最近の日産は新型車が乏しい。その意味で注目されるのがルークスだ。2019年3月に発売された全高が1700mmを超える軽自動車で、後席側のドアはスライド式になる。以前のデイズルークスが一新されて「ルークス」になった。
ルークスには標準ボディとエアロパーツを備えたハイウェイスターがあり、後者ではターボも選べる。今回はハイウェイスターXプロパイロットエディション(184万3600円)と、同じくハイウェイスターのGターボプロパイロットエディション(193万2700円)を試乗した。
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※本稿は2020年4月のものです
文:渡辺陽一郎/撮影:平野 陽
初出:『ベストカー』 2020年5月26日号
■上質で使い勝手がいい車内
車内に入ると上質な内装に気づく。インパネの中央にはタッチパネル式オートエアコンが装着され、光沢のある黒いパネルも備わる。
今回試乗したルークスはハイウェイスターのNAエンジン車とターボ車。そのほかルークスには、フロントデザインなどが異なる右写真の「S」「X」グレードが設定される
オプションのプレミアムグラデーションインテリア(6万6000円)を注文すると、インパネに柔らかなパッドと合成皮革が加わり、本物のステッチも入る。この質感はコンパクトカーを超えてミドルサイズセダン並みだ。
運転席は、背もたれの高さと座面の長さを充分に確保している。体重が加わる部分をしっかりと作り込んで座り心地がよく、シート生地が滑りにくいからホールド性も満足できる。
気になったのは運転席の上下調節機能だ。背もたれが固定されて座面だけが上下に動くため、着座位置によって座り心地が変わる。シート全体が動く方式が好ましい。
ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション。ターボは高速道路でも余裕をもってクルージングができて快適
後席は大腿部と接する座面が短く、座り心地は硬めで違和感が伴う。小柄な人に配慮して座面を短く抑えるなら、前端をもう少し柔らかく仕上げたい。
後席の頭上と足元の空間は充分に広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の頭上空間は握りコブシ2つ分だ。スライド位置を後端にすると膝先には握りコブシが4つ収まる。この余裕はセンチュリーの3つ半を上まわる。
ただしこの状態では、後席に座る人の頭部とリアウィンドウが接近して、追突された時の不安がある。したがって後席に座った時は、膝先空間を握りコブシ2つ分に調節したい。そうすれば頭部とリアウィンドウの間に相応の空間が生まれ、後席の後ろに手荷物も積める。
リア後端で切れ上がるウィンドウ下側のラインが特徴的なデザイン
なおルークスの後席は、前後に320mmスライドする。後席にチャイルドシートを装着した時には、前側に寄せると、運転席の親との間隔が縮まる。信号待ちの時などに子どもの世話をしやすい。
後席の背もたれを前方に倒すと、座面も連動して下がり、大容量の荷室に変更できる。この時の荷室の床は傾斜が生じるが、自転車のような大きな荷物も積みやすい。
■走りの快適性も優れる
運転感覚では、狭い裏道や駐車場での扱いやすさに注目したい。フロントウィンドウの角度を立てて、サイドウィンドウの下端は低めだから、斜め前方や側方の視界がいい。
運転席はアイポイントが高く死角の少ない視野を確保。見晴らしがよくて運転がしやすい。後席はクラストップの320mmも前後にスライドして、後ろに下げると大人が足を組んで座れるほどゆったり広々!
後方はボディ後端のピラーが少し太いが、見にくく感じることはない。最小回転半径は14インチタイヤ装着車が4.5m、15インチタイヤのターボ車でも4.8mだから小回り性能もいい。
1. 後席へ送風して空気の循環機能も持つリアシーリングファンを設定 2. プレミアムグラデーションインテリア仕様はステッチを使用し豪華 3. 快適パック装着車は助手席背面にUSBソケットを装備 4. ドア下に足を振り入れるとドアが開閉できるハンズフリーオートスライドドアを設定 5. 後席の前後スライド長は320mm 6. エアコンの操作はタッチパネル式を採用
動力性能は、2WDでも車両重量が900kgを超えるため、ノーマルエンジンは少しパワー不足だ。
ただしルークスのエンジンは、実用回転域のトルクに重点を置いたから運転しやすい。ノイズも抑えられ、音質もマイルドだから耳障りには感じない。
ターボエンジンは動力性能が大幅に高くなる。実際の加速に影響する最大トルクは、ノーマルエンジンが6.1kgm(3600回転)、ターボは1.7倍の10.2kgm(2400~4000回転)だ。
エンジン回転の上昇に伴って駆動力が強まるターボのクセを少し感じるが、最大トルクは1Lエンジン並みだから、高速道路や峠道の登坂路を走る時には余裕がある。
ハイウェイスターには64psのターボエンジンと52psのNAエンジン車を設定。S、XグレードはNAエンジン車のみの設定となる
WLTCモード燃費は、ノーマルエンジンが20.8km/L、ターボは18.8km/Lだ。ターボはNAより動力性能が大幅に高くなるわりに、燃費数値は10%しか悪化しない。
走行安定性は、背の高い軽自動車では優れた部類に入る。操舵に対する反応の仕方が正確で、ボディが唐突に傾く不安感を抑えた。高速道路では、路面のウネリを乗り越えたあとの収まりがいい。
峠道では、背が高いわりにアンダーステアになりにくく、いろいろな場面で安心して運転できる。
その代わり乗り心地は硬めだ。特に15インチタイヤのハイウェイスターGターボプロパイロットエディションは、路上のデコボコを通過した時の突き上げ感が気になる。
後席は分割可倒式で、前に倒せば広くてフラットなラゲッジスペースが作れる
■運転支援機能が先進的
装備では衝突被害軽減ブレーキに注目したい。デイズのセンサーは単眼カメラのみだが、ルークスはミリ波レーダーも加えた。
2台先を走る車両まで検知して、危険が生じると早い段階でドライバーに注意を促す。玉突き追突事故の加害者になるリスクも抑えた。
2台前の車両を検知する前方衝突予測警報を軽初搭載
車線逸脱時には、警報だけでなく、ブレーキを自動的に作動させて元の車線に戻す制御を行う。
ハイビームで走行中に対向車や先行車を検知した時、ハイビーム状態を保ちながら、24灯のLEDを切り替えて相手車両の眩惑を抑える機能も採用した。
デジタルミラーを搭載し、駐車時に自車周辺を映す
運転支援機能のプロパイロットも用意され、先行車との車間距離を自動制御できる全車速追従型クルーズコントロールが備わる。
追従停車後の時間が長引いた時は、自動的に電動パーキングブレーキに切り替えて停車を続けられる。
車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御する機能も備わり、プロパイロットはセレナに比べて作動が正確になった。
運転支援システム「プロパイロット」搭載
このようにルークスの特徴は、内装が上質で、ノーマルエンジンの静粛性も優れ、安全装備と運転支援機能が先進的なことだ。設計の新しさを実感できる。
●先進の安全装備&運転支援システムが充実!
・プロパイロット
・インテリジェントエマージェンシーブレーキ
・前方衝突予測警報
・アダプティブLEDヘッドライトシステム
・標識検知機能
・先行車発進お知らせ
・車線逸脱防止システム
・ふらつき警報
・インテリジェントアラウンドビューモニター
・踏み間違い衝突防止アシスト
■王者、N-BOXと比べると?
クラス一の人気車、N-BOXと比べるとどうか?
車内の広々感はN-BOXが上まわり、内装の質感はルークスが少し高い。前席の座り心地は同等だ。後席はN-BOXの足元空間が少し広いが、座り心地は同等といえる。ルークスは座面が短く、N-BOXは柔軟性が乏しい。
動力性能は同等で、ノーマルエンジンの静粛性はルークスが優れるが、総合的なノイズはN-BOXのほうが小さい。走行安定性は、ルークスがボディの傾き方を抑えて安心感を高めた。乗り心地は、ルークスが硬さを意識させてN-BOXが快適だ。
ホンダ N-BOX。ほか、スズキスペーシア、ダイハツタントなどがルークスの競合車となる
衝突被害軽減ブレーキは、両車ともに充実している。ルークスは2台先の車両を検知できて、N-BOXは歩行者、自動車、自転車にも対応した。
運転支援機能はルークスが勝る。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールは、ルークスでは停車状態まで制御を続けるが、N-BOXでは追従速度が時速25km未満に下がるとキャンセルされてしまう。
■姉妹車eKスペースとの違いはある?
ルークスの姉妹車として、三菱eKスペース&eKクロススペースがある。基本的には同じクルマだが、eKシリーズには、ルークスと違ってSOSコールの機能が採用されない。またターボエンジンは、ルークスではハイウェイスターのみが搭載するが、eKシリーズでは標準ボディのeKスペースTも設定されている。
eKスペース/eKクロススペース(価格139万9200~199万1000円)
■ルークス ハイウエイスターXプロパイロットエディション 2WD主要諸元
・全長×全幅×全高:3395×1475×1780mm
・ホイールベース:2495mm
・車両重量:970kg
・エンジン:直3DOHC
・排気量:659cc
・最高出力:52ps/6400rpm
・最大トルク:6.1kgm/3600rpm
・ミッション:CVT
・サスペンション 前/後:ストラット/トーションビーム
・WLTCモード燃費:20.8km/L
・価格:184万3600円
日産 ルークス グレード&価格一覧
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みんなのコメント
日産目線で考えれば他に売る車がないから、相対的に売れているように思えるのかも。
ノーマルな比較的安価なグレードで街なかでの使い勝手を哨戒して欲しいな
峠なんて行く?