メルセデス・ベンツのAMGに新たなラインアップが加わり「AMG53シリーズ」が誕生した。2018年9月に発表されたAMG53シリーズは現在Eクラスのセダン/ステーションワゴン、クーペ/カブリオレ、そしてEクラスファミリーのCLSにラインアップされている。そのE53 4MATIC+セダンに試乗したのでお伝えしよう。
AMGには43、45シリーズと63、65シリーズがあるが今回の53シリーズは電動化されたパワーユニットというのが特徴のAMGだ。搭載するエンジンは直列6気筒3.0Lのガソリンに48Vモーター、電動スーパーチャージャー、そしてターボチャージャーを搭載したモデルで、インテリジェントなハイパフォーマンスと快適性を両立させたモデルだ。
試乗インプレッション
試乗モデルはEクラスのセダン。「メルセデスAMG E53 4MATIC+」で1202万円のモデル。最初に驚いたのはエンジンスタートが静かで滑らかなこと。ブリッピングのようにバフォーンとは始動せず静かにかかる。これは搭載する電動モーターが始動するためで、インテリジェントな部分だと感じる。
アイドリングはこのモーターのサポートもあり、かなり低回転で、550rpm付近でアイドリングをする。もちろん静かで振動もない。またバッテリー状態次第でアイドルストップもする。
走り出すとドライブモードの「コンフォート」でもエンジンのサウンドが聞こえる。程よい心地よさで聞こえAMGである証を常に感じていられる。スポーツモードにするとさらに、サウンドは大きくなりアクセルに反応するサウンド、パドルシフトに反応するエンジン音はAMGの本領発揮だ。
サスペンションはエアサスを装備し、「AMGライドコントロール」を装着する。ダンパーは連続可変ダンパーでモードによって減衰が変わるが、コンフォートモードでもかなりやる気のある乗り心地だ。これはフロント245/35R20、リヤ275/30R20というタイヤサイズが大きく影響しているように思う。特にハーシュネスが強く、ガツンと硬い乗り心地になる瞬間もあるからだ。
もっともハイスピードの高速走行になると、このスポーティな足回りは安心感へと変化し、フラットライドでピッチングのない安定した高速走行が手に入る。万が一の高速域からのハードブレーキでも沈み込むような減速で安心感の高い減速もこのサスペンションが大きく寄与している。
また、エコモードを選択するとエンジンとミッションはクラッチで切り離され、惰性で滑空する。AMGといえどもパワーを必要としていないエコモードでは先進のエコドライブが可能になっているというわけだ。
もちろん自動発進、先行車追従などの「レーダーセーフティパッケージ」が搭載されているので、最新のレベル2高度運転支援機能があり、車線変更や渋滞時の停止、発進も自動で行なう。便利で、これいいなぁと感じたのはヘッドライトのマルチビームLED(ウルトラハイビーム付き)だ。基本はハイビームで走行する設定で、対向車や先行車などを照射しないように部分的にマスクされる。これが明るい市街地ではさほどメリットを感じないが、ちょっと郊外に出ると、その威力は抜群にいいことに気づく。夜の視界が良くなるのは精神的にも安心感につながるのだ。
NEXT:パワーユニット
パワーユニット
さて、最新のパワーユニットAMG53シリーズは直列6気筒のガソリンエンジンで、先にS450に搭載したユニットと同じである。だが、タービンを大径化しパワーはこのAMG53シリーズのほうが+68psの435ps、トルクも+20Nmでの520Nmとなっている。
このエンジンはM256型で、電動化された最新のユニットだ。これまでエアコンやウオーターポンプなどエンジンパワーを使ったベルト駆動の補器類だったが、すべて電動化され、ベルトのないエンジンになっている。また48Vの電動モーターはエンジンとミッションの間に設置するP2レイアウトで、ギヤインプット式のモータージェネレータでクラッチがあるため、EV走行も可能なユニットだ。
また、このモーターはISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)でセルモーターと発電を兼ね、駆動もできるモーターユニットである。搭載するリチウムイオンバッテリーは1kWhと小さく、まさにマイルドなハイブリッドでもある。
そして電動スーパーチャージャーも搭載し、発進時のモーターアシストから電動SCへと切り替わり、エンジン回転が上昇し中高回転域では通常の排気ターボが過給をするという仕組みだ。9速ATはこれらの補器類がシームレスに切り替わり滑らかに力強く加速していく。
そしてAMG53シリーズはすべて4MATIC+仕様になっており、オンデマンド式の4輪駆動で、プラスは駆動配分が可変することを意味し、駆動力配分が50:50から、最大0:100の完全FRにまで可変する。
デザイン
エクステリアのデザインではAMG53である特徴としてフロントグリルがダイヤモンドグリルになっているのが目立つ。ちなみにクーペ、カブリオレ、CLSのグリルはツインブレードタイプで、63シリーズで使用していたデザインが降りてきたわけだ。そして63シリーズはAMG GTのようにタテスリットのグリルに変わっているのだが。
またボンネットフードにパワードームがデザインされ、左右のエアインテークにはシルバーの水平フィンが2本デザインされている。
インテリアでは63シリーズでも使用される「AMGパフォーマンスステアリングホイール」が装備され、上質かつスポーティなステアリングになっている。そしてステアリングから手を離すことなく操作できるタッチコントロールボタンやアクティブディスタンス・ディストロニックを操作もできる。
インパネにはGセンサーが表示されるのもAMGらしい装備だ。フルデジタルメーターは様々な情報が表示できるが、エンジン出力、トルク、過給圧などが表示されるのもAMGらしい装備のひとつだ。
そしてこのAMG53シリーズはメルセデスの「EQ」ブランドでもある。メルセデスの電動化ブランド名がそのEQで、PHEV=EQパワー、ISG=EQブースト、F1技術のHEV=EQパワー+、そして電気移動車=EQと区別しているので、このAMG53シリーズはEQブーストでもあるのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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