日産がルノーとの出資比率を見直すなど、企業間での新しい契約について締結を完了した。その中には、ルノーが設立したBEV関連企業「アンペア」対する出資も含まれる。
グローバルでBEV市場環境が大きく変化する中、日産は「アンペア」と共にどう動くのか?
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5か月越しでやっと締結完了
ルノーグループと日産は2023年7月26日、2023年2月6日に締結・公表された拘束力がある枠組み合意を踏まえた最終契約の締結を完了したと発表した。
その一環で、日産はルノーグループが設立するBEVとソフトウエア開発企業の「アンペア」に対して、日産から取締役を派遣し、最大6億ユーロ(1ユーロ156円換算で936億円)の出資を決めた。
日産の内田誠CEOはニュースリリースで、3社の協業が「次のフェーズに進む」ことを強調。また、「欧州での電動化の取り組みを補完・強化する」とコメントを発表している。
この発表と同じ日、日産は2023年度第1四半期決算を発表。その中で、内田CEOは記者からの質問に答える形で、アンペアへの出資について触れた。
それによると、日産のこれからの事業として、それぞれの市場で違った商品戦略や技術戦略が必要になってくるとの認識を示した。
こうした指摘をする背景には当然、欧州連合による欧州グリーンディール政策がある。
政策パッケージ「Fit for 55」による2035年時点において、欧州域内での乗用車と商用車のZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)へ転換が進む。
「Fit for 55」については当初、ZEVをBEVと燃料電池車のみと規定し、ZEV100%を明記していたが、ドイツからの提案によって再生可能エネルギー由来の合成燃料であるe-Fuelを含めるとの方針転換を行った。
いずれにしても、欧州での電動化へのシフトは今後、加速していくことは確実な情勢であり、ルノーと日産が電動化戦略で新たなステージでのチャレンジを進めていくことは、欧州で継続的に事業を行う自動車メーカーとしては必須条件であると、筆者は見る。
中国で地場メーカーのNEVが急増
今回の決算発表では、日産の売上高では前年同期比37%増で過去最高に達し、営業利益は98%となり全体として順調に見える。
だが、今後に向けて大きな課題が浮き彫りになった。
それが、中国市場の急激な変化だ。
2023年第1四半期の、グローバルでの販売台数は78万9000台で前年同期比で3.7%減少した。
このうち、日本は「セレナ」等の好調で前年同期比19.1%増、北米は「ローグ」等の好調で33.1%増、また欧州でも7.2%増となっている一方で、中国は45.8%減と大幅に落ち込んでいるのだ。
中国では、2023年前半に新型コロナウイルスが再拡大した影響や、NEV(新エネルギー車)向けの購入補助金が2022年で終了したことで、ガソリン車などを含めて地場メーカーを中心に実売における価格競争が起こり、その中で日産の市場競争力が落ちた。
さらには、中国地場メーカーがNEVモデルをリーズナブルな価格で次々に市場導入してきており、日産としてはこれまでにない事業方針で中国市場の立て直しを図る構えだ。
こうした中国市場での変化を目の当たりにしている日産としては「我々の見立てでは、アメリカでも(近い将来、中国のような急激な電動化シフトが)起こるだろう」(内田CEO)という予測を持っているという。
グローバルで急激に市場環境が変わっていく中で、日産としてはルノーグループと事業を相互補完しながら、企業としての限られた資源をどのように集中していくのか、さらなる議論が必要であるとの見解を示した。
具体的な方向性については、次の中期経営計画の中で明らかにする。
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