洛中(らくちゅう)の北の端。その昔の内裏(だいり:現在の京都御所よりかなり西)から見て、上空に北極星の輝く地が北野という土地柄で、そこに天のエネルギーが満ちているとして天神信仰が発祥したといわれている。言うまでもなく、菅原道真公をお祀りすることで有名な学問の神様・北野天満宮がその中心だ。
今出川通沿いにひと際目立つ“一の鳥居”をくぐって、“影向の松”や“太閤井戸”、“梅苑”、新築なった“文道会館”を脇目に、“桜門”から境内へと入ると、国宝の“本殿”や、“星欠けの三光門”、すさまじい刀剣のコレクションで有名な“宝物殿”などがあり、その周りを数々の摂社末社が静かに取り囲んでいる。
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春は梅、秋は紅葉。
2月の北野天満宮は梅の香が立ちこめ、香りに誘われて梅苑を訪ねたならば、小さく可憐に咲く種々の花びらが、桜とはまた違った趣のある世界へと観る者を誘う。
11月には、川沿いにある史跡御土居の周辺を、もみじが紅に染めわたす。季節の折々に表情を変える北野天満宮は、数年前に筆者が近くへと引っ越してきて以来、格好の散歩コースになっていた。
境内の至るところに、牛(もちろん像だ)がいる。臥せっているので臥牛(がぎゅう)という。神の使いである。なぜ牛なのか、には、道真公にちなんで諸説がある。
が、それはともかく、寝そべった“平たい牛”たちを見て、「ランボルギーニみたいなもんだ」、と思ったのが、天神さん(親しみをこめて地元の人はそう呼ぶ)でスーパーカー・イベントを開催するというアイデアのキッカケであった。
たまたま天満宮の神職さんと知り合って、話をする機会があった。臥牛の話題になり、「全国の天神さん(北野天満宮は、太宰府八幡宮と並び、全国1万2000社ある天満宮の総本社)のなかで、唯一、ここには立ち牛がいるんですよ。七不思議のひとつです」と仰った。
本殿拝殿に案内された。確かに、今にも前へと進もうと立ち構えている牛が描かれていた額が欄間にあった。ランボルギーニのファイティングブルとはちょうど向きが逆。でもそっくりだ。
ここでランボルギーニのイベントを開いたら面白いかも! そう考えた翌年が、ちょうどミウラ50周年(1966年デビュー)という年回りであった。
そういうわけで、2016年の第1回イベントは『ランボルギーニ・ヘリテージ・ギャザリング』と銘打って、ディアブロ以前のフルノーマル車体を集めて展示イベントを開催した。5台のミウラを筆頭に、珠玉のクラシック・ランボルギーニ30台あまりが集まり、盛り上がった。
フェラーリやポルシェなど他のスーパーカーたちも間近で見てみたい。多くの参加者や観覧者からの要望に応えて、翌年の第2回イベントは、なつかしの漫画「サーキットの狼」に登場したスーパーカーなら何でも展示可能という、その名も『スーパーカー・ヘリテージ・ギャザリング』として開催。ランボルギーニカウンタックやフェラーリBB、ランチアストラトス、デ・トマソ・パンテーラといった懐かしいスーパーカーたちが30台集まった。
そして、第3回を迎えた今年の5月。スーパーカー・オーナー以外でも由緒ある北野天満宮の境内に愛車を並べてみたいというリクエストに応えるべく、展示可能車種と台数の枠を大きく拡げてみることに。古今東西スポーツカーなら何でも参加可能な、『スポーツカー・ヘリテージ・ギャザリング』が今年のメインタイトルだ。
例年の倍となる60台近い車両を展示できるよう、イベントスペースも以前の“右近の馬場”ではなく、参道脇の大駐車場を貸していただけることになった。また、できるだけいろんな種類のスポーツカーを並べて、その歴史をつぶさに知ってもらいたいという思いから、展示車両の重複を避けるため、参加費用を低く抑えるかわりに、事務局で参加車両を選抜させてもらうこととした。
当日。あいにくの天候にも関わらず、欠席わずかに2台(屋根のないクルマ)、計58台(つまり58種類)もの新旧スポーツカーが集まり、その日の北野天満宮の“大型車パーキング”は、降りしきる雨のなか、スポーツカー歴史絵巻さながらの景色となったのだった。
おそらく、これほどいろんなスポーツカーが雨中に集まることなど、2度とないと思う。奇跡の、そして伝説のイベントとなった。
最初から大上段に構えて企画したイベントでは決してない。ごく仲間内で楽しいひとときを、クルマにとっては非日常の空間で過ごせれば面白い。そう思って始めただけだ。牛の宮でランボのイベント、と語呂合わせのような軽い気持ちでスタートした。
けれども、1回、2回と開催し、参加者や天満宮の関係者、地元の皆さんはもちろんのこと、観光客や修学旅行生など、多くの人たちに喜んでいただける様子を目の当たりにした。ここで年に一度、イベントを開くことで、少しでもクルマの魅力に気づいてもらえたり、再確認できたりする機会になればいいな、と思いはじめたのも事実だ。
そんなわけで、3回目となった今年は、単なる展示イベントだけではなく、「京都からクルマの文化と産業の今と未来を語る」と題した講演会も並行して企画した。
京都を代表する愛好家で、高雄サンデーミーティング主宰のミック清水氏をモデレーターに、ゲストとして日本レーサー界の魁(さきがけ)・鮒子田寛さん(文化代表)と、排ガス装置で世界的に有名な地元企業の堀場製作所から副会長の齋藤壽一さん(産業代表)をお招きし、なぜか昔から所縁(ゆかり)の深い“京都とクルマ”について語ってもらおう、という趣向だ。
京都といえば、童夢やコジマエンジニアリング、トミーカイラが誕生した場所であり、鮒子田さんを筆頭に多くのレーシングドライバーも生まれ、昔から室町や西陣の旦那衆をはじめクルマ愛好家も多かった。
また、堀場製作所以外にも、日本電産やGSユアサ、ローム、村田製作所、村田機械、京セラなど、現代の自動車産業に欠かせない高い技術を誇る最先端企業の本拠も驚くほど多数、集積している。
どうして、こうも京都にクルマ関連の人モノ技術が集まっているのか。究極的には、長らく都があって、進取の気運が住まう人々に醸造・蓄積されてきた結果、ということに尽きるだろう。
京都人は、実を言うと、新しいモノやコトが大好き。古いホンマモンが日常、すぐ手の届くところにあるからこそ、新しい何かを採りいれることにどん欲というわけだ。しかも、本物に囲まれて育った人々には、生来の鑑識眼が備わっている。ニセモンやモノマネを嫌い避ける土壌があったからこそ、最先端の技術が生まれた、とも言えるだろう。
技術が生まれて産業となり、それを諦めず長く続けることによって伝統を育み、文化として醸造され、未来へと継承されていく。その繰り返しが目に見えて息づくあたりが、京都という街のもつ魅力である。
7年前、東日本大震災の年に、そんな京都なら何かしらクルマについて発信することができて面白いかも、と、東京から引っ越してきた(引っ越しを決めた日が大震災の前日だった)。文化を発信しているなどと、大それたことはまだ言えない。これからが正念場だ。
もっというと、楽しんでいる本人たちが、「文化発信だ!」などと大仰に構えることのほうが、嫌いなタチだ。クルマ文化について、日本ではなかなか認められないと愚痴をこぼす人も多い。
けれども、所詮、文化なんてものは後世から認められるものに過ぎない。最新のビルを文化という人はいなくても、千年前に最新だった神社建築は、今や重要な文化財産。それと同じ。
文化というものは、当事者が声高に叫んだところで、どうなるものでもないと思う。アメリカやヨーロッパを羨む気持ちも分からないでもない。けれどもクルマが彼らにとって、移動の自由を高度に担保する自らの創造物であったからこそ、必然的に文化へと昇華した。
基幹産業だから、などといった経済レベルの理由だけでクルマ文化を育てなければならない、と息巻く日本の現実とは、根本的に違っている。DNAレベルで異なると。
だから、ボクたちクルマ好きにできることはと言えば、ただ、純粋にクルマ好きであることを続けることしかない。イベントや様々な発信を通じて、徐々に理解者を増やしていく他に、日本におけるクルマ文化定着の道はないと、ボクは思っている。
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