共用するミドシップスポーツでスーパーGTなどのレースを走ったアウディ。
すこしおとなしくなっちゃうのだろうか。そうなると寂しいけれど、考えてみたらアウディの最大の特徴は、企業スローガンである「技術による先進」を地でいく数かずのイノベーションだった。
全輪駆動システムを高速のために使うクワトロ(1980年)をはじめ、空力ボディの100(1982年)、100km走るのに燃料を3.0リットルしか消費しない超低燃費をめざしてオールアルミニムボディを採用したA2(1999年)、さらに、ディーゼルエンジン搭載のR10 TDIや、ハイブリッドシステムのR18 e-tron クワトロでのル・マン優勝など、テクノロジーをこれほどうまく使った企業はあまりない。
なので、これから、カーボンフットプリントの低減を視野にいれながら、技術屋集団のアウディがなにを見せてくれるか。楽しみにしようではないか。
TEXT/小川フミオ(Fumio OGAWA)
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