現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【スーパーカーにまつわる不思議を考える】スーパーカーの始祖となるモデルと、それが生まれた背景

ここから本文です

【スーパーカーにまつわる不思議を考える】スーパーカーの始祖となるモデルと、それが生まれた背景

掲載 更新 9
【スーパーカーにまつわる不思議を考える】スーパーカーの始祖となるモデルと、それが生まれた背景

ブランディングを試行錯誤して生まれた、自動車史に残る傑作モデル

元祖スーパーカーとはどのモデルか? そもそもスーパーカーの定義自体が明確でないから、その答えはなかなか難しい。

カーセンサーEDGE.netはこちら

前回の当連載で筆者は、スーパーカーを「スポーツカーであるが、レースカーではなく、ラグジュアリーなエクステリアとインテリアを持つ少量生産自動車」と定義している。ここではその独善的な考えに基づいてお話したい。

1966年のジュネーブ・モーターショーでデビューを飾った「ある」モデルは、全世界の注目を集め、購入希望者が殺到した。クラシカルな要素を持ちながらも未来的なテイストを醸し出す優雅なスタイリング、ミッドマウントされた大排気量のV12エンジン、斬新なテイストを魅せるインテリア。そう、ランボルギーニ ミウラである。いろいろな意見があるのは承知のうえで、元祖スーパーカーはミウラ以外にはないと筆者は考えるのだ。

ミウラが登場するまでは、モデナの老舗ライバルメーカーにとって、1963年に発足した新興メーカーのランボルギーニは眼中になかったと言って良い。フェラーリが大排気量スポーツカーの頂点として、絶大なブランドパワーを持って独走していた時代だ。当時、ロードカーである275GTBは優雅なピニンファリーナデザインのボディをまとっており、それは「ロードカーのボディをまとったレースカー」というフェラーリのアイデンティティに基づいたものであった。

また、もう一つの雄であるマセラティもエレガントなGTカーとして確固たる地位を確立していた。当時の主力モデルはミストラルであり、ジウジアーロのデザインによるギブリも登場間近だった。

新興メーカーであるランボルギーニが、このマーケットに食い込むのはたやすいことではなかった。当初、あの有名な「エンツォ・フェラーリとの確執エピソード」をぶち上げたオーナーのフェルッチョ・ランボルギーニは、ランボルギーニのブランドプロモーションのために、あたかもフェラーリがライバルであるかのように振る舞った。

しかし、彼が本当に作りたかったのはマセラティやアストンマーティンのようなGTカーであった。ところが、そのどちらもフェルッチョに言わせると少しスポーティさに欠けていた。つまり華がないと考えたのだ。そんな経緯から生まれたのが350GTであり、それは快適なGTカーでありながらフェラーリに匹敵するパワフルなエンジンを搭載した、いわば両ライバルのいいとこ取りを目指したものであった。

ただ、そう上手くは事が運ばなかった。蓋を開けてみると、売り上げは伸びず、その戦略がなかなか難しいものであったことをフェルッチョも理解した。詰まるところ、どっちつかずの評価しかマーケットから得ることができなかったのだ。長い歴史を持ちブランドとして華があるライバルたちとどう戦うべきか、彼は悩んだ。 

ライバルたちの度肝を抜いた、ミウラの革新的なデザインと設計

フェルッチョは、ランボルギーニの開発エンジニアにあえて経験の少ない若者を選んでいた。ジャンパオロ・ダラーラとパオロ・スタンツァーニである。今までの常識を引きずっていては新しいことはできないことを、彼はトラクターをはじめとするモノ作りの経験から学んでいた。

この二人、特にダラーラは、レース活動に関わることができるという”餌”でフェルッチョがマセラティから引き抜いてきた若者だった。だから、当然レースの世界が一番の関心事であった。当時のレース界において大きな旋風を巻き起こしていたフォード GT40に二人はぞっこんであり、いつかこんな車を作りたいと思っていたという。

車作りの方向性に悩んでいた彼らは、この低く幅広いスタイリッシュなボディを持ったミッドマウント・エンジンのレースカーこそが、ニューモデルのベンチマークとなると考え、フェルッチョもそれを承認した。これがミウラ誕生の舞台裏だ。

モデナのスポーツカーメーカーとして新しい取り組みであったセミモノコックボディを開発し、V12エンジンを横置きで搭載した。このレイアウトを見た当時の誰もが、それをレースマシンと考えたであろう。そこに富裕顧客にアピールすることのできるエレガントなボディを載せるのがミウラのコンセプトであった。

「ベルトーネのスタイリングは独特だった。それまで任せていたカロッツェリア・トゥーリングが経営破綻していたから、ベルトーネとのコラボレーションを何とか実現させたいと考えた。そう、モーターショーで見たアルファロメオ・カングーロのテイストにダラーラも私も打ちのめされていたんだ」と故スタンツァーニは、かつて語っていた。そんな経緯から、マルチェッロ・ガンディーニによる自動車史に残る素晴らしいミウラのスタイリングが誕生した。

ミウラの革新的なメカニズムを見たフェラーリのエンジニアたちも顔色が変わった。レースカーのDNAをブランディングの核とするフェラーリは、ランボルギーニを初めて脅威と感じたのだ。もちろん、マセラティも同様であった。レースカーでもなく、GTカーでもないが、その存在がとんでもなく斬新で、ユニークである。

そんなミウラは、世界中に大きなムーブメントを作った。そして、その顧客層はそれまでスポーツカーにあまり興味のなかった富裕層にも広がった。イタリアでは「ミウラ・カフェ」が誕生し、ファッションショーにもミウラが登場した。まさに世界はスーパーカーの誕生を見たのだった。 ランボルギーニの物件を年式の古い順に見てみる▼検索条件ランボルギーニ × 全国文/越湖信一、写真/ランボルギーニ、フェラーリ、マセラティ、フォード

カーセンサーEDGE.netはこちら

こんな記事も読まれています

今年のレクサスSUVに注目!!  ランクル250ベースの[レクサスGX]登場!! 今年買えるレクサスSUV7選
今年のレクサスSUVに注目!!  ランクル250ベースの[レクサスGX]登場!! 今年買えるレクサスSUV7選
ベストカーWeb
6速MTあり! 全長5.4m超のトヨタ新型「タフすぎ車」発表! パワフルなハイブリッド搭載した「新型タコマ」約610万円から米で発売
6速MTあり! 全長5.4m超のトヨタ新型「タフすぎ車」発表! パワフルなハイブリッド搭載した「新型タコマ」約610万円から米で発売
くるまのニュース
JR中央本線の上空 一夜にして橋が出現! 名古屋‐中津川の国道19号バイパス「瑞浪恵那道路」
JR中央本線の上空 一夜にして橋が出現! 名古屋‐中津川の国道19号バイパス「瑞浪恵那道路」
乗りものニュース
ニューウェイがレッドブルを離れても、ライバルの獲得は2027年までお預け? 契約に不履行条項が存在か
ニューウェイがレッドブルを離れても、ライバルの獲得は2027年までお預け? 契約に不履行条項が存在か
motorsport.com 日本版
歩行者でも道交法違反になる! マラソンや駅伝の規制中に警察の指示に従わず「コースを横断」は罰則の可能性アリ!!
歩行者でも道交法違反になる! マラソンや駅伝の規制中に警察の指示に従わず「コースを横断」は罰則の可能性アリ!!
WEB CARTOP
電動車ブランドになったヒョンデが、あえて高性能モデル「N」を日本に投入する理由とは?
電動車ブランドになったヒョンデが、あえて高性能モデル「N」を日本に投入する理由とは?
レスポンス
プリウス顔のSUV!!  しかもEVってマジか!!  トヨタ本気のEV攻勢
プリウス顔のSUV!!  しかもEVってマジか!!  トヨタ本気のEV攻勢
ベストカーWeb
日産が新型「エヴォ・コンセプト」世界初公開! めちゃカッコいい「流麗セダン」中国で登場! どんなモデル?
日産が新型「エヴォ・コンセプト」世界初公開! めちゃカッコいい「流麗セダン」中国で登場! どんなモデル?
くるまのニュース
エイドリアン・ニューウェイがレッドブルF1離脱を決断との報道。ホーナー騒動が一因か。チームは2025年末までの契約を強調
エイドリアン・ニューウェイがレッドブルF1離脱を決断との報道。ホーナー騒動が一因か。チームは2025年末までの契約を強調
AUTOSPORT web
ホンダの赤い「新型プレリュード」初公開! “2ドアクーペ”実車展示で反響スゴい!? 25年登場!? 車名復活で米国でも注目
ホンダの赤い「新型プレリュード」初公開! “2ドアクーペ”実車展示で反響スゴい!? 25年登場!? 車名復活で米国でも注目
くるまのニュース
スズキ「GSX-8R」の仕立ては想像超え!! 親しみやすく扱いやすいマルチなポーツバイクだった
スズキ「GSX-8R」の仕立ては想像超え!! 親しみやすく扱いやすいマルチなポーツバイクだった
バイクのニュース
ランドローバー ディスカバリースポーツ、エントリーグレードを追加…2025年モデルの受注開始
ランドローバー ディスカバリースポーツ、エントリーグレードを追加…2025年モデルの受注開始
レスポンス
デカすぎ……レクサスLMは48インチのディスプレイ採用!! もう「高級車=セダン」は時代遅れ? 高額なミニバンやSUVが登場するワケ
デカすぎ……レクサスLMは48インチのディスプレイ採用!! もう「高級車=セダン」は時代遅れ? 高額なミニバンやSUVが登場するワケ
ベストカーWeb
トヨタ「GRヤリス」のマイナーチェンジはフルモデルチェンジに等しい! 初期型ユーザーは買い替えのご準備を
トヨタ「GRヤリス」のマイナーチェンジはフルモデルチェンジに等しい! 初期型ユーザーは買い替えのご準備を
Auto Messe Web
マットモーターサイクルズのニューモデルDRK-01(250/125)受注開始!同社初の水冷エンジン搭載車は6月下旬発売予定
マットモーターサイクルズのニューモデルDRK-01(250/125)受注開始!同社初の水冷エンジン搭載車は6月下旬発売予定
モーサイ
「コイツ、実はクルマです…」馬って公道OKなの!?高速道路は?
「コイツ、実はクルマです…」馬って公道OKなの!?高速道路は?
月刊自家用車WEB
テスラのすべてのモデルが新価格に! Model 3 RWDやModel Y RWDがこんなに安く!
テスラのすべてのモデルが新価格に! Model 3 RWDやModel Y RWDがこんなに安く!
月刊自家用車WEB
テスラ、モデル3に価格改定とスポーツ走行まで楽しめる”パフォーマンスモデル”を追加
テスラ、モデル3に価格改定とスポーツ走行まで楽しめる”パフォーマンスモデル”を追加
月刊自家用車WEB

みんなのコメント

9件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村