新車のような2代目カローラは夢と希望が詰まっていました!
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「新車のような輝きのカローラ ハイデラックス」についてです。木下さんが出会った、51年前のトヨタ「カローラ」。まるでトヨタの工場から今ラインオフしたかのような輝きを放っていました。その美しさはもちろんですが、装備されているパーツや機能を見て、あらためて感心したそう。現代とは違う装備とは?
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高度経済成長期を象徴するかのような装備が満載
ここで紹介するトヨタ「カローラ ハイデラックス」(2代目カローラ)は1973年製ですから、今からさかのぼること51年。日本が高度成長期の波に乗り、華やかな日本経済を謳歌していた時代のモデルです。なのに、まるで新車のように完璧にレストアされていることに驚かされました。
巷はネオヒストリックカーブームの真っただ中ですが、1973年製ですからネオではなく正真正銘のヒストリックカーになります。それでも、最新のモデルも羨むような機能や装備が盛り込まれており、憧れすら抱くことになりました。クルマが自由で明るい将来にワクワクしていた時代の生き証人であるわけです。
1966年にデビューしたカローラは、昭和世代のマイカーブームを牽引した大衆車です。日産「サニー」と販売を競っていました。2024年でデビューから58年。これまでの最多生産台数を記録していますし、いまだに絶版にはなっていません。ドイツのフォルクスワーゲン「ビートル」の総生産台数を超えて販売されていますから、もはや日本国民の「足」というよりも世界の「足」といっていいかもしれません。
豊かさに湧き立つ高度成長期を想像させる装備には目を見張るものがあります。例えばインパネは木目調の意匠が印象的です。木目や本革が高級の証であることは、のちに時代が証明しますが、この頃にすでに国民は大衆車に高級感を求めていたのです。
微笑ましいのは、シガーライター用ソケットが取り付けられていること。じつは廉価版グレードのスタンダードにはそれは装備されていません。高級仕様のハイデラックスに組み込まれていることから、それすらも豪華の証だったのでしょう。
時代は変わり、喫煙者は肩身が狭くなりました。車内で喫煙するシーンを見かけることも少なくなっています。シガーライターのソケットはスマホ充電用の電源として活用されていますが、USBポートが充実した高級車ほどシガーライターの装備はありません。シガーライター用ソケットが高級車の証だった時代から、高級車には装備されない時代へ変遷していることに時代の流れを感じます。
感心したのは、ボンネットを支えるステーにも凝った細工がなされていることです。一般的にボンネットを支えるステーは手動です。ですがカローラ ハイデラックスのそれは、手を煩わせることなく開閉できるのです。ボンネットを開けば自動にヒンジが固定されます。閉じる時にも自動でヒンジのロックが解除されます。こんな凝ったシステムを最近見かけることはありません。
オーバーヒートやエンストといったエンジン故障が発生しやすい時代だっただけに、メーカーの気遣いかもしれません。最近のクルマは故障知らずですし、故障しても素人には修理できません。ですからボンネットの開閉を工夫する必要がなくなったといえばそれまでですが、ユーザーのための小さな機能として個人的には注目していまいました。
当時を忠実に再現する職人による賜物
それにしても、今回触れた2代目カローラはレストアが行き届いており、新車と見紛うばかりの個体だったのには驚かされました。
この車両をお借りしたMクラフトは、オリジナルへ頑固にこだわったレストアで名を馳せています。母体が金属加工を得意とするミハラ金属工業であることもあり、いまでは見かけることのない六価クロムを使ったメッキ処理など、ほかのレストアメーカーでは不可能な処理も行い忠実に再現しているのです。
ですから、ピカピカのバンパーも新たにメッキ処理したのかと想像していたのですが、磨いただけとのこと。51年前の個体ですが、磨くだけで艶が鮮やかに蘇る。それほど高品質で丁寧な作り込みだったのです。
ちなみに、マフラーは新品です。Mクラフトの豊富なコネクションにより、51年間大切に保管されてきた在庫品を組み込んだそうです。新車と見紛うばかりの完成度なのも納得ですね。
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