坂東代表に聞く、今シーズンのSUPER GTの見どころとは
2024年4月13日(土)~14日(日)、岡山国際サーキットで幕を開ける今シーズンのSUPER GT。そんなSUPER GTは、2024年が30周年の記念すべき1年となります。そこでGTアソシエイションの坂東正明代表に、今シーズンの見どころ、そして展望について答えていただきました。
30周年の「スーパーGT」が「大阪オートメッセ」で2024シーズンのキックオフ! 新レギュレーションを紹介します
GT500クラス/GT300クラスともにニューカマーが参戦!!
国内最高峰のモータースポーツカテゴリーとして、日本だけにとどまらず世界からも高い注目を集めているSUPER GT。2024年シーズンも見どころは盛りだくさんなのだが、まず注目したいのはGT500クラス、そしてGT300クラスに多くのニューマシンが登場することだ。
トヨタ/日産/ホンダの3メーカーが凌ぎを削っているGT500クラスでは、ホンダが2023年まで戦っていた「NSX」から「シビックタイプR」にスイッチ。シビックタイプRのSUPER GT参戦は史上初となる。また日産はベース車両を「フェアレディZ」から「フェアレディZニスモ」へ変更し、王者「トヨタGRスープラ」に勝負を挑む。
実際、2024年3月16日~17日に岡山国際サーキットで行われた公式テスト、そして3月23日~24日に富士スピードウェイで開催された公式テストでは、3車とも高いパフォーマンスを披露しており、その差は僅差……。ただ全車とも爪を隠している可能性は高く、本当の実力の答えは開幕戦の舞台となる岡山国際サーキットで明確になるだろう。
一方、世界各国のスーパーカーが熱いバトルを繰り広げているGT300クラスでも、「フェラーリ296」と「アストンマーティン ヴァンテージ」といった強豪マシンがエントリーするほか、フェラーリとBMWはワークスドライバーが参戦。さらに3チームがSUPER GTに新規参戦するなど、こちらも見逃せない内容が満載となっている。
サスティナブルな取り組みについて
そんなSUPER GTが近年注力しているのが、サスティナブル化だ。世界ではさまざまな分野で温室効果ガスの排出ゼロを目指し、カーボンニュートラルを意識した取り組みが行われている。モータースポーツをこの先も継続していくためには、地球環境を考慮しながらエンターテイメントを作る必要がある。そこでSUPER GTが2023年から行っている取り組みのひとつが、バイオマス由来の非化石燃料・カーボンニュートラルフューエル(以下、CNF)の採用だ。
「二酸化炭素の排出量を減らしながら継続してレースをするため、自分たちが何をやりたいのかを考えたときに、2030年以降もお客さんの前で〈音の出るモータースポーツ〉を続けていきたいと思いました。
そこで昨年はGT500クラスに100%CNFを採用しました。今シーズンは1年遅れでGT300クラスにも50%CNFを混合した燃料が使用されます。将来的には、二酸化炭素と水素を合成して作る〈eフューエル〉と呼ばれる燃料を採用したいと考えています」と、GTアソシエイションの坂東正明代表は語る。
また今シーズンの1大会当たりのタイヤ(ドライ用)の使用可能本数は、300kmレースの場合は4セット、350kmレースで5セット、3時間レースで6セットと3つのレースフォーマットに合わせて使用できる設定とされている。2019年のドライタイヤ持ち込み可能セット数は300kmレースで7セットと定められていたため、1台あたりのセット数はシーズンを通して35%、合計21セットが削減されることになった。このレギュレーション変更に伴い、予選方式を大きく刷新。その背景を坂東代表に尋ねてみた。
「環境面だけにとどまらず、ファンが楽しめるタイヤの使い方を考えました。というのも、昨年までのレギュレーションのままですと、タイヤを温存させるために公式練習を走らない……そんなケースが想定できたからです。それだと観戦を楽しみにサーキットへ足を運んでくれたファンに申し訳ない。
そこで予選Q1とQ2のタイムを合算して、使えるタイヤ本数も1セットにする新たな予選方式を導入することとしました。発表後にさまざまな意見がありますが、プロモーターとして大切なのは環境を考慮しながら、どのようにしてエンターテイメント性を向上させていくのか。1回やってダメではなく、まずチャレンジすることが大切だと思っています。1年間やってダメなら、別のアイディアを提案していきます」
さらに坂東代表は、Q1とQ2合算方式の予選をわかりやすくファンに伝えるために、新たなシステムを導入できるよう準備を進めているという。
「合算方式の予選を面白く見せるために、リアルタイムで順位や合算タイムをモニターやテレビ画面に表示させるシステムを導入する予定です。また開催する各サーキットにもご協力していただき、通信環境を充実させ、3年目を迎える〈Grooview Multi〉の視聴環境も整えていきたいと思います。ひとりでも多くの人に分かりやすく伝えること、われわれの意図がファンにしっかりと伝わるような見え方、見せ方が大切ですからね。これらの施策が観客動員数の向上につながり、グランドスタンドを〈満タン〉にすることを目指していきます。いろいろと試行錯誤を重ねアップデートして行きますので、楽しみにしていてください」
さらに坂東代表は、レース後に行っているキッズウォークは、今後も継続してやっていきたいコンテンツのひとつだと考えているようだ。
「より多くの子どもたちに興味を持ってもらうために、中学生以下の子どもとその親を対象に始めたのがキッズウォークです。ドライバーや監督からのファンサービスをはじめ、チームによっては、ステッカーやクリアファイルなどオリジナルグッズを無料で受け取ることができます。
はじめた当初にキッズウォークの対象だった子どもたちは今20歳を超えていて、大人になっています。なかには結婚して、家族でSUPER GTを見に来る方もいることでしょう。今度は彼らが親の立場で、子どもをサーキットへ連れてきてほしいです。そういったアピールができるとキッズウォークを続ける価値はますます出てきますし、SUPER GTファンが代々引き継がれていくのは素晴らしいことです」
レースアンバサダーからエンタメ性の取り組み
さてSUPER GTではチーム、そしてスポンサーをPRするためのレースクイーンの存在も欠かせない存在となっている。そのレースクイーンの名称を、今シーズンから「レースアンバサダー」という新たな名称に変更することになった。
「チームや選手を応援する存在として、女性に限らず、男性や着ぐるみでも担うことができるような規則としました。F1のグリッドガールは数年前に廃止されるなど、多様性を求める社会情勢を勘案して再検討した結果、SUPER GTの場合はただグリッドボードを持つだけではなく、チームやスポンサーのPRをするために必要不可欠な存在だと考えています。
チームのメカニックやエンジニアたちと同様に絶対に必要なシリーズに貢献する〈職種〉のひとつと考え、一緒に仕事をする仲間として、レースアンバサダーという名称に変更し、対象を広げ継続する体制としました」
F1やスーパーフォーミュラなど、近年のモータースポーツはレース以外の部分でエンターテイメントのコンテンツ強化が目立っている。SUPER GTも今後そういった新たなコンテンツの展開を考えているのだろうか。
「F1は昼間レースをやって、夜にコンサートを開催。他業種とのコラボレーションが近年目立っています。ただ今のSUPER GTのスケジュールで、そういったコンテンツを展開していくのはハードルが高いです。以前、土曜日の夜に著名なアーティストが来場してイベントをやったことがあります。そのアーティストを目当てに数多くの方が来場されましたが、そのようなコラボレーション企画を実施するケースは、そうそうないので、既存のコンテンツの底上げを早急にやる必要があると考えています。そのひとつが自動車メーカーの新車展示、カタログの配布、そして会場での販売です。以前タイでシリーズ戦を開催したときのサポートレースでやっていたヤリスカップは、スタンド裏に実際の車両やパーツを展示していて、プロモーション活動に積極的だなと感じました。もともとモータースポーツは各メーカーの販売促進と営業戦略の一環であるはずなので、サーキットでのそういったプロモーション活動に力を入れていきたいです」
* * *
注目ポイントが盛りだくさんのSUPER GT。次の30年に向けてのシグナルは、2024年4月13日(土)~14日(日)の岡山国際サーキットでグリーンへと点灯する。
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