この記事をまとめると
■ホンダが新たな水素事業を発表
最新技術で蘇ったハチロクは旧車乗りの救世主か!? 旧車のEV&水素エンジン化は簡単な道のりではなかった
■次世代燃料電池のユニットを開発し順次テストを行う予定
■2024年に北米版CR-Vをベースにこのユニットを積んだFCVの新型車両を販売する
水素を使った燃料電池システム事業を拡充へ
ホンダは、お祭りの屋台で使われるような小さな発電機から、原付バイクや大型バイク、軽自動車やレーシングカー、さらに言えば航空機まで幅広く手掛けている。そして、これらに使われているエンジンはほとんどが自社製だ。また、さまざまなメーカーにパワーユニットも多数供給している。
こういった事情もあり、ホンダは「世界イチのエンジンサプライヤー」としても世間で広く認知されている。数で言うと、年間3000万台ものパワーユニットを世に送り出しているとのことだ。「ホンダはエンジン屋」と、クルマ好きの間でよく言われているが、実際にエンジンに惚れてホンダのマシンを買うというファンはあとを絶たないのでほぼほぼその通りだろう。
そんなホンダが、新型となる新世代のパワーユニットを開発したとのことで、製品のお披露目を兼ねた新規事業に関する発表を東京・青山にある本田技研工業の本社で行なった。
それが、年々各産業で注目度を増している「水素事業」への参入だ。
同社は、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると発表していることもあり、年々「脱炭素化」へ向けた動きを加速させているが、今回の発表もその一環だ。カーボンニュートラルを現実のものとするために、今回ホンダは電気に加えて水素エネルギーを組み合わせるという方針をとったという。ちなみに、今後の水素に関わるプロジェクトの舵取りをする「水素事業開発部」というのを、ホンダは2022年4月に新設しているとのこと。
クルマの世界で「水素」と聞くと、真っ先に我々が思い浮かべるのはトヨタのMIRAIではないだろうか。しかし、ホンダも2016年にリース販売という形で「クラリティ フューエルセル」を市販化しており、水素を使った燃料電池車を手掛けていた経験がある。もっと言うと、ホンダは今から25年前の1998年から水素の研究を行なっており、2002年にはFCXというモデルを世に送り出しているのだ。ホンダと水素の繋がりは、じつはかなり長い歴史がある。
そんなノウハウを活かして今回発表したのが、次世代燃料電池システムだ。写真のような白い箱状の物がパワーユニットとなっており、これをさまざまな乗り物や機器に搭載することで、燃料電池を使うことができるというもの。なお、このシステムはアメリカのGMと共同開発を行なっているという点も興味深い。
特徴を見ていこう。
エンジンにも電源にもなる夢のパワーユニット!
まずこのパワーユニットだが、前述した「クラリティ フューエルセル」に搭載されたユニットと比較すると 3分の1という低コスト化を実現
材料や制御の見直しによって耐久性は2倍以上
耐低温性向上(–30度低温始動時間大幅低減) という3つの要素が大きく改良されている。
しかしながら、「わざわざ水素にせずとも技術が熟成しているバッテリーでいいじゃないか」という声があるのも事実。じつはホンダがこのパワーユニットを通して燃料電池を使うのには理由がある。
それは「出力」だ。
カーボンニュートラルの実現は乗用車だけでは不可能で、物流を支えるトラックや建設関係の重機にもその範囲は及ぶ。しかし、これらのように、重量があり、同時に大きな出力が必要な乗り物たちは、バッテリーで動かすのは実際のところあまり現実的ではないと言われている。これらの乗り物や重機を電気で動かすことができたとしても、犠牲として稼働時間が制限される(出力を上げるとその分多くの電力を消費するため)。そのネガを解消するために、今度はバッテリーを多く積むとなれば、その分重くなり稼働効率が落ちたり、バッテリーを充電する時間が長くなったりするので悪循環となる。
一方で、今回ホンダが発表したこのパワーユニットであれば、並列に何機も繋ぐことでより高い出力を得ることができるという夢のようなシステムになっているのが特徴だ。また、水素の充填ですぐに稼働できるので、EVのように長い充電時間が不要というのも大きなメリット。長年の燃料電池に対する研究とエンジン屋のホンダが持つ技術があってこそできた代物と言えよう。
また、パワーユニットとしてだけでなく、発電機として使用することもできる汎用性の高さが魅力で、実際にホンダ社内の一部研究機関では非常用電源としてこのユニットを稼働させることが決まっている。
そのほか、いすゞや中国の東風汽車(ドンフォン・モーター)と連携して、大型トラックを使った実証実験も行われる。BEV化にまだまだ課題がある大型車両なので、このユニットの優位性が確立されれば、カーボンニュートラル化はより現実的な目標になってくるのではないだろうか。実際に開発現場からは、大型車両と燃料電池は相性がいいというデータもある。また、大型車両はスペースに余裕があるので、大きな燃料電池を搭載できるという点でも優れているという。
しかも、このパワーユニットを企業向けに販売する計画もあり、他社の乗り物や重機などに搭載することで、他社のカーボンニュートラルをサポートすることもできる。このフレキシブルさが、世界イチのエンジンサプライヤーとしてのプライドの証と言えそうだ。なので、本体正面にある白い化粧プレートは供給先の要望に応じて色や文字などをオーダーできる方向で現在調整中とのこと。
と、ここまで新たなパワーユニットに関する説明をしてきたが、「トラックや重機、非常用電源ばかりで我々一般人には縁がないのか?」と思った人もいるはずだ。
じつは、これを搭載したクルマを2024年にホンダは市販化すると発表もこの日に行っている。ベースとなるクルマもすでに決まっており、現段階では北米で展開されているCR-VのPHEVがベースとなるという。なので、今後はこのユニットを使用した燃料電池車が続々と登場することも大いに予想できる。サイズ感的には、前途のCR-Vをはじめ、シビックやアコードといったミドルクラス以上のボディサイズであれば搭載できそうな雰囲気であった。
ホンダは、このパワーユニットの普及はもちろん、水素ステーションを運営する企業と協力し、更なるステーション拡充に対するサポートや、JAXAと連携して宇宙産業へも進出する計画がある。
ここ数年、カーボンニュートラルへ向けた活動をより活発化させているホンダは、我々の想像以上に先を見据えたビジョンを掲げていると感じられた発表会であった。
今後のホンダの更なるカーボンニュートラル事業に期待したい。きっともっと驚くような事業も出てくるはずだ。
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みんなのコメント
同じパワーユニットで乗用車からトラック、重機までっていう汎用性が半端じゃない。発電機はもとより、パワーが欲しければ並列に繋げばいいってのが凄い。
ここからはホンダの営業の実力次第だな。
トラックメーカーや重機メーカーとの提携が進めば、バッテリー問題で停滞してる中型以上のトラックや重機への導入が一気に進むかもしれない。
後は自走出来ない重機への水素の提供方法次第。
トヨタはいつも新規モノが苦手で方向を見誤ってる間にホンダはしっかり足固め
そのホンダの流れを真似て我が物顔で発表するのがトヨタ