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呆れる燃費とお別れ インバーテッド・レンジローバー・クラシックへ試乗 電動化で456ps

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呆れる燃費とお別れ インバーテッド・レンジローバー・クラシックへ試乗 電動化で456ps

テスラ用パワートレインと合体

クラシックカーを電気自動車へ改造する、エレクトロモッドを手掛けるワークショップが欧州では増えている。ただし、希少性の高いクルマへ手を加えることに、賛否両論があることも確かだ。

【画像】呆れる燃費とお別れ インバーテッド・レンジローバー・クラシック 他の電動化事例も 全101枚

オリジナルを重んじるカーマニアにも受け入れられる指標の1つが、本来のエンジンが優れていたかどうか。シトロエンDSなら、むしろ駆動用モーターへ換装した方が望ましいかもしれない。フェラーリ・デイトナなら、恐らくネットは炎上するだろう。

それでは、英国伝統の初代ランドローバー・レンジローバーはいかがだろう。オリジナルのV8エンジンは、哀愁漂う心地良いサウンドを響かせる。かといって、レンジローバーというキャラクターに不可欠かと聞かれれば、必ずしもイエスではないと思う。

そもそも、初代レンジローバーにも1980年代後半に直列4気筒のディーゼルターボエンジンが追加されている。燃費に優れ、少なくない支持を集めた。駆動用モーターへ置き換えても、きっと暴れるファンはいないだろう。

インバーテッド・レンジローバー・クラシックは、AUTOCARでしばしばご紹介するような、エレクトロモッド事例に準じている。優れたベース車両を探し出し、ボディシェルを丁寧にレストア。走行距離の浅いテスラ用パワートレインと合体されている。

駆動用バッテリーは77kWh 最高出力は456ps

駆動用バッテリーはテスラ・モデルS用で、容量は77kWhと充分。レンジローバーのボディシェルに合わせて、モジュールの9ユニットがボンネット内に、6ユニットが荷室フロアに分割され収まっている。結果として、荷室はかなり狭い。

航続距離は、高速道路を走らなければ、最長320kmがうたわれる。これが実際と近い数字なら、空気力学がさほど意識されていない四角い形のSUVとしては、優秀といえる。

急速充電能力は、DCで最大75kWまで。テスラの急速充電器、スーパーチャージャーの性能は充分に活かせないものの、悪くない効率だと思う。

エレクトロモッドの事例では、もとのトランスミッションが残されている場合も多いが、インバーテッドの技術者は違う方法を選んだ。トランスミッションとトランスファーを降ろし、テスラの駆動用モーターを設置する場所にしている。

プロペラシャフトを介し、前後のリジッドアクスルへパワーが伝えられるため、四輪駆動。最高出力は456psもあり、駆動系は必要に応じて強化してあるそうだ。

サスペンションは、リア側のスプリングを硬いものへ交換し、駆動用バッテリーの重量を支えている。ダンパーは、高性能なフォックス社製の減衰力調整式が採用された。

ブレーキは、フロント側をアルコン社製の4ポッドキャリパーと大径ディスクへ置換。リア側は、オリジナルのままで大丈夫らしい。ブレーキブースターはテスラ用。バッテリーの制御システムなどは、一般的なサプライヤーのアイテムが選ばれている。

徐々にパワーが高まり加速は穏やか

ドライブモードをスタンダードにし、早速試乗開始。既存コンポーネントを巧みに組み合わせ、同社初の市販車でありながら、至って滑らかに運転できる。アクセルペダルの踏みはじめに、僅かなデッドポイントがある。この状態では回生ブレーキは働かない。

オフロード・モードへ切り替えると、テスラ・モデルSに近い感覚があって驚いた。アクセルペダルを緩めると回生ブレーキが効くようになるが、ブレーキペダルを踏むと摩擦ブレーキのみが機能する。このあたりの制御は、まだ難しいのだろう。

ちなみに、回生ブレーキの強さは顧客の好みで調整できるそうだ。

テスラとは異なり、アクセルペダルを踏み込んでも圧倒されるような加速は披露しない。穏やかに、徐々にパワーが高まっていく。とはいえ力不足を感じることはなく、むしろ右足でクルマを操るという感覚が伴って好ましい。

スポーツ・モードを選ぶと、パワー感が高まりダイレクトになる。それでも、まだ穏やかと表現できるレベルではある。

駆動用モーターの実力は600ps以上あるらしいが、レンジローバー・クラシックの場合は200馬力もあれば充分。速く走るためのクルマではない。

シャシーがアップデートされているとはいえ、グリップ力はほどほど。ボディロールは小さくなく、ステアリングのレシオはスローで、反応は曖昧。基本設計が1970年代のオフローダーで456psを一気に放ったら、恐らく安定はしないと思う。

荒れた路面でも快適 呆れる燃費とお別れ

エンジン音がしないことで、アクスルやデフからのメカノイズが、オリジナル以上に聞こえる。窓を開いてワインディングを流せば、鳥のさえずりに耳を傾けられる。草をはむ牛を驚かせずに、田園地帯に伸びる道を急げる。

インテリアは上等にレストアされ、ツイード生地で仕立てられたシートは座り心地に優れる。フォックス社製のダンパーがしなやかに路面の不整を吸収し、英国郊外の傷んだ一般道でも快適だった。

今回試乗したレンジローバー・クラシックはプロトタイプで、まだ未完成といえる部分が残っていた。写真撮影でタイトな切り返しを続けていたところ、電動油圧式のパワーステアリングがオーバーヒートしてしまった。エアコンなども動かない状態だった。

インバーテッドの技術者は、これらは量産仕様では解決されると話す。英国価格は29万4000ポンド(約5321万円)だというから、ぜひともすべて対応して欲しいところ。驚くほどのお値段ながら、キングスレー・カーズのULEZレンジローバーと大差はない。

V8エンジンの唸りは聞こえず、一抹の寂しさはある。だが、あやふやなトランスミッションを相手にする必要はなくなるし、呆れるほどの燃費ともお別れできる。静かで滑らかに運転できる、クラシック・レンジだ。

インバーテッド・レンジローバー・クラシック(英国仕様)のスペック

英国価格:29万4000ポンド(約5321万円)
全長:4470mm(オリジナル)
全幅:1778mm(オリジナル)
全高:1778mm(オリジナル)
最高速度:161km/h
0-100km/h加速:5.3秒
航続距離:321km
電費:4.1km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2100kg(予想)
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:77kWh
急速充電能力:75kW
最高出力:456ps
最大トルク:61.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード(四輪駆動)

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みんなのコメント

1件
  • 何でもいいけど5000万円のレンジローバー1って高すぎ。車両持ち込みで500万が限度だろう。もう少し現実的EV化を実用化してほしいものだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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